和泉光則

東海大学生物学部(札幌キャンパス)教授。理学部化学科出身。化学の基礎担当教員として化学…

和泉光則

東海大学生物学部(札幌キャンパス)教授。理学部化学科出身。化学の基礎担当教員として化学・化学実験を教えながらカウンセリングと出会い、学生相談室でカウンセリングを行いながら、化学に加え教養心理学も教えている。 専門は化学教育と教育カウンセリング。

マガジン

  • 北見薄荷の実習は化学実験科目の潜在ポテンシャルを引き出せるか

    【クラウドファンディング挑戦中】 (https://academist-cf.com/projects/286) 無機質な操作・解析・報告に終始しがちな理系実験科目に文理融合の付加価値をもたせる北見薄荷テーマの可能性について、綴ってみます。

最近の記事

【御礼】クラファン成立しました!

《3/30日終了、目標金額45万円に対し46万3千円》 みなさんこんにちは。東海大学(札幌)の和泉光則と申します。 未来を見つめるためには、過去をまず見つめることが大切。理系の学生たちに日本の産業の歴史を知ってもらう、そんな化学実験の実践の中から生まれた新たな試み。北見薄荷の過去を伝える人たちの“熱い想い”を聞き取り取材する研究に、是非ともご支援を、と、お願いしてきました。 1,000円 ビデオマガジンの早期視聴 5,000円 作成したブックレットのダウンロード&閲覧 1

    • 【研修講師/出前授業】北見ハッカの歴史と化学のコラボレーション

      みなさんこんにちは。東海大学(札幌)の和泉光則と申します。 北見薄荷を題材とした下のような出張講座(出前授業)を行っています。 1.北見薄荷の歴史と化学の講義(グループワーク主体の授業)  全て座学の講義+ワークで、Zoomによる遠隔開催もします。 2.北見薄荷の化学実験 with 北見薄荷の歴史  実習室を手配して頂ければ、薄荷の蒸留実験やメントールの分離実験を、北見薄荷史を交えながら行います。これについても、Zoom遠隔で行うことも可能です。  クラウドファンディン

      • 北見薄荷の自然科学(4);知的魅力満載の北見ハッカ科学概略(薄荷の分析)

         大学基礎化学実験のもつ文理融合のポテンシャルについての私の考えは後に回し、その前段階として、北見薄荷のテーマがどういう文理融合を示し得るのかをお伝えしたいと思います。今回は、薄荷油や薄荷脳を分析する手段の中で、手軽な方法として化学実験で行っている実習を紹介します。 1.薄荷油の分析はクロマトグラフィ  「薄荷油の成分は無限と言ってもいいくらい。とにかく植物は何でも作るので、ガスクロマトグラフィーなどで分析するとものすごい数のピークが検出されます」と、前の記事で書きました

        • 北見薄荷の人文科学(4);知的魅力満載の北見ハッカ産業史概略(平成・令和)

           大学基礎化学実験のもつ文理融合のポテンシャルについての私の考えは後に回し、その前段階として、北見薄荷のテーマがどういう文理融合を示し得るのかをお伝えしたいと思います。今回は・・・北見薄荷が終焉した後の時代の動きの象徴といえる2つのノーベル賞受賞研究を紹介します。 1.不斉合成技術の開発   (2001年ノーベル化学賞)  北見ハッカ工場が閉鎖となったのは1983年。奇しくもこの年は、薄荷にとって新たな時代の幕開け、ともなっている。以下は高砂香料株式会社代表取締役社長、桝

        【御礼】クラファン成立しました!

        • 【研修講師/出前授業】北見ハッカの歴史と化学のコラボレーション

        • 北見薄荷の自然科学(4);知的魅力満載の北見ハッカ科学概略(薄荷の分析)

        • 北見薄荷の人文科学(4);知的魅力満載の北見ハッカ産業史概略(平成・令和)

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        • 北見薄荷の実習は化学実験科目の潜在ポテンシャルを引き出せるか
          9本

        記事

          北見薄荷の自然科学(3);知的魅力満載の北見ハッカ科学概略(和種薄荷と洋種薄荷)

           大学基礎化学実験のもつ文理融合のポテンシャルについての私の考えは後に回し、その前段階として、北見薄荷のテーマがどういう文理融合を示し得るのかをお伝えしたいと思います。今回は、薄荷油や薄荷脳を分析する手段の中で、手軽な方法として化学実験で行っている実習を紹介します。 1.薄荷油の成分は無限大  薄荷油の成分は無限と言ってもいいくらい。とにかく植物は何でも作るので、ガスクロマトグラフィーなどで分析するとものすごい数のピークが検出されます。その中の主な成分について、詳しく・・

          北見薄荷の自然科学(3);知的魅力満載の北見ハッカ科学概略(和種薄荷と洋種薄荷)

          北見薄荷の人文科学(3);知的魅力満載の北見ハッカ産業史概略(昭和)

           大学基礎化学実験のもつ文理融合のポテンシャルについての私の考えは後に回し、その前段階として、北見薄荷のテーマがどういう文理融合を示し得るのかをお伝えしたいと思います。今回は・・・昭和時代の歴史は長いので簡単な総括程度になってしまいます。 1.サミュエル事件後 (「」内は日本産業史大系2 北海道地方篇、昭和35年からの引用)  さらに大正八年ごろから「薄荷取引の投機的性格が甚だしいものとなった。思惑による先物取引や、はては空券売買まで盛んに行われるようになって、薄荷の取

