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Introduction:お茶との出会い(無農薬緑茶をつくる農家さんと)

2021年は、私にとって出会いの年だった。

2020年の1月にそれまで住んでいた東京を離れ地元に帰ってきた。もともと福岡出身で学生の頃まではずっと福岡だった。それから東京へ上京(1度目)、福岡へ帰郷後、仕事の関係で熊本、東京へと転勤。職種はさまざま経験したが飲食(カフェ)がその中では長く、鍛えられた。

2度目の東京生活はそれなりに楽しかったが、体調を崩しいろいろ考えた挙句、帰郷を決めた。

福岡に帰ってきた途端、COVID-19が猛威を奮い自宅から出ない日が続いた。フリーランスでライター仕事はあったので細々と進めていたが、ある日知り合いからデザイン(編集)事務所の求人があるというので勧められ、しばらくそちらでアシスタントをして過ごしていた。

2021年、春にその事務所で関わっていたプロジェクトが一旦終了したので「さて、どうしよう」という状況となった。そのとき東京から続く体調不良が改善せずにわりとピークに苦しかった。メンタルが不安定で長く悩んでいたが、「とにかくフィジカルを整えよう」と、重い身体を気力で叩き起こし運動を始めることにした。自転車とアシュタンガヨガ、そして農作業がこのときの私が出会いのちに大事なルーティンになるものだった。

その日、博多駅の広場で行われていたマルシェを見学していた。ちょうど博多駅のデパートの催事の手伝いをするために数日通っていて、仕事前に立ち寄ったのだ。九州各地の食材や加工品の業者さんが出店しているなかでお茶屋さんが目に止まった。

デザイン事務所ではデスクワークが主だったので、身体を動かしたい、「農作業がしたい」と思っていた。さつまいも掘りでもいいし畑の整備でもいい。でも季節的には4月から茶摘みの時期ということは知っていたのでお茶がいいな、漠然とイメージしていた。福岡は八女茶が有名なので、ネットで八女のお茶摘みのアルバイトを探していたところだった。それに仲の良い友人がお茶づくりに関わっていたので、お茶はキーワードというか、興味がそもそもあったのだ。

それでそのマルシェに出店していたお茶屋さんに試飲をさせてもらって、いろいろ話を聞いた。佐賀の基山町(父の住んでいる場所!)で家族で少人数でお茶作りをしていること。そして無農薬のお茶ということ。離れて暮らす父の近くというのも奇遇だし、なによりオーガニックのお茶に興味があった。基山なら通えるし、いいじゃないか……。

「アルバイトは募集していないですか?」と思い切って尋ねてみた。お茶摘みの時期は人手が足りていないと若い男性は応えた。あまりこういう申し出を受けることはないような反応だったので、私もとりあえずは保留にして後日連絡することとなった。「もしかしてお茶摘み仕事を手伝わせてもらえるかも」という予感はしていたが。

ーーそして数日後、電話でやりとりして「一度畑に来てみて決めてください」となった。3月末のことだった。

お茶農家のお父さんと茶畑の一角。

4月上旬、初めてそのお茶農家さんを訪ねた。

佐賀県基山町にある山間のお茶農家さんで、八女や嬉野と比べて知名度はないが、無農薬で作られているところが稀有な存在だ。(無農薬の農家さんは全体の0.5%程度と希少)。この時はまだ初摘みまでもうしばらく、というタイミングでそれでも初々しい新芽が、光に照らされてキラキラと輝いていた。

「あと1cmで摘み取れるかな」と農家のお父さんは言っていた。
初めてまじまじと見たチャノキ。

お茶畑に来てみて、初めてしっかりとお茶の木を観察した。チャノキ=(茶の木、学名:Camellia sinensis)と言うらしい。ゴツゴツした幹で、下の方の茶葉は深緑でかたかった。ようするに、一年かけて栄養を蓄えた葉っぱが、4月〜5月に一番柔らかくおいしい新芽となって芽吹き、それを摘んだものが「新茶」「一番茶」となるわけだ。

当たり前のようで知らない。私も30代半ばで実家に暮らすようになり、やっと緑茶を飲む習慣ができた。それまで一人暮らしで急須すら持っていなかったのだから、お茶っぱを買うこともなかった。せいぜい、お〜いお茶のペットボトルだ。コーヒーが好きでお茶には目もくれていなかった。(笑)

だから、お茶に関するいろいろなことが新鮮だった。お茶畑に足を踏み入れるのも初めてだし、春に芽吹く新芽をまだかまだかと待ちわびる気持ちも。育てられている場所、気候、そして農家さんたちの人となり。軽トラでさらに標高の高い茶畑に連れてってもらい、まだキンと冷たい空気を吸いながら、ここで農作業をしたいなと思った。

軽トラで標高300mまで登った。

農家のお父さん、息子さん、お母さんの3人で基本全ての作業をこなしているそうだ。4月上旬は、茶摘み前の雑草抜きなど畑のメンテナンスをしているということで、この日も日差しが強いなかこれから午後の草取りを始めるといった。

野苺も雑草で抜かなければならない。

私もほんのちょっとだけさせてもらったが、野苺なんてトゲが刺さって痛いし根っこが張っているし大変だ。びっしりチャノキの下に雑草が生えている。これらを茶摘みまでに取り除かなければいけないとは……。

肥料やりや剪定など農家さんはやるべき作業が山のようで頭が下がる。

これからお手伝いをさせてもらうことになるのだが、そのことも少しずつ思い出しながら書いていきたい。

ひとまず、今日はここまで。

gn.


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