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マゴチのフォー|魚のあら出汁を堪能する

昨今、サステナブル、エシカル、アップサイクル、などのカタカナが花盛りですが、イマイチピンと来ない、という人は、身近な例に置き換えて考えてみましょう、と賢そうな人がぐいぐいとナビゲートをしてくれまくる世の中です。

ということで、自分の場合は釣った魚の「あら」(=頭や骨などの捨てられがちな部位)を起点に、資源活用、環境配慮、そしてなにより私利私欲を満たすための持続可能な方法を考えていこうと思います。では始めます。

魚の「あら」を正確に評価する方法

自分は釣り人です、というと釣りが職業のようですが、そうではなくただの釣り好きです。ただ下手なりに、長く釣っていると大小さまざまな魚をさばいて料理する機会があり、そのたびに直面するのが「魚の”あら”をどうするか」問題です。

身を取り除いた後に残る頭や背骨などは、食べる箇所も少なく捨てられがちです。でも「あら」からは大変美味しい出汁がとれる場合が多く、捨てるぐらいなら美味しく食した方がエシカルだと思うのです。(←使い方合っていますか?)

あらの調理法として代表的なのは、味噌汁、潮汁、ブリ大根などの煮つけ、カマ焼きなどでしょうか。

煮つけやカマ焼きは、それなりに大型の魚で、あらにも身がたくさんついているので迷うことはありません。問題は中程度の大きさの魚のあらです。食べるところはないけれど、美味しい出汁がとれるあらをどうすべきか。

選択肢としては味噌汁あたりが定番となります。実際自分もこれまで、いろいろな魚の出汁で味噌汁をつくってきました。どれも美味しく、顆粒出汁とは一線を画す奥行きがあります。しかし・・・。

鯛のあら出汁の味噌汁

しかし、味噌汁にした時点で、それはもう味噌が主体であって、出汁は2次的な存在になってしまうのです。出汁単体のときは、魚種によって微妙に風味や香りが異なり、口に含むと魚の顔が思い浮かぶような繊細さがあったのに、味噌汁にした途端、ブリでも鯛でもカサゴでも、全部おんなじ「魚の味噌汁」の味になってしまうことに気づきました。

これでは、その魚の出汁を正確に評価することができませんし、いずれ飽きてしまい、持続的に私利私欲を満たすこともできません。

それではどうすればいいか。答えは簡単です。フォーにすればいいのです。

釣った魚の出汁でフォーを作る

フォーは見た目の通り、うすーいスープの色をしています。お湯か?と思うぐらい透明です。でも食すと、鶏なら鶏、牛なら牛の出汁がしっかりと感じられ、出汁の実力を試すのにはもってこいの料理だとひらめきました。魚出汁のフォーってあんまり聞かない気がするし。

もし、魚のあら出汁でつくったフォーが美味しかったら・・・。あらゆる魚の出汁比べという楽しみを持続的に実現できそうです。それでは、いざ。

アラ出汁フォーの第一号マゴチさん。アラ出汁フォーってアラフォーみたいですね、ってダジャレがすぐに思い浮かぶ自分に確かな老いを感じます

今回、フォーと化すのはマゴチさんです。理由は家から10分の砂浜で釣れること。出汁が美味いこと。以上です。

まずはマゴチをさばいて、身とあらに分けます。マゴチのさばき方はこちらにて。

いつも通り三枚におろして身・背骨・頭部に分けます。身の部分は具にしたいので、ぶつ切りにして皮目を炙っておきます。

なんでも炙れば美味くなる
もうこのまま食べてしまいたい

したらば、頭部、背骨とともに、皮を炙った身を水を張った鍋に入れます。出汁とりの開始です。

とりあえず全部鍋に放り込む
弱火で茹でているとアクがでてくるのですくう
味付けは塩ひとつまみとナンプラーちょろりのみ

アクを取りながら10分~15分程度茹でます。途中味見をすると、目隠しをしてても「この出汁マゴチですね?」と当てられるほど、まごうことなきマゴチ味の出汁がとれています。

ここで味噌を入れればあら汁になりますが、今回は塩をほんのまじない程度にひとつまみと、ナンプラーをちょろりと入れるだけです。あくまで出汁ファースト。何人たりとも出汁より目立ってはいけないのです。

細部の身も余すことなく

出汁からあらを取り出し、食べれる身を骨からこそいで集めます。具にするためです。特にマゴチの頭の頬肉(赤丸部分)は美味しいので、お忘れなく。

続いてフォーと乾燥パクチーを用意。カルディで買いました。生パクチーのがいいですが、いつも食べきれないし、高いので乾燥パクチーで妥協します。完璧主義は身を滅ぼすので妥協は大切です。

見た目はそれっぽい

フォーを5分茹でたら湯切りして丼に盛り、そこにマゴチ出汁を注ぎます。皮を焼いた身のぶつ切りと、あらからかき集めた肉をトッピング。乾燥パクチーを散らしてマゴチフォーの完成です。さてお味は。

ほぼ無色透明なスープなのに・・・

ズボボボボッと音を立てて豪快に麺をすすりましたところ・・・。

こ、これは、新種のフォーじゃ!味はまごうことなきフォーなのですが、なんていうの?これまで食べたどのフォーとも違う風味。ナンプラーと和風出汁が握手しているような、日本とベトナムが仲良くあやとりしているような、なんとも新鮮なフォーです。マゴチ出汁の個性もしっかり感じます。まさに「マゴチのフォー」以外のなにものでもありません。

あっさり味付けのフォーだからこそ、魚によって異なる出汁の味が際立つ料理法だと思いました。単なる思い付きでしたが、これからあらでとった出汁は味噌汁じゃなく、フォーにしようと思います。これ自体が主食になるからエコロジーだし。(←合ってる??)

うれしい副産物のマゴチのヒレ

ちなみに、今回マゴチのヒレも確保できました。これを後日どうするかといえば下記のとおりです。楽しみ。

オマケ

今回、マゴチのフォーをつくるために、平日夜に近所の砂浜にテント泊して、夜釣りでマゴチを確保しました。

大荷物かかえて
テント張って
なんとか1匹

朝方4時頃に雨風にさらされ、大変な思いをしてマゴチを釣り帰ったわけです。そこで気づきましたが、釣りをしない多くの人にとって魚はスーパーで切り身として購入するもので、自宅で魚のあらを持て余すということ自体がほぼないはず。

ということは、この記事はほとんどの人にとって、役に立たない、利用価値のない、捨ててもいい記事ということで、つまり記事のあらですね。ぽちゃん。

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