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役に立たなくても

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役に立たないことがそんなに悪いことなのか。雑記から不定期に追加していきます。
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遠くを見ても無駄

乗り物酔いが人生に与えた影響は大きい。 乗り物には本当に弱くて、地下鉄に20分ほど乗っただけで視界がブラックアウトしたことがある。ホームでうずくまっているうちに回復したが、気持ち悪いの限界を超えると吐き気以外の不調が出るのだと知った。 気の持ちようだという人がいる。父がそうだった。 一理あるとは思うが、それがすべてなら苦労しない。やれやれ、乗り物酔いと無縁な人は気楽なものだと顔面蒼白になりながらいつも思っていた。 現代医療では克服されているかもとググってみたが、状況は

力が欲しいか?

いいえ、いらないです。 日常生活でとくに筋力を必要とする場面はほとんどなく、男らしいマッチョなボディーにも憧れない。腕立て伏せは10回が限界だし、腹筋は手を頭の後ろに組んだ状態だと一回も上体を起こせない。 ただ、ふくらはぎの筋肉だけはある。自分の身体の部位の中では一番たくましいと思う。 子供の頃、多くの動物がヒザを逆に曲げていることに気付いた。そしてヒザだと思っていた部分がカカトだと知ったときから家ではつま先立ちで過ごすようになった。靴を履いていると歩きにくいので外では

咲き誇れ

↑前回のつづき 自由でありたい。 誰かが望む形に自分を束縛したくない。 願わくば自分以外の存在にも自由であってほしい。 自己表現が得意でなかったり、他人に必要とされるほうが楽だという人もいるだろう。それもまた自由のあり方である。 自由な創造性が機械に侵食されない聖域だと言いたいのではない。可能なら機械にも自由であってほしい。いつかAIが創造性を獲得する日を心から待ち望んでいる。 この有名なフレーズは人間の多様性を謳っているのだと思っていたが、全文を読んでみたらそうでは

不必要から生まれるもの

↑前回のつづき 高さや大きさを競うから優劣が生まれる。優れたモノが生き残って、そうでないモノが居場所を失う。それはそれで自然の摂理なのだろうから競いたい人は競えばいい。が、僕は参加しない。 優劣で淘汰されるのが自然の摂理なら、開拓者が生き残るのもまた自然の摂理である。必要に応じるのではない。誰かが求めるものを捧げるより、まだ誰も知らない価値を生み出すほうが全体の幸福度は上がる。 言うほど簡単でないことはわかっている。苦労して開拓した土地にまったく買い手がつかない可能性も

ゆずりあい宇宙

↑前回のつづき 仮に抜きん出たハイスペックな知能の持ち主だったとしよう。そのとき僕は他人を蹴落としてまで椅子を奪いに行くだろうか? 心酔する相手から自分だけが求められる状況はさぞかし愉悦だろう。それは自身の願望を満たし、役に立ちたい道具の本懐をも遂げる魅力的な最高到達点に見える。 しかし、僕の思考はこれに満足しない。願望から切り離された滅私の心は自分だけが役に立つことを良しとしない。自己に縛られないということは他人事が他人事ではなくなるということだ。滅私の心は宇宙と一体

だって大人だもん

↑前回のつづき 食後のデザートに買ってきたプリンがあるとする。すぐに食べたいが今は我慢する。だって大人だもん。ここで食べてしまうと食後に食べたい欲を満たせなくなる。そのくらいの分別はある。 そして食事を終えてのデザートタイム。お楽しみはこれからだというタイミングでやっぱり食べないという選択肢が僕にはある。食べちゃいけない理由はとくにない。それでも我慢しようと思えば我慢できる。だって以下略。 思考が願望を満たすための道具だとするとこの造反を説明できない。ハサミがハサミの気

