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その道の花束

月12日以上、看病に使われていく有給休暇。下の子が熱を出し、治ったころに上の子が熱を出す。
4回目の保活を終え、ようやく育休復帰ができたと思ったのも束の間、慣らし保育も重なり、数ヶ月のうちに有休は尽きた。
スマホの画面に「保育園」と通知が入れば、たまの出勤時も即刻お迎えだ。

新卒から9年間勤めた職場に退職届を提出したのは、少し前のこと。多くの人が経験すると、頭では分かっていても、気持ちは現状維持を求めてしまう。
「大変だよね。辞めちゃうのは寂しいけど、子どもたちもすぐに大きくなって、丈夫になるよ」
時間短縮勤務をしたこともあった。テレワークをしたこともあった。急な休みへの理解をたくさんもらって、働いてくることができた。それでも、どうにもならないことがあるんだと、諦めることを正当化する私は格好悪い。

こんな人もいる、あんな人もいる、みんなやっている、だから出来るはず。なんてことはない。
私と同じ人はいなくて、私と同じ環境で生活をしている人もいない。状況だって、目まぐるしく変わる。だれかと比べて焦ることもあるけれど、そのときの自分なりの歩幅で、一歩ずつでも前に進むことを大切にしたい。

年を重ねるごとに慎重になって、なにかの初心者になることに対し、怖さを感じやすくなる。この年齢で初めてなんて、と、ちょっとした自尊心がチャレンジの邪魔をする。新たな環境への期待よりも、不安がまさってしまった心の壁は、自分の力だけでは破れない。
きっとひとりだったら、安定した居場所に甘んじて生きていた。独立という言葉に追いつかない実力ながらも、違う道へと飛び込むチャンスをくれた子どもたち。再び理解ある環境に恵まれて、ライフスタイルに合った働き方を模索する日々がはじまっている。

一期一会の仕事よりも、持続的な付き合いのある仕事のほうが好きだなぁと思う。きちんと関わるなかで、その人の生きる道が見えてくるように感じるから。その道が、子連れでは通りにくい道であっても、ベビーカーが通れるよう塗装された道には咲いていない花が咲いているのかと思うと、ワクワクする。
頭や体で習得した経験は、真似ることも盗むこともできない、その人だけの財産。多種多様な人が歩む、「その道」のことをたくさん知りたい。
これまで知らなかった、さまざまな道に咲く花の花束を、退職したての私の、新たな挑戦への糧にさせてもらえたら嬉しい。

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