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一刻を争う子どもの「症状」の話 Vol.2

こんにちは。
岩間こどもクリニック 院長の岩間義彦です。

今回の記事は【一刻を争う子どもの症状】の後編となります。
患者さんからよく質問される内容をもとに、一刻を争う症状とその対処法について書いていきます。


<体調不良で気を付けるべき「5つのキーワード」>(前回のおさらい)

お子さんが急に体調不良(発熱・嘔吐・下痢等……)になると、ママ・パパは心配になります。それが医療機関(病院・クリニック)の診療時間外だとさらに不安になりますよね。

診療時間外の選択肢として「救急車を呼ぶ」「救急外来に連れていく」「様子を見る」等が思い浮かぶと思いますが、『どれを選択したら良いのか分からない』という方が多いのが現状です。

お子さんの体調不良には、注意すべき「5つのキーワード(症状)」があります。

1.頻繁に嘔吐する
2.呼吸がおかしい
3.激しい腹痛
4.明らかに顔色が悪い
5.身体がぐったりしている

このうち、1つ以上当てはまったら「救急外来に連れていく」「救急車を呼ぶ」という判断をしてください。

5つの症状は、緊急性の高い病気が潜んでいる可能性があります。一刻も早く小児科医による診断を受けてください。

本記事では、緊急性の高い5つのキーワードのうち「4.明らかに顔色が悪い」「5.身体がぐったりしている」に関する質問を中心に答えていきたいと思います。

<質問①:赤ちゃんの顔色が悪いように思うのですが……>

顔色には個人差がありますが、悪いかどうかはママやパパの感覚でご判断していただいて良いと思います。

よく「自分の判断に自信を持てない」というご相談をいただきますが、毎日お子さんを見ているママやパパが「違和感」がある場合、それは往々にして正しいことが多いです。ぜひご自身の判断を信じて行動していただきたいと思います。そしてほかに気になる症状がないか考えてみましょう。

顔色が悪いのに元気な赤ちゃんはいません。
顔色の悪い赤ちゃんは体がぐったりとしているものです。

キーワード「4.明らかに顔色が悪い」と「5.身体がぐったりしている」にどんな症状が加わるかで疑われる病気もかわってきます。

もし「4.明らかに顔色が悪い」と「5.身体がぐったりしている」に「1.頻繁に嘔吐する」が重なるようなら、前回触れた腸重積が疑われます。すぐに救急外来へ連れていってください。

「4.明らかに顔色が悪い」と「5.身体がぐったりしている」に「2.呼吸がおかしい」が重なると、小児科医は前回触れたクループや喉頭蓋炎をまず疑います。クループや喉頭蓋炎の特徴的な症状については前回の記事を読んでみてください。

こうした症状があって、クループや喉頭蓋炎に次いで緊急性の高い病気といえば、喘息です。

もし喘息につきものの『ヒューヒュー』『ゼイゼイ』して、陥没呼吸(かんぼつこきゅう)も起きているのであれば、強い喘息発作のサインです。
すぐに救急外来に連れていってください。

陥没呼吸とは息を吸うときに、のどの下や肋骨の間、みぞおちが凹むことです。

喘息は2、3時間の間に急速に症状が悪化することがあります。
特に喘息の発作は夜間に起きることが多く、救急外来に連れて行くか救急車を呼ぶかを迷っているうちにチアノーゼがあらわれ重症化したり、手遅れになることがあるので注意してください。

チアノーゼとは、呼吸不全が原因で血液中の酸素が不足するため皮膚が青紫色なることをいいます。とくに唇の色に顕著にあらわれます。

<質問②:喘息の発作は何がきっかけで発症しますか>

喘息の原因はさまざまですが、発作を起こすきっかけもさまざまですので、一例を紹介します。

のどの炎症:いちばん気をつけたいのが風邪やインフルエンザなど、のどに炎症を起こす病気です。個人的には風邪が原因で喘息の発作を起こしたと来院されるお子さん(赤ちゃん)が多い印象があります。

ハウスダスト:部屋の大掃除などで大量のハウスダストが舞い上がり、それをお子さん(赤ちゃん)が吸うことで喘息を発症することがあります。掃除をする場合は、くれぐれもお子さんが大量のハウスダストを吸わないように注意してください。

気温差:気温差がきっかけで喘息を発症することがあります。経験上、温度の変化の大きい春先や秋口に喘息発作をおこしたお子さんが来院されることが多いと感じています。

過度な運動:お子さんが活発に活動できるようになると、飛んだり跳ねたり走ったりして運動のし過ぎになる場合があります。それが喘息発作を起こす原因になることがあります。

煙やミスト:タバコの煙や汚れた空気、殺虫剤や芳香剤のミストなど、空気中に漂う化学物質が喘息発作を引き起こすことがあります。

はじめて喘息の発作が起きたとき、それが喘息であると確定診断するのは簡単なことではありません。
喘息の特徴である『ヒューヒューゼイゼイ』という喘鳴(ぜいめい)は、聴診器をあてないと確認できない場合も少なくありません。ママやパパに「ヒューヒューゼイゼイという呼吸音はありますか」と聞いて「ありません」と答えがかえってくる場合も、聴診器では確認できることもあります。
喘息が疑われる場合は、ぜひ小児科に足を運び、診察を受けることをお勧めします。