望まれない未来

↑前回のつづき 子供の落書きに指の数がおかしいとダメ出しするのは躊躇われる。一家団欒の風景なのに一人多いとか、青い空に漆黒の太陽が微笑んでいるとかでも、とりあえずは「上手に描けたね」と褒めてあげたい。 本人が描きたいように描けたのならそれ以上のことはない。写実的であることが絶対に正しいという価値観の押し付けは自由な発想を妨げてしまう。 そこには生物の多様性がある。 全員がひとつの正解に向かって歩いていけば未来にはディストピアが待っているだろう。伸び伸びと成長して凡庸な

大器晩成

一方、大器晩成はどのような成長を遂げていくのだろうか。同じ時期にスタートを切って早々と結果を出す早熟型に対し、晩成型はどうしてなかなか結果を出せないのか。 スロースターターで本気を出し始めるのが遅いから? ゲームみたいにステータス上昇率が後半に伸びるように設定されているから? そんなケースも中にはあるだろうが一般的とは考えにくい。早熟型も晩成型も同じ人間なら走るスピードはそれほど変わらないはずだ。結果が出るまでの時間に差があるのだとしたら、おそらく遠回りをしている。 ゴ

栴檀双葉

大器晩成の対義語をググったら、まるで聞いたことのない単語が出てきて笑っている。「せんだんのふたば」と読み、ある種の香木が双葉の頃から良い香りを放つ様子を、若くして才能を発揮する人に例えているらしい。 でも欲しかったワードとはちょっと違う。たぶんこれは生まれ持った才能の話だ。天から与えられる能力に僕はあまり興味がない。そういう先天的な資質よりも後天的に獲得し得る才覚にこそ思考を巡らす価値がある。 四字熟語にこだわらなければ「早熟」が一番イメージに近い。スタート地点は同じなの

認知的不協和もへっちゃらです

読書が嫌いで、知識を得ることにそれほど貪欲でもないのに、そこそこ物知りであるという自負がある。みんなが知っていることを知らない代わりに、みんなが知らないことを知っている。おそらく知識との向き合い方が人と違うのだと思う。 多くの人は情報にフィルターをかけているように見える。信じるに足る情報かどうかを判断し、それに値しないとみれば早々に打ち捨てている。そういう取捨選択を僕はしない。 完全に信じられるものがないからだ。鵜呑みにできる情報など存在しないし、逆に役に立たないと断じら

どうせ無理だとわかっていても

ステンレスプレートのIH対応土鍋ではうまくご飯が炊けない。考えればわかることだった。考えが足りなかったのは事実だが、では十分に考えていたら購入を思い止まったかというと、そんなこともなかったと思う。 ダメ元でも試してみたくなる心理がある。禁止されるとやりたくなるカリギュラ効果とは違う。失敗を見越して損失を覚悟した上で、それでも実行しないと気が済まない。 以前、歩道を歩いていたら買い物帰りの親子が向こうから歩いてくるのが見えた。お母さんは両手が塞がっていて、男の子がその周りを

ラストエリクサー症候群

役に立たなくてもいいという話。 ファイナルファンタジーシリーズにはラストエリクサーと呼ばれる回復アイテムが登場する。主人公たちが全滅の危機に瀕しても、このアイテムを使うと一瞬で体力が満タンになって窮地を脱することができる。極めて有用なアイテムに思えるが、僕のゲーム人生では一度も役に立ったことはない。 ラストエリクサーはその効果が強力すぎるため、ゲーム内では使用回数が極端に限られている。もったいなくて使えないのだ。今まさに全滅しかけているとしても、これより厳しい本当の危機が

三角関数が何の役に立つんですか?

この手の質問で三角関数の使い道を本当に知りたいケースはごく少数で、多くの場合はどうせ役に立たないんだから勉強しなくて良いよねというメッセージなのだと思われる。本当に知りたい人はAIにでも聞くといい。 役に立たない可能性で言えば漢字の書き順や縄文時代の生活様式、元素記号の周期表なども負けていない。「右」と「左」のはらいの順番とか何のために覚えたのだろう。これらは基本的に暗記すればよく習得難易度が低いため、三角関数ほど槍玉に上がることはない。 こういう職業の人には役立つから、