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一人飲み、されど感じる他者との繋がり

「最近よくするんです、一人飲み。」
「へぇ、じゃあ家でも飲んだりするんですか?」
「いや家では全く飲まないんですよね」

一人飲みが趣味だと言うと、かなりの確率で家でも飲むのかと尋ねられる。
そして、その度に家では飲まないと答えている。

何人かとこうしたやり取りを重ねたことで、確かに一人飲みをするほどお酒が好きなのに、家の中で飲みたいという気持ちはあまり湧いてこないなぁと気付かされた。一人暮らしをしている私はかなり生活に自由があるし、家に缶ビールやウイスキーなんかを数本置いておいてもいいはずなのに。

何も予定がない休日、お酒を飲みたい気分になると必ず部屋を抜け出して街を歩いている。無難にお気に入りのお店に行くこともあれば、ふと視界に入った初めて見たお店に目を奪われてふらっとドアを開けてしまうことも多々ある。もちろんそのお店がGoogle Mapのお気に入りリスト入りすることもあれば、ハズレを引いてしまうこともある。

お店の種類に関して特に拘りはない。
裏路地にひっそりと佇み、濁った窓越しに繁盛具合が窺えるようなお店に入って日本酒を飲むこともあれば、クラフトビールを求めてブルワリーのような場所に足を運ぶこともある。入るのに少し緊張するような小綺麗なワインバーにも時折背伸びして入ってみたりする。

何故わざわざお店に出向くのか。
そのお店が提供する美味しい料理と一緒にお酒を楽しみたいというのはもちろんのことだが、その時の自分の気分に合うような空間に身を置きたいという欲求も大きな理由だと思う。それに加え、一人で飲みたいが本当に一人だと何か味気ないというある種の自己矛盾のような感情もあったりする。

普段暮らしている1Kの部屋。
物理的に他者と隔てられているこの場所では、ただ淡々とお酒を口に運ぶだけで、言葉を発することもなければ新しい発見もなく、変化も刺激もない空間に一人座って時間が過ぎるだけに感じてしまう。

それに対してお店というのは他者と時間と空間を共有する場所であり、言葉は交わさずともそこには不特定ではあるが他者との繋がりがある。そして他者がいることで、身の周りでは様々な変化や刺激が起こり、新しい発見がある場合もある。

お店には似たような人が集まるような気がする。静かに飲みたいと思い落ち着いた雰囲気のお店に入れば、同じく静かに飲みたいと思って入店した他者がいる。交流もなくただ各々楽しんでいるだけの赤の他人同士ではあるが、同じ目的で同じ空間を共有し、そしてお酒という同じものを楽しんでいる。そういった意味でも他者との繋がりを感じることができる。

お酒が持つ大きな力は他人との距離を近づけることだと思う。定食屋やファストフード店などでは同じような感情は湧かない。同じ目的で同じ空間を共有している他者がいるが、そういった場所では他人との繋がりを感じることはない。やはりお酒という同じものを楽しんでいるからこそ繋がりを感じているのだと思う。

お酒が折角そういった素敵な力を持っているのだから、その力を感じたい。壁に一人囲まれた空間に居るのは勿体無いというのが、恐らく家でお酒を飲みたいと思わない理由だと思う。

今思えば、コロナ禍ではこういったお酒の力を感じることができずに味気ない日々を送っていた。コロナ禍前の日常をほぼ取り戻しつつある今、この状況を当たり前と思わず感謝しながら色んなお酒を楽しんでいきたい。

#いい時間とお酒

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