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恒河沙(ごうがしゃ)

夜も眠らずに
海で泳ぐことに疲れた魚が
上陸を果たすまでに
地球は太陽の周りを
一億回周った
心が生まれたのはそのずっとあとだ

地球が太陽の周りを
一回周るあいだに
ぼくは
けち臭いことで
ひとりの友を失った
何億何十億何百億何千億の
しみったれた別れと
何億何十億何百億何千億の
みっともない後悔を
ひきつれて
地球は傾いた軸の周りを
一回転する

濾過ろかされずに残った記憶は
カスばかりだ
ミクロンの孔をとおり過ぎて
流れ落ちた記憶は
海の水になる
海はぼくを忘れている
海の水は雲になれ
雲は雨を降らせ
雨はぼくに降り注げ
ぼくの心が海に浮かぶまで

(突然ですが)
私の詩が、
『ココア共和国』(電子版)2月号の佳作集に掲載されました。
『鰻2380』という詩です。
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よろしくお願いいたします。


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