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今日の一枚、今日の一考(15分)

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今日の一枚と一言
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グラデーション

10月1日80日目。 少し気を抜けばこういう雑念を綴る時間を取れなくなってしまう。5月を最後に日々のことを振り返ることなく、夏が終わり秋も半ばとなってしまった。 どんな仕事にも納期があって、わかりやすく納期の近いものから手をつける。日々訪れる小さな納期を越えながら、粛々と日々を過ごす。考えなければいけないことを考えて、結論を出す。決して刺激にあふれた毎日というわけではないけれど、それなりに良い日々だ。 さいきんの日々といえば、遡上する鮭を毎日のように撮っている。 この

フォーカスを合わせて

5月11日79日目。 遠くの友人に会い、刺激を受けて思い出を作る。その実感は刹那的で、後になって残るものは目に見えるものではなく、曖昧なものだ。その実感が消えてしまうことが寂しくて写真や動画に残したくなるのかもしれない。 ・・・・・・ 遠くを眺めたそのままに地域を眺めてしまうと、ないもの探しの悲観チャンネルもしくは周囲置いてけぼりの鼻息チャンネルのスイッチが入ってしまうので、いちどフォーカスを自分の暮らす地域に合わせる必要がある。自分は意識的に自然に入ることにしていて、

春と変化の加速

4月14日78日目。 帆立稚貝漁がはじまった。朝のコンビニからおにぎりがまるっと消えて、港から吹く風には潮の薫りが漂う。澄んだ青空がつづき、冠雪の残る利尻岳と渡りのハクチョウが季節の情景を見せてくれる。雪解け水が流れる谷には新芽が息づき、エゾノリュウキンカとミズバショウの芽が顔をのぞかせる。 灰と白が大部分を占めた冬が終わり春を迎える。日ごとに彩りが増えていく風景に心が潤っていく。いつのまにかクロッカスの花が咲いて、いつのまにか閉じていた。著しく表情を変えていく、風景が変

寄せては返す

3月22日77日目。 どうにも年度末はデスクワークに偏りがちで。北海道のひだりうえの季節は少しずつ春へと向かっていて、うずうずとした気持ちを抑えるのに必死だ。例年より少しだけ雪解けの早い今年、もうすぐ谷にはエゾノリュウキンカが黄色い花を咲かすだろう。 一年を振り返り、報告書を作りながら、何ができて何が足りなかったのか、小さな諦めが多かった年だったなあ、と思い返す。沈んだ気持ちそのままに、楽しいことを考えることは難しい。窓をのぞくとちょうど、夕暮れ時だったのでカメラを持って

父親と温泉に行った

2月23日75日目。 しばらくぶりに父親と温泉に行った。普段から一緒によくお酒を飲むけれど、それなりの年になると同じ湯船に入ることなんてほとんどない。最後に同じ湯船に入ったのは還暦祝いの温泉旅行だったかな。 昼の温泉はほぼ貸切状態で、行く直前までめんどくさそうにしていた父親も、目を閉じてゆっくりと温泉につかり、気持ちよさそうな顔をしていた。 一年があっという間に過ぎていくな〜、なんて20歳を過ぎてから体感速度は増すばかりだけれど、父親が過ごす一年はどれくらいの速度で進ん

バンドのボーカルをしていた先輩

2月15日74日目。 ちょっとしたきっかけで、幼稚園〜高校時代ずっと同じ学校だったひとつ上の先輩とサシ飲みをすることになった。場所はスナック来夢(ライム)。そういえば、さいきん(とはいえゆっくり会ったのも数年ぶり)帽子を脱いだところを見たことないなあ、と思っていたところ、おもむろに帽子を脱いだ頭は、もうすっかり禿げ上がっていた。高校の頃は長髪で茶髪金髪パーマと自由自在だったあの髪の毛はもうほとんどいない。 生ビールを流し込みながら、お互いに近況をつらつらと話す。片耳が聞こ

積み上げたものと勝負する

2月11日73日目。 「積み上げたもので勝負する、ではなくて積み上げたものと勝負する」 竹原ピストルさんのオールドルーキーという歌の一節がすごく響いた。自分なりの解釈にはなるけれど、自己ベストを更新し続けないといかんよなあ、ということ。自己流我流ではじめたものはただでさえ引き出しが少ないスタートを切っているので、どれだけ積み上げたって満ち足りることはない。この程度でいいか、というぬるま湯はクセになってしまいがち。そこまでストイックなほうではないけれど、自分自身がやってきた