<質問③:子どもの腕に熱湯がかかってしまいました。どうすればいいですか>

熱湯が皮膚にかかってしまった場合も一刻を争います。

こんなときママやパパは慌ててしまうかもしれませんが、ここは落ち着いて冷静な対応をすることが大切です。

まず処置すべきは、熱湯がかかった部位に流水(冷水)を10分以上かけて冷やすことです。

その際に注意するのは、着ている服を脱がせないことです。服を着たままのお子さんの熱湯がかかったと思われる部位に直接、流水をかけ続けます。(水圧は強過ぎないように注意してください)

もし全身に熱湯を浴びたのなら全身にかけます。全身に熱湯を浴びてしまった場合は、救急車を呼び、流水をかけながら到着を待つのがよいでしょう。

その場にママとパパ、あるいは二人以上の大人がいれば、ひとりが水をかけ、もうひとりが救急外来を探す、あるいは救急車を呼ぶ役割をします。

ひとりしかいない場合は、とにかく水をかけ続けることを優先してください。10分以上流水をかけ続けた後に、救急外来に連れて行くか、救急車を呼ぶか判断してください。

やけどの範囲や程度を確認したくて、お子さんの服を脱がせたくなりますが、それはやめましょう。やけどをした部分は水ぶくれになっていますが、この水ぶくれを潰したりはがしたりしないことが重要なのです。

水ぶくれを覆っている皮膚は熱湯で一度死んでしまった皮膚ですが、水ぶくれの下に再生する新しい皮膚を守ってくれる重要な役割をもっています。これが残っているかどうかで予後がまったく違ってきます。
服を脱がせようとすると、この水ぶくれを覆っている皮膚をはがしてしまう怖れがあります。

外科や救急外来に連れて行くとき、濡れた服を着替えさせたい場合は、熱湯を浴びてしまった部分の衣服が残るようにハサミで服を慎重に切り取ることをお勧めします。患部に接している衣服をはがすかどうかの判断は医師に任せましょう。

<質問④:赤ちゃんがスマートフォンの充電器のプラグをおしゃぶりしてしまいました。大丈夫でしょうか>

スマートフォンの充電器のプラグにきている電気は変圧されて電流・電圧ともに低いので、赤ちゃんがおしゃぶりしても実害はないでしょう。

むしろ心配なのは、充電器から伸びているコードが赤ちゃんの首に巻き付かないかどうかの方です。

赤ちゃんを大人用のベッドに寝かせる場合は、充電器のコードなど、危険なものがないかどうか、慎重にチェックしてください。

<質問⑤:子どもの誤飲を防ぐにはどうしたらいいでしょうか>

当クリニックにも、いろいろなものを飲み込んだ(誤飲した)お子さん(赤ちゃん)がいらっしゃいます。

先日も書類を留める「クリップ」を飲み込んだ赤ちゃんが来院されました。
確認すると、クリップが少しだけ開いていて、それが喉にひっかかっていました。過去には画鋲を飲み込んだというケースもありました。

誤飲した異物が胃まで行けば便として排泄されるケースが多く、比較的安心ですが、のどや食道の途中で引っかかっている場合は救急処置が必要です。

こうしたお子さん(赤ちゃん)の誤飲のケースでもっとも危険なのが、いわゆる「ボタン電池」の誤飲です。

ボタン電池が胃の中に入ると電流が流れ、それが胃や腸の粘膜を傷つけます。最終的には胃や腸に穴が空いてしまう危険があります。

X線撮影で胃にあることがわかれば内視鏡で取り出します。腸に達してしまった場合はケースバイケースの判断ですが、開腹手術になる場合もあります。

子どもの誤飲を防ぐために当クリニックでは「5歳以下のお子さんには、丸いものを食べさせない」ことをママやパパにお話ししています。以下は一例となります。

・ピーナッツ等のナッツ類
・大豆やウズラの卵
・飴や丸く加工したチョコレート
・ブドウ等の果実
・こんにゃくゼリー

ウズラの卵やこんにゃくゼリーは、大人でも喉に詰まらせて死亡したケースがあります。

こうしたお子さん(赤ちゃん)の誤飲を防ぐには、お子さん(赤ちゃん)の手の届くところに危険なものを置かないように、常に気を配ることが大切です。

<質問⑥:子どもが頭を打ってしまったのですが、どうしたらいいでしょうか>

子育てをしていると、お子さんが頭をぶつけてしまうことを経験するかと思います。

私も息子がファミレスで、キッズチェアごと転倒するということがありました。私がほんの少し息子から目を離した一瞬の出来事でした。

大泣きしたものの元気そうだったので、そのときは様子をみましたが、今から考えると救急外来につれていって検査をしてもらった方がよかったかなと思います。

転倒による頭部打撲の場合、たいていは軽い脳震盪(のうしんとう)程度ですみますが、脳に出血を伴うような深刻な状態が起きていることもあります。

とくに頭を打った後に「4.明らかに顔色が悪い」「5.身体がぐったりしている」の症状があり、それに「1.頻繁に嘔吐する」が重なる場合は、一刻も早く救急外来に連れていくか、救急車を呼んでください。

今回の記事は以上です。

いつもご覧になっていただき、ありがとうございます。
育児に向き合うママ・パパの参考になりましたら幸いです。

岩間こどもクリニック
院長 岩間 義彦

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