7月26日で、事件から丸6年が経ちました。
2ヶ月前からずっと考察してきました。
連載で綴りたいと思います。

『相模原事件とは何だったのか？』
が粗方分かるかとは思います。
振り返ることで、皆様のより良い人生の一助にでもなれたら本望ですm(_ _)m。

（※なお、ご遺族の気持ちは承知しています。その気持ちをどうしたら社会に落とし込んで昇華できるのかを考えた上であり、加害者と向き合うのはその一環で、あくまでも第三者の考えです。殺人は肯定していません。ちなみに私は無宗教、政治思想不明です。資料として本5冊、ある程度のネット記事（主に神奈川新聞）を読みました。）

「相模原障害者施設殺傷事件」
2016年7月26日未明、神奈川相模原市にある知的障害者施設津久井山ゆり園に元職員植松聖（当時26歳）が侵入し、障害者19名を刺殺し、入所者・職員計26人に重軽傷を負わせた。2020年3月に死刑が確定した。

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❶『私の「優生思想」と「差別意識」』

事件以降、「優生思想」（人類の遺伝的素質を改善することを目的とし、悪質の遺伝的形質を淘汰し、優良なものを保存すること）が注視されるようになりました。植松の「重度障害者は不幸の元だからいらない」という主張は優生思想でした。

歴史を振り返れば、一番メジャーなのはヒットラー率いるナチスですが、障害者の大量虐殺はユダヤ人虐殺に至りました。優生思想は遡ればすでに紀元前4世紀から存在し、19世紀後半以降、欧米においては優生学にのっとり、様々な差別行為・人権侵害が行われていました。人類の歴史には、この優れた遺伝子・人材を残そうという優生思想は根付いてしまっていました。

日本では戦後、旧優生保護法が成立し、1996年まで約50年間、障害者の強制不妊手術を国を上げて行っていました。不良な子孫の出生防止という名目です。障害があるであろう人を無理矢理に病院に連れ込む強制と同意含め、約2万5千人の人が人権侵害を受けました。現在全国9カ所で国を相手に裁判が行われていますが、今年3月の時点で原告側に賠償金1500万の支払いで判決が下るも、国は不服として最高裁に上告しています。（厚労省は被害対象者に一時金として320万支給）そして、現在産科では出生前診断（私は否定できません…）が実施されています。

つまり、現在の日本は優生思想を全面的に間違いだとは認めていません。

そんな世の中で起きた相模原事件であるということを、まず認識しなければなりませんでした。そして、優生思想的なものは誰もが無自覚に持っているものだと指摘されています。それは『内なる優生思想』と言われています。

では、私はどうなのか…？
２０歳そこそこの頃、結婚した友達にこう言ったことがあります。「岩手大学出身と一橋大学出身が結婚するのはなんかズルい！」有能な遺伝子同士が結婚し子孫を残すことへの嫉妬でした。「あ、これって優生思想だったんだ」と気付かされました。この事件を考察するにあたり、私はこの私の中の『内なる優生思想』に向き合わざるを得ず、そしてそれは私の醜さでした。
しかし、優れたものへの渇望は人間の性かもしれません。人より優れた人を賞賛するのが常です。それはいつの間にか、優れた人にならねばならないという支配に変わり、優れていないとダメという否定に変わっていきます。これが『内なる優生思想』だと思います（私の定義。色々な定義付けがされています）。最近も、有名若手ミュージシャンが私と似たような発言を無意識にして問題になりました。スポーツでも勉強でも仕事でも、優秀でないとダメ。ダメ人間は価値がない。更に行くと、優秀でなければ生きてる意味がない。この思考回路はきっと少なからず誰もが持ってるように思います。能力主義が行き過ぎると優先思想になるという警告です。

優生思想のおぞましさは、優劣を付け、劣性なるものを否定し、排斥することです。それは「差別」へと繋がります。「差別は良くない」と謳っていても、日本中あらゆるマイノリティー、弱者が差別されているのが現実です。国会議員も平気で差別発言をしています。

では、私はどうなのか…？
先日、電車で立っていたら、目の前に座っているオジサンがホームレスの様な様相で、かなりの異臭だったので移動しました。通勤時、道端で通学中の知的障害児を見かけるのですが、なんとなく距離をおいて歩いてしまいます。例えば極端な例ですが、ヨダレまみれで排泄物で遊び奇声を上げてる赤の他人の重度障害者を目の前にしたとしたら、すみません、私はたぶん逃げます。
これは私の『潜在的差別意識』です。汚い、怖い、劣っている等という「異質」を前にすると、「離れよう（≒排斥）」とする心理が働いてしまいます。離れてしまえば、対象を「理解しよう」という気持ちから解放され「楽」になります。私はこれが差別の根幹だと思っています。逆を言えば、「異質」から逃れず対象を理解する困難さに立ち向かえば、差別は無くなる。「異質」を理解しないとはじまらない。そしてこれは共生社会の真髄だと思います。植松について言えば、彼は重度障害者の「異質」を理解せず逃げました。
でも、私はなるべく「異質」から逃げて「楽」していたいし、理解を放棄したヘイト集団を黙認しているくらいです。私は、私の中の『潜在的差別意識』から逃れず、立ち向かわなければ、「共生社会を築こう」という気持ちは湧かないだろうと思います。ホームレスの異臭から逃げても良いけど、その代わりなぜ臭くなってしまうのかを理解する。そうやって生きて行かないと、共生社会なんて理想は破綻してると言った植松には勝てません。

万人が『潜在的差別意識』に立ち向かえば、きっと日本は共生社会へと向かって行きます。その道のりは長いでしょうか…。

（❷へ続く）