生きているだけで

2月7日72日目。 ここ数日は国道や道道が通行止めになるほどの吹雪が続き、これでこそ北海道のひだりうえだよなあと、この地で語られる「春待つしかあるめえ」という言葉がすぐさま脳裏に浮かぶ。ホワイトアウトを経て晴天を迎えた時の心持ちはこの地に住む人しか味わえない謎の生き延びた達成感がある。今日無事。 ••• 30代半ばともなると、周囲からごく個人的な人生に関するお声かけやアドバイスをいただく機会も増える。そんな時は愛想笑いをしつつ心の中でうっせぇうっせぇうっせぇわ、とつぶや

道をつくる

12月22日69日目。 ここ最近、就寝前、起床後の30分〜1時間を読書に充てるようにしている。やる気入り始めた学生のような習慣。移動と作業の日々では読書の時間がとりづらくて、空いた時間は仕事や作業に向かってしまうため意図的に時間を取らないと本を読めない。生活の中で何もしていない時間って案外少ない。 ・・・ 今年も残りわずか。さまざまな変化を余儀なくされた2020年はあっというまで、ここではうまく言えないようなことや誰にも相談せずに人知れず決めてきたことも多かった。おかげ

はじまり

11月29日67日目。 例年よりも、冬がゆっくりと近づいてきている。少しずつ体が冬の環境に順応していく、なんとなく順応するまでは憂鬱に過ごす。寒いのは憂鬱だ。デスクで作業していても足が冷えてたまらない。 冬道の運転もそう。何度も運転している冬のアイスバーンとはいえ、今年初のアイスバーンの運転は神経を使った。例年、本格的なアイスバーンを運転する前に練習をするようにしている。一度、安全そうな小道で強めにブレーキを踏んでどの程度滑るのか確認する。めちゃくちゃに滑って焦る、鼓動が

死を意識する

11月22日66日目。 田舎に住んでいると「死」を感じる場面に遭遇することが多い。 Uターンをしてから3年間ほど、遠別町の農村地帯にある地区の秋の収穫祭に参加させてもらっていた。何をする、というわけでもなく収穫を祝ってひたすら飲む、という会だ。10名前後で行われるその祭では、みんなが顔を真っ赤にしながらたわいもない(本当にたわいもないし時折下品)話を楽しんでいた。それから数年、日々の中で関わることが少なくなり、その後は顔を合わせる機会も少なくなってしまった。 今日、たま

日常

11月18日65日目。 年明け1月7日に毎年行われてきた出初式が今年度は中止という判断が下された。この町に戻ってきて7年、毎年続けてきた梯子登りも中止ということになる。 クリスマスイブの夜から大晦日を除いて、毎夜行われていた梯子登りの練習がない、という事実は残念な気持ちよりも安心感の方が大きい。真冬の夜、氷点下の気温で行われる練習は過酷そのものだから。 梯子登りのある年末を過ごすことが日常になっていた分、例年よりもおだやかな年末を過ごすことになりそうだ。 ・・・ 約

変わらない日常

11月8日64日目。 遠別町に戻ってきて7年。小さな町で過ごす日々は、会う人や行く場所がそれなりに固定されている。人口2562人の町なのに、2562人全員とあったことはないし、日々付き合いのある人と言えば100人前後程度におさまる。 どの場所に住んでいても、おそらく自分が日常で関わることができる範囲は限られている。いつまでも変わらない人。会うたびに変わる人。めぐる季節。少しずつ解像度が増していく季節が移り変わる瞬間の事象。 狭い、決まった範囲で過ごしていても目を凝らして

進む理由

11月2日63日目。 昨日、Twitterでふと、思い出に触れる機会があった。 2月に函館市で行われた「デジタルネイティブが拓く北海道の未来」のイベントで出会い、イベントに参加し、打ち上げで夜を使い果たした友人たちとの思い出語り。 相当楽しい夜だったなー。楽しさとアルコール飲酒量は比例して上がっていくので、楽しい夜の記憶はその場限りでうっすらと消えてしまうことも多い。この時の記憶もまばら。そんなとき、撮りためた写真は薄れた記憶を呼び戻してくれる。 一度失いかけた思い出