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鑑賞:2023年11月@TOHOシネマズ新宿

臆病な者ほど生き残る

監督・脚本・編集を北野武さんが一手に仕切る、KADOKAWA映画。主演もビートたけしさん。なんでもやりますね!

詰め込まれたシーンの数々に、時間を忘れて見られました。タイトルのとおり首、首、首です。テレビではやらせてもらえないでしょう。

全体を通して受け止められたのは、侍や仏門のしきたりを農の秀吉がバカバカしく見ていることと、影武者を使うなどで身を案じまくる家康や面倒くさがりの秀吉が生き残るということ。社会は何かの業界、序列、ルールで成り立っているけれど、それぞれ外の世界から見たらバカバカしくも見えるという哀れさ。そして家康や秀吉のように、正面突破ではない計略や保身がいかに大事かを見せる。秀吉が「おれ武士じゃないもん」と言ってのけるのが印象的でした。侍、いいもんじゃない。

役者さんは、監督の仲良い人という感じです。中村獅童さん、浅野忠信さん、岸部一徳さんがハマってたでしょうか。予告映像から加瀬亮さんの織田信長と、西島秀俊さんの石田三成がどうなるのか期待と不安でしたが、期待も不安もそのままで、裏切ってくれませんでした。加瀬亮さん、めっちゃ頑張ってる、悪く言うと盛りまくってるぐらい、スゴイ加瀬亮さんらしくない感じで「これ加瀬さんなのか?すげえな」とは思いましたけど、怪演が求められる信長が既にこちら側にあって、難しいなと感じました。

ストーリーは直球です。本能寺の変の前後譚。「信長が天下統一やったるで」から「石田三成が仇討ちされる」まで。そこに、落武者狩りから武将に成り上がりたい中村獅童さんと、忍びで世渡り上手を狙う木村祐一さん、武将たちの間に入り込む茶人の岸部一徳さんを織り交ぜるお話の妙が、本作の面白さだと思いました。

首チョンパ・男色が特徴的。ほかにも、秀吉が頭下げたり忍びをうまく使って世を動かすあたりに、監督の「実際のところは、こんな感じだったんじゃないか?」という話になっていると感じます。

笑えるシーンがいくつかあります。サービスなのか、照れなのか分かりません。残虐なシーンとのバランスが、持ち味なのでしょう。下手したら邪魔しそうなんですけれど、これはこれで味だな、と思える仕上がりでした。
いつかテレビでオンエアされるのでしょうか。

▲構想30年という本作の原作小説です。

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