          北見薄荷の人文科学(3);知的魅力満載の北見ハッカ産業史概略(昭和)

          北見薄荷の自然科学(2);知的魅力満載の北見ハッカ科学概略(遠心分離法)

           大学基礎化学実験のもつ文理融合のポテンシャルについての私の考えは後に回し、その前段階として、北見薄荷のテーマがどういう文理融合を示し得るのかをお伝えしたいと思います。その4回目は、薄荷農家から買い付けた精油(=取卸油)からメントール結晶(=ハッカ脳)を単離した、その方法についてです。 1.和種薄荷、最大の特徴とは?  ニホンハッカ(和種薄荷)の特徴は精油の中にL-メントールが60%以上含まれている(これは薄荷オイル100gのうち60g以上がメントールだということ)ことで

          北見薄荷の自然科学(2);知的魅力満載の北見ハッカ科学概略(遠心分離法)

          北見薄荷の人文科学(2);知的魅力満載の北見ハッカ産業史概略(大正)

           大学基礎化学実験のもつ文理融合のポテンシャルについての私の考えは後に回し、その前段階として、北見薄荷のテーマがどういう文理融合を示し得るのかをお伝えしたいと思います。今回は大正時代に起きた事件を。 (「」内は北見薄荷工場十五年史、昭和24年からの引用) 1.農家の救済へ  「この惨状を見て立ったのが上湧別村長兼重浦次郎であった。氏は横浜地方の相場の高いのにかかわらず意外に協定値が安く、薄荷の相場の理なきことに大いなる疑問を持ち、」(途中略)「北見の特産物を農会で一まと

          北見薄荷の人文科学(2);知的魅力満載の北見ハッカ産業史概略(大正)

          北見薄荷の自然科学(1);知的魅力満載の北見ハッカ科学概略(水蒸気蒸留法)

           大学基礎化学実験のもつ文理融合のポテンシャルについての私の考えは後に回し、その前段階として、北見薄荷のテーマがどういう文理融合を示し得るのかをお伝えしたいと思います。その2回目は、薄荷農家が栽培した薄荷草からオイルを採った、その化学的方法についてです。 1.薄荷草から薄荷油を得る方法  薄荷の草は丈1メートル弱の多年草で、刈り取ったあとはさ掛けという方法で天日乾燥させておく。その後、農家数軒単位で共同利用する蒸留小屋にて、昼夜運転する蒸留装置で蒸留する。  蒸留装置は

          北見薄荷の自然科学(1);知的魅力満載の北見ハッカ科学概略(水蒸気蒸留法)

          北見薄荷の人文科学(1);知的魅力満載の北見ハッカ産業史概略(明治)

           大学基礎化学実験のもつ文理融合のポテンシャルについての私の考えは後に回し、その前段階として、北見薄荷のテーマがどういう文理融合を示し得るのかをお伝えしたいと思います。 1.薄荷の伝来  北海道に初めて薄荷が持ち込んだのは明治24年、永山村の屯田兵と言われているが、他の説もあり定かではないらしい。その後明治29年に永山村から湧別村に移入したとされるが、これについても所説あるとのこと。 (北見薄荷工場十五年史、昭和24年) 2.薄荷の栽培と出荷  薄荷は前年冬前に畑を起

          北見薄荷の人文科学(1);知的魅力満載の北見ハッカ産業史概略(明治)

          リベラルアーツ重視の時代、大学カリキュラムの自由と不自由

           大学の授業(高等教育)は、初等中等教育のように指導要領に縛られることがなく、カリキュラムは大学独自で作って文科省の審査を通れば良いし、また文科省は大学に、社会の多様性への対応を求めてもいて、かつて化学科・合成化学科・応用化学科くらいしかなかった化学系学科も今は材料○○とか総合○○とか先端○○とか複合○○とかいうキーワードがついたり、本当に多様になっている。  その一方で、少子化に伴う入学生確保戦略として、高校生にアピールできる学部学科名、教育内容の改定が、いわば社会の要請と

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          『新しい時代における教養教育の在り方について』H14中教審答申

          『新しい時代における教養教育の在り方について』(H14.2.21中央教育審議会答申)より抜粋。 第3章 どのように教養を培っていくのか第2節-3-(1) 大学における教養教育の課題 より (抜粋;太字は和泉による) 専門性の向上は大学院を主体にして行うのが今後の高等教育の基本的な方向となりつつある。その先駆けとして,法科大学院等の高度専門職業人養成型大学院(プロフェッショナル・スクール)の整備等も進められている。このことを踏まえれば,今後の学部教育は,教養教育と専門基礎教

          『新しい時代における教養教育の在り方について』H14中教審答申

          【Prologue】北見薄荷の実習テーマは大学化学実験のポテンシャルをどれだけ引き出せるか?

          みなさんこんにちは。和泉光則と申します。 私は東海大学札幌キャンパスの理工系基礎科目『化学実験』を担当しています。10年ほど前より、この科目にどれだけリベラルアーツ的価値をもたせられるか?に挑戦し始めています。 2023年、このテーマをさらに追い求めるために、あらたな研究計画を立て、2月15日からクラウドファンディング(クラファン、CF)を立ち上げました。 『北見薄荷の歴史を語り継ぐ人たちの熱い想いを化学教材に残したい!』  https://academist-cf.com

          【Prologue】北見薄荷の実習テーマは大学化学実験のポテンシャルをどれだけ引き出せるか?