横川尚隆流トレーニングを1年間実行したら筋トレの本質がそこにはあった【筋トレ実践記】

「お前もボディビルダーにならないか?」

言わずとしれたボディビル日本チャンピオン、横川尚隆。
テレビへの露出も多いため、お茶の間ではアホなマッチョとして認識されているかもしれないが、彼は筋トレ界の大谷翔平といってもいいかもしれないくらいすごい選手だ。

今日は、【横川尚隆選手のトレーニングを1年続けてみてわかったこと】を共有しようと思う。


●横川尚隆選手のすごさ

横川尚隆選手はどこがすごいのだろうか。
大会の実績を見てみよう。

2017年「JBBF 日本ボディビル選手権」初出場6位
2018年「JBBF 日本ボディビル選手権」2位
2019年、弱冠25歳で「JBBF 日本ボディビル選手権」優勝

ボディビルという競技は、身体を作るまでにどうしても時間がかかる上に、減量の経験やノウハウも必要である。
だから若い選手は活躍しづらい構造になっている。

実際、横川尚隆選手の前に長らくチャンピオンだった鈴木雅選手は初優勝が30歳。
海外のボディビルでも、チャンピオンはだいたい30代以降の選手だ。

それを25歳で優勝する、しかも圧倒的なバルクと存在感を持って。

https://twitter.com/YokokawaNaotaka/status/1209813278307672065

彼女との別れ話中にプロテインを飲んでビンタされたエピソードなど、一般的に人気を集めるキャラクターなこともあり、日本のボディビル界を盛り上げる存在だ。


●横川尚隆選手のトレーニングの特徴

そんな横川尚隆選手が少し前にYouTubeを始めた。

一昔前は、ボディビルの情報を得るためにはトップ選手のDVD等を購入しなければならず、日本チャンピオンのトレーニングが無料で見られるのは素晴らしい時代になったものだと思う。

このチャンネルでトレーニングの話をわかりやすく解説しているどころか、ほぼ全てのトレーニングや食事を公開している。

他にライバルがいるにも関わらずなぜこんなことができるかというと、
・横川くんがバカだから
・常人には真似できないから
・仮に真似されたとしても勝てる自信があるから
だろう。

そんな横川尚隆選手のトレーニングの特徴はどんなものか、まとめてみた。


①とにかくボリュームが多い

横川選手のトレーニングは、とにかくボリュームがハンパではない。
最新の研究では、筋肥大はトレーニングボリュームと相関があることがわかっている。

トレーニングボリューム=重量×回数×セット数


1部位につき8-10種目、各種目4-6セットくらい行っており、所要時間はなんと2時間。
インターバルは2分程度と短いことも特徴で、最後はドロップセットや種目によってはチーティングを使って追い込んでいる。

常人には真似できないところもあるので、ここまでは真似しなくていいかもしれないが、異様な筋肉の裏には異様な努力があることを忘れてはいけない。


②動作が非常に丁寧

この動画を見ればわかる通り、トレーニングが非常に丁寧だ。

具体的には、
・2秒かけて降ろし、2秒かけて挙げるくらいのテンポで行う
・負荷が抜けるギリギリの場所まで動作を行う

ということを実践している。

横川選手は「自分の中に正しいバーベルの軌道があって、それをなぞるような感覚」と言っている。

これはTUT(Time Under Tension、筋緊張時間)を意識したトレーニングだと思われる。
TUTとは言葉の通り、筋肉が稼働している時間のこと。

TUTは、レップ数やセット数と同じくらい重要な概念だが、「ダンベル何キロ持てる?」みたいな会話をしていると忘れられがちである。

競輪選手の太ももが太いのは、一説によるとTUTが長いからだと言われている。
無酸素状態で何十秒もスプリントを続けるためには、相当な筋肉量が必要なのだ。

トレーニングボリュームを稼ぐためには、重量を追うことは必須。
しかし、上級者になればなるほどボリュームを稼ぐのは難しくなる。
ベンチプレスを50kg→100kgにするよりも、100kg→150kgにするほうが遥かに大変だからだ。

無理な重量を無理なフォームで扱うことは、怪我の原因にもなる。
そこでTUTを上げることで、重量をそこまで上げずとも効率よく筋肥大することができるのだ。

50kgを2秒かけて挙げれば、理論上は100kgを1秒かけて挙げたのと同じ効果になる。
逆に言えば、いくら高重量を扱っていてもネガティブの局面でストンと落としてしまうとトレーニングの一番美味しいところをみすみす逃してしまっているということになってしまう。

だからこそ、全てのレップを、丁寧に、時間をかけて、噛みしめるようにトレーニングすることが大切なのだ。

とはいえ大切なのは低重量でトレーニングすることではない。
漸進性過負荷の原則に基づくと、筋肥大するためにはトレーニングの負荷を継続的に上げていく必要がある。
動作がゆっくりだろうと、「丁寧なフォームで扱える最大限の重量」を扱うことを忘れないようにしよう。


③アセンディングセットを中心に組み立てる

アセンディングセットとは、セットごとに重量を上げるトレーニング方法のこと。
同じ種目のうち、最初のセットは軽めに、次のセットは少し重めに、最後のセットは一番重くするように組み立てる。

この方法をメインでやっているボディビル選手は横川選手以外にはなかなかいない。
ほとんどの人が、高重量を扱った後に低重量で最後まで出し切る、ディセンディングセットでトレーニングをしている。
ではなぜ横川選手はアセンディングセットを中心に組み立てているのだろうか?

