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感想:映画「バービー」

観てきました。ぶっちゃけてしまうと配信とかがはじまったときに観ればいいか、と思っていたんですが…


二本立て続けに感想を読んで俄然興味が湧きましてね(笑)。ちょうど公休日でもあったことから本日行ってまいりました。アメリカンコメディは笑いのツボがズレることも多くて、なかなか米国人がドッと笑うようには楽しめないんですが、この作品はそのなかでは比較的笑える部分も多くて個人としてはお薦めの部類になる作品です。「俺は男だっ。バービーもリカちゃん人形も知るかっ」という人にも安心なように冒頭で背景が説明されますし。今の時代だと、逆に冒頭の「2001年宇宙の旅」のパロディのほうが意味不明なんじゃないですかね…

上で紹介している感想ですと「暗喩的誹謗中傷/アンチフェミニズム作品」と位置づけられていますが、観ていて感じたことは「それは男性目線で観るからそう見えるだけではないのか…」というのが正直なところで。作品として想定されている観客はどう考えても「かつてバービー人形で遊んだ経験を持つ、現在では大きなお友達になった女性達」ではないか。作品世界内でバービーの「添え物」扱いを受けているケンに感情移入をしてしまう男性は、そもそも「お呼びでない」のではないか、と思います。まあ、私自身も男性なんで色々とケンの扱いについては思う所も正直あるんですが(苦笑)、「美少女戦士セーラームーン」でタキシード仮面の扱いが添え物、プリキュアシリーズの男子キャラがストーリー上空気に近い、とか言ってもしかたないように思います。プリキュアについては最近変わってきていますが…

ただまあアンチフェミニズムという主張もわかるんですよ。若干ネタバレを含んでしまいすが、この作品で語られているテーマは「女性は自分で自分の人生を決めるべき。その選択は自由。女の子は何になってもいいし、その何になってもいいには「ただ母であること」を選んでもいい」ですから。昨今流行りの「エンパワメントされた生き方/男性に負けない生き方」だけでなく、平凡でキラキラしていなくて、なんだったら肌荒れも老化もある生き方を選んでも、それが貴方の選択なら神(創造主)はあなたを認めてくれる/尊重してくれる。自信を持って!というのが今作が最後に語るメッセージで。「失楽園の暗喩ではないか」という分析を上記のわかり手小山さんはされていますが、私はむしろこれは…

 あなたはわが目に尊く、重んぜられるもの、わたしはあなたを愛するがゆえに、あなたの代りに人を与え、あなたの命の代りに民を与える

旧約聖書イザヤ書43章4節

この章節で神が語られていることに通じるのではないか、と思います。まあこのあたりは私自身がクリスチャンであるという面も影響しているので、解釈は様々ではないか、と思いますが。正直、バービーランドは「エデンの園」というより単なるディストピアに見えますしね(笑)。

映画「バービー」という作品が女性の観客を想定している、という点は、そっくりそのまま作品世界内の描写や構造が女目線で描かれている、という点でも明らかではないか、と考えます。いやもう、その点では徹底していて、バービーランドにいるパートナー/友人といった位置づけにいる「男=ケン」は完全にバービー達の添え物/アクセサリ/都合の良い相手、という立ち位置ですし(それが理由で後半に彼らの「反乱」が描かれる)、我々の住むリアルワールドにやってきたバービーが目撃する男性もまた、家父長制のもとで「仕事に遊びにくつろぐ男達」ですしね。その点でも「全然リアルじゃない」わけです。

まあ、「バービー」の方ではブルーカラー男性も出てきますけど、揃いも揃って野卑でHで、と女性がイメージする「クールじゃない男性の姿」まんまで。それはリアルワールドにいる女性達の姿もまた同様で。上のツイートのイメージのように「男性の下/踏みつけられている存在」として描かれている。バービーを販売する「生みの親」とも言えるマテル社にしてもトップから下まで男性従業員ばかりで、女性は秘書職くらいしかないという描かれ方ですが、そういう点でもリアルとは異なるわけで。イメージ先行なわけですよ。そもそも「人形が意思を持って実社会にやってきた!」という映画で「リアルじゃない」と言ってもしかたないようにも思いますが(笑)、基本はファンタジーコメディーなんで、それに対して「実社会に対する批判的メッセージ」とか言ってもしかたないようにも思います。「Fukushima 50」とかとは立ち位置が違う。

フェミニズム的な文脈をで観ると「女性は社会的な立場が弱い/男性も自己の役割に負担を感じている」という感想を持ちますが、この作品での男性の立ち位置が「バービーを輝かせるため添え物/アンチテーゼ」であると考えるなら、「社会の中で女性はどう在るべきか」を語る作品というよりは「自分自身がほんとうに素晴らしいと思える生き方は何か」を語る作品ではないか、と思います。この作品内世界では高齢女性は決まって「美しい存在」として描かれている/主張されているわけですが、アンチエイジングとかそういう話ではなくて(笑)、この部分がそのまま「女性としての本当の美しさは何か」を問うているのではないかと。

まあ「女性としての視点で観れば~」と語ってしまいましたが、トランスでもなんでもない「只の男性」の感想ですので、生物学的女性/子宮を持つ方の性、といった方達からは「外している」と思われるかもしれませんね(笑)。いまさらですけどアンチフェミニズム映画である、という感想もわかるんですよ。「女性はかくあるべし/女性の幸せとはこれ!」という主張を全否定している作品ですから(笑)。女性をエンパワメントしている作品という意味合いでは正しくフェミニズム的作品ではありますが、昨今の流れからは逆流じゃないかとも思います。まあ、大概の人は「女性が輝いていればいい」あたりが「フェミニズム」だろうと考えていますので、フェミニストを自称する人達が絶賛しているのもわかりますが。もうちょっとこう…作品を観る、ということができんもんですかねえ…

男性が男性として観ると「男の扱い」が酷い作品でもあるので(笑)あまり男性諸氏にはお勧めしませんが「ものは試し」で観てみるのもいいかもしれません。女の視点/考え方を把握するには参考になるかと…

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