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『自閉症だったわたしへ』ドナ・ウィリアムズの闘いの物語(後半)

《前半からの続き》

精神科医のメアリーに出会ったドナは、次第に彼女に憧れるようになり、18歳で復学することを決める。生物の授業で植物はどうやって生きているかを聞かれ「土を食べ、水を飲んで生きています」と答え、皆に笑われたドナは、どの学科でも高い得点を取って高校を卒業し、大学に進学する。

音楽が好きなドナは、勉強の傍中古のピアノを買い、独学でクラッシックの曲を作るようになる。

音楽好きでピアノのうまいティムという青年に自分の作った曲を聴いてもらううちに心を通わせるようになるが、彼に愛の告白をされた瞬間に別れを決意し、その後『正常と逸脱』というテーマで論文を書き、卒業する。

彼女はその間もずっと、キャロルとウィリーという仮面の下に本当の自分を隠し続けていた。

もし本当のわたし自身というものが、単に私の存在意識そのものだというならば、それは私が完全に眠りに落ちてしまったわけではなさそうだった。また、もし本当のわたしがわたしの意識の中にいるならば、それは完全には目覚めていない、半分夢を見ている状態にあるようだった。本当のわたし自身をつかもうとするときの感触の確かさ、深さに比べると、他のあらゆるものは、虚しく、人工的で、のっぺりと表面的にしか思えなかった。


自閉症の特徴の一つなのだろう、その後の彼女の人生でも、心が通じ合ったように感じた瞬間に相手から距離を置くことを繰り返す。

幼い頃から他の人とは違うと感じ、体に触れられること、心を知られることが心底恐ろしく感じながら、それでも人との触れ合いを求めてやまないドナ。常に違和感を感じる世界に馴染むため仮面をかぶるドナに、どこか私自身との共通性を感じ、そしてそれでも逆境に負けず前を向き進み続けている彼女の姿は強くて美しく、一気に読み進めてしまった。


前半後半共に、私が共感する所や、特に触れたかった内容のみ取り上げたが、他にも自閉症の方独特の感じ方、物のとらえ方、また、彼女の持つ食品アレルギーを知り対策することによる情緒の変化など、読みやすい文体ながら得られる情報は多い。

この後もドナにはたくさんの印象的な出来事や出会いがあり、最終的にこの本を出版することになるいきさつの所で終わるのだが、エピローグには自閉症を理解するための助けになる内容も書かれており、読み物としてだけでなく、身近に自閉症の方がいる人の参考書としても優れた内容となっている。


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