これは完全に仮説だが、横川選手なりにリスクを抑えてリターンを最大化しようとしているのではないだろうか。

トレーニングの最初のほうに高重量を扱う理由は「そのほうが高重量を扱えるから」なのだが、なまじ「高重量を扱えてしまう」のだ。
高重量を扱うと、筋肉だけでなく関節や腱、神経系にも負荷がかかる。
しかし、関節や腱、神経系は筋肉に比べて回復が遅いという特性もある。

ディセンディングセットで重量を追ってしまうと、横川選手ほどの筋力やトレーニング量からすると、関節や腱、神経系の回復が間に合わない可能性がある。

ディセンディングセットでは、一回のトレーニングでボリュームを稼ぐことならできるかもしれない。
しかし回復のタイミングや怪我のリスクを考えると、長期的にはむしろアセンディングセットのほうが無理なくボリュームを稼ぐことができるのではないか。


●横川尚隆選手のトレーニングをやってみての感想

では、横川選手のトレーニングは一体どこが優れているのだろうか?
また、どんな人に向いているのだろうか?
筆者はこのトレーニングを一年ほど試したので、その感想をつらつらと書いていこうと思う。

結論から言うと、やって良かったとは思っているが、日本チャンピオンのトレーニングを真似たからといって日本チャンピオンくらいデカくなれるというほどボディビルは単純な世界ではない、ということだ。(それはそう)

①筋肉と向き合うことができる

ボリュームが多く、時間が長いのでとにかく己の筋肉と徹底的に向き合うことができる。
何より、「日本で最も筋肉を愛している男と同じトレーニングをしている」という高揚感もある(?)

②正しいフォームで行うことができる

動作がゆっくりなので、正しい軌道や筋肉の動きを意識せざるを得ない状況が強制的に作られる。
TUTが長いと、「負荷が筋肉に乗ってる感」がものすごいのだ。

むしろ正しい動きができていないと、動作の途中で無駄な動きが出てきてしまい、変な筋肉が疲れてしまい、完遂できない。

なのでこれを続けていると、筋肉に乗せるための正しい動作や正しい軌道を身に染み込ませることができる。

③超上級者じゃない限り、使用重量を増やすのが先かも?

しかしこのトレーニングには個人的に問題点と感じる部分があった。
それは「使用重量があまり伸びない」ということだ。

筆者のような中級者にとって、重量を伸ばすことは大事だ。

それは自分の中でトレーニングのモチベーションになるということもある。
ベンチプレス100kgが105kgに、110kgになっていくときの快感は他には代えがたい。
また、そもそもトレーニングボリュームを稼ぐという意味でも、(ナチュラルトレーニーにとっては特に)重量を伸ばしていくことは非常に重要だ。

もちろん横川式トレーニングでも「横川式のトレーニングの使用重量」は伸びていく。
しかしトレーニングには特異性の原則があり、意図していない成長は得られない、つまりこのトレーニングで自分の最大挙上重量(MAX)が伸びることはほぼないといっていいだろう。

横川選手のようにある程度完成されたトレーニーならともかく、筆者のようにまだ伸びしろがある(と信じたい)トレーニー達は基本的には使用重量を伸ばしていくことに主眼を置くべきだと個人的には考えている。

もちろん、日本チャンピオンである横川選手よりも自分のほうが優れたトレーニング眼を持っているだなんて全く思っていない
しかし、チャンピオンを目指すトレーニングと筆者自身の限界を目指すトレーニングは別物だと感じた。

とはいえ筋肉への愛、筋肉に乗せる正確なフォーム、TUTの大切さなど横川式トレーニングから学べることはたくさんある。


今日も筋肉の神に感謝して、自分のやるべきことをやっていく。


●おわりに

このnoteは、筋トレを始めたばかりで、しっかり身体のことについて勉強したい人をターゲットに、健康的な生き方に関する情報を論理的に発信しています。

過去にもいろいろな記事を投稿しているので、もし気になったら読んでみてください。
また、記事にしてほしいトピックのリクエストもコメント欄から募集中です。

筋トレについてそこそこ詳しい方や、実際にトレーナーとして活動されている方にとっても、「こんな考え方、こんな表現があったんだ!」という発見になってくれれば幸いです。

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