じいむっしゅ

久留米の老舗ブックカフェ琥珀亭マスター。散歩と映画と本が好きなお爺ちゃん。かみさん作の…

じいむっしゅ

久留米の老舗ブックカフェ琥珀亭マスター。散歩と映画と本が好きなお爺ちゃん。かみさん作のステンドグラスの灯り、サーフボードと本棚レコード棚。10000冊の本、雑誌。音楽はボサノバやジャズ。手相観相易風水占い師。珈琲は自家焙煎。自由人。朝は好きなサーフィンで海から滋養を。猫好き。

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『PERFECT DAYS』   「面影」を探すニコ。平山さん(おじさん)という「仮貌(かげ)」がつくる奇蹟の時間。 その1

 箒の音から始まり、影のなかへ  映画の始まりは朝陽。  夜明けです。  しずかにスカイツリー(木です。塔です)からの眺望が広がります。  映画は、そして暗転。なにか聞こえてきます。  しずかにすこしずつ音は大きくなっていきます。  竹箒の音が響いています。  朝です。  町がめざめているのでした。  近所の老女が竹箒で掃いています。  神社脇の道。  転じて、アパートの畳の部屋。2F。  耳のアップ。この映画の「音」をすべて聴く「耳」  耳もこの映画のキーワードのひ

    • 『PERFECTDAYS』おじさんという翳(仮の貌)。そこに父の「面影」を探すニコ。奇蹟の映画 その2

      秘密の木 スカイツリー そして友だちの木 木漏れ日は「隠れ日」 映画にはKOMOREBIという影の秘密が隠されているように思いました。 平山さんは「おじさん」とニコから呼ばれます。 不思議な音韻。おじさんという影(仮の貌) 木の葉っぱから光がもれて「木漏れ」と表記するのですが、別の表記をすれば「隠れ(こもれ)」日なのです。籠っている日かもしれません。木の葉のなかに隠れている日の光 隠れている謎をなげかける日の光。 そんなふうにも捉えることができます。 この映画を覆っ

      • 井戸川射子 柚子と檸檬「する、される」が「回遊する」運

        あの人と出逢ったことで、「言葉(ことのは)」の葉っぱが繁りだそうとする「運」というものがあります。 その人の持つ「言葉(ことのは)」から「運」の葉っぱを繁らせ、樹木としての「運」からちいさな実りの「運」を握ら「される」時もあるようです。 井戸川射子の詩集を本屋で手にして、家に帰って、一気ビームで読み上げました。それからこんどはあの人の小説をまた開いてみた時、「柚子」と「檸檬」が湯船のなかでぷかぷか浮いているのを見るような気分になりました。 似てるんですよね、イメージが。 だ

        • 『福田村事件』いい監督さんと出逢う」運 爺の日記

          『ブックカフェ琥珀亭』のFBに書いた文章です。  再録してみました。↓  まだ、この素晴らしい映画を観る前の気持ちが出ていました。  『ご縁』の映画です。 9/7(木)  少し日差しも柔らかくなってきたように感じられます。琥珀亭は定休日あけの日。朝は焙煎。今月も読書と映画三昧。しかも今月は47周年で、毎日19時からはhyggeの時間。 営業時間は13:00-20:00 昨日は久留米に出来た『MINOUBOOKS久留米店』で豊かな「立ち読み時間」。いいセレクトの本屋さんで

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        『PERFECT DAYS』   「面影」を探すニコ。平山さん(おじさん)という「仮貌(かげ)」がつくる奇蹟の時間。 その1

          『小説家の映画』「窓の向こうの偶然」へ視線がいく運

           子供の視線がこっちに向いているのに気づいてしまうのです。  気づくのは映画を観ている「わたし」であり、「あなた」でもあり、主人公俳優キム・ミニでもあり、小説家役となったイ・へヨンでもあり、映画そのものを撮っているホン・サンス監督のレンズを通したカメラの目が気づいたのかも、と思わせてくれる「もったいない」視線の交錯する場面そのものがつくる「なにかしらの美しい場面」の瞬間です。  そこに「わたし」が立ち合い、「あなた」も立ち合い、「きみ」も「ぼく」も立ち会えるような映画。よく、

