ほど狭しといへども、夜臥(ふ)す床あり、昼居る座あり。一身を宿すに、不足なし。(中略)ことを知り、世を知れれば、願わず、走らず。ただ、静かなるを望みとし、愁へ無きを楽しみとす。鴨長明『方丈記』角川ソフィア文庫
狭いとはいっても、夜に寝床があり、昼に座っている場所がある。ひとりで暮らすには十分だヨ。ものの道理が分かるようになり、世の中のありようを知ったならば、無理なことを望ます、あくせくしないことだネ。とにかく静かな暮らしを心がけて、心の愁いなく毎日を楽しんでいるのサ。
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思ふべし、人の身にやむことを得ずして営む所、第一に食ふ物、第二に着る物、第三に居る所なり。人間の大事、この三つには過ぎず。餓えず、寒からず、風雨に侵されずして、閑(しず)かに過すを楽しびとす。兼好『徒然草』第123段
何か食べるものがあって、雨に濡れる心配がない。それで家の中でしずかに過ごすことができたらいいじゃないか。
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生き甲斐(がい)とは、考えてみれば、与えられた所与としての生命を手段として、己れがこの手段を捧げて悔いない目的を自ら見出さなければ決して生じはしないものではなかろうか。
今道友信『美について』講談社現代新書
今日、いちにち分の命を使って何をしよう。
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