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心配できない怪獣

自分が誰かの恐怖の対象になっているかもしれない。

懸念できないのは能天気で楽観的といえば良く聞こえるけどただ無自覚なだけかもしれない。

人が2人いてやり取りをすれば余程稀なことが起きない限りパワーバランスは必ずどちらかに傾く。ましてや1人に対して2人以上の人が何らかのやり取りをするなら人数が多い方に権力は偏る。
同じ年齢の同じような環境で過ごしている友人関係でさえパワーが常に均等ということはほとんどない。
ならば職場などの場面で階級に差のある2者が関わるとき、年齢でも階級でも職場経験でも勝っている上司側がほとんど例外なく力を持つことになるのは理解できる。
力に差があると、あらゆるものの重みや意味合いにも差が出てくる模様。

地球の重力は月の6倍だから、地球で測った体重は月で測った体重の6倍になるらしい。
それと少し似た感じで上司側が恐怖レベル50の想定で発した発言が部下側では恐怖レベル100の発言として消化される。
階級も年齢も職場経験も違う人間が、同じ言葉に対して同じ解釈を持たない可能性はめちゃくちゃあるのにまるで自分が自分に語りかけるみたいに自由に言葉を発することがある。
相手が自分だったら恐怖レベル50で伝わったかもしれないけど相手は自分では無いのだ。


「ちょっと言ったぐらいで落ち込んで会社にも来れなくなるなんてそんなんじゃどこでもやって行けないよ」
誰でも思いつくこのテンプレみたいなセリフ、もうだいぶ聞き飽きたけどまだまだ沢山のユーザーを抱えている。

「根性がない」
あとこれも。

当然強い言葉を言った側は、その言葉を強くないものと認知しているのだからその言葉が原因でうつになるなんて辻褄が合わないと思うわけである。
とはいえ言われた側は明らかに強い言葉を被弾しているから、落ち込んでしまってなんなら死にたくなってしまってもおかしくない。
言う側は、言われる側の気持ちを完全に理解していない。
これまでに傷ついてきた経験とか、周りに傷ついた人がいた経験とかそういうもので相手への理解度は決まっていくみたいだから不理解な人はたまたま傷を生む出来事を回避出来ていただけだ。
それか大怪我をしたことがあってもそれを忘れているだけ。
だから自分の言葉を受けた相手がどう思うかなんて、的確に見積もれるほうが凄いことなのだと思う。
でも偶然であれ不安や恐怖や落ち込みからかけ離れたところで生きてきた人ほど想像するということをしないと不理解はそのうち死を招く。


そこで1番手っ取り早い方法が
自分が誰かにとって底なしに恐ろしい存在になってしまうかもしれないと懸念することなのだ。
ひとまず自分が怪物であるかもしれないこと、今はそうじゃなくても今後怪物になる可能性がありまくることを理解しておけばいい。
きっとほとんどの人は人から怖がられて敬遠されるのは嫌だろうから、懸念さえできれば必然的に相手の心情を想像することもできる。

「あの子は弱すぎる、根性がない」
とか言えるのは自分が強すぎることに自覚がないからだ。
誰もゴジラに負けた人間を、弱すぎるとか言わない。ゴジラが強いだけだから。
ゴジラと人間の戦いを外から見ている私たちはそう思えるけど、ゴジラ自身は「人間弱すぎる」って思ってるかもしれないね。
落ち込んでいる相手に対して「根性がない」
という発言を思いついてしまった時はゴジラフラグが立ちすぎているから気をつけることにしよう。

無自覚ゴジラにならないように一旦想像の鏡を見ることにしよう。ゴジラが映ってないことを祈りながら。

ゴジラ見たことないけど。


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