          『小説家の映画』「窓の向こうの偶然」へ視線がいく運

          『ドライブマイカー』運転を委ねる「運」小説から映画へ

          いろんなものがたくさん詰まっていた映画だった。すばらしいシーンが満載。ところが爺にとって映画のタイトルになった原作の『ドライブマイカー』のほうは、あれ?というほど印象に残っていなかった作品だった。 映画館で観る前に短編集『女のいない男たち』に所収された『ドライブマイカー』をまた読んだ。やはり、??といった印象しかなかった。じゃぁ濱口監督は作品をどう映画にするのだろう、と思っていたら、最初のほうは、短編集『女のいない男たち』のなかの『シェラザード』が下敷きになっていた。ヤツメ

          『ドライブマイカー』運転を委ねる「運」小説から映画へ

          『イル・ポスティーノ』暗喩と出遇う運

           なんてことはない単純なストーリーの映画なのに、俳優たちの個性がやたらと光っている映画。いや、それだけのシンプルさで光る映画というのはそうザラにはないのです。  監督はマイケルラザフォード。主演は猟師の息子で郵便配達人になる素朴なマリオ役のマッシモトロイージ。この映画のクランクアップ直後に他界したという、今となれば不思議な運勢の持ち主。  そんなマリオ役のマッシモトロイージの内股演技がかれの田舎っぽさや素朴さをよく表現していました。  出演は、チリから亡命してきた詩人パブ

          『イル・ポスティーノ』暗喩と出遇う運

          アニエス・ヴァルダ 『5時から7時までのクレオ』タロットから始まる「運」

          運の話である。 最初はタロットから。 たった2時間主人公女性クレオをカメラで追うだけ。そのシンプルさのなかに、アニエスヴァルダの映画作りのエッセンスがすべてこめられている。 しかも「運」の話がよく出てくる映画である。 映画の各所に「運」についての会話が散りばめられている。 アニエスヴァルダが意識化して俳優たちに語らせた「会話」だから、監督のなかにある「運」についての「考え」が出ているのだとも言える。 パリ左岸の美しい風景を舞台に、クレオにまつわる「運のやりとり」とその2

          アニエス・ヴァルダ 『5時から7時までのクレオ』タロットから始まる「運」

          『北澤楽天と岡本一平』竹内一郎 集英社新書 「僥倖という運」「枯淡という運」

          ひさしぶりのnote。 まずは爺の私小説的「運」のはなしから。 「友人の本のなかに見える「運」のはなしからはじめようと思っていた矢先、私事として、琥珀亭のすぐ近くに「楽天」モバイルがチラシ一枚配っただけで高さ15mアンテナ基地局を建設しようとしていることが発覚。電磁波バリバリですよ。近所のかたの子ども部屋から5mの所にに建てるとは。しかも説明会もなし。抗議の電話をかけようとチラシに書かれている代表電話に朝の9時からかけてもかからない。無音。へんだなと思いよく調べてみると同

          『北澤楽天と岡本一平』竹内一郎 集英社新書 「僥倖という運」「枯淡という運」

          古井由吉『陽気な夜まわり』記憶というものを文体化する「運」

           映画や小説のなかに描かれる「運」というものに惹かれだしてもう何十年かになります。古希になってすこし人生がわかったような爺がここにひとりいるんですが、それでもまだまだ映画や小説のなかの「運」はわからないことだらけ。そうか、ならば、思索の夜まわりでもしてみますかね。  長ったらしい標題になりました。  古井由吉の文体も、ゆるゆるゆるりと、ある緊張感をもったまま、えんえんと、句読点で繋げられ、作家の息遣いのようなリズムを読み手にもたらしながら、「けっしてだらだらではない」文体が

          古井由吉『陽気な夜まわり』記憶というものを文体化する「運」

          琥珀亭日乗

          おはつです。古希の爺さま、わくわくドキドキ。ようやくnote開設に至りました。よろしくお願いいたします。【じいむっしゅ】と申します。爺さまの「じい」、フランス語の「むっしゅ」それに大好きな映画監督ジム・ジャームッシュの「むっしゅ」をかけあわせたニックネームを使っています。 本に囲まれた喫茶店を45年やっています。 珈琲は自家焙煎。ふるーい富士ローヤルの焙煎機(店と同じ歳で45年目)で朝のうち焙煎、庭掃除、花壇の手入れ、本棚整理、ジムプール、たまに海(サーフィン)、古本や中

          琥珀亭日乗