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読書記録|2023.06-07

6月から7月にかけて読んだ本。短編小説が好きなので、気づいたら3冊すべて短編小説でした。


|アイネクライネナハトムジーク/伊坂幸太郎

出会いがテーマの連作短編小説。

恋愛が軸となった物語ではあるものの、日常の中のあらゆる出会いにおいても言えることなのかもしれないなあ、と思いながら読み進める。

出会いとは意外とさりげないもので、後になって「あれが出会いだった」と気付くもの。そして、今この瞬間が幸せだと思えるかどうかが大事だということ。

「あの旦那とわたしと子供たちの組み合わせがね、わたしは結構好きなんだよ」

由美の台詞

由美のこの台詞がとても好き。本人たちにしかわからない空気感とか、そういうところの話なのだと思うけれど、この台詞から幸せな家族の風景が浮かんでくる。

私自身も夫との"組み合わせ"は案外悪くないんじゃないかと思っている。初めて出会った日のことを思い返して、あれが"出会い"だったんだ、なんて考えてみては、今が幸せであることに改めて気づくことができた。


|昨夜のカレー、明日のパン/木皿泉

嫁テツコとギフの二人暮らしという設定に興味がわいた。一体どんな暮らしをしているのだろう、と。

「夕子」で描かれた古い平家の建物や銀杏の木、「男子会」で岩井さん目線で描かれた寺山家の暮らしの情景が、その答えになった。

はたから見れば不思議な二人暮らしのように見えるけれど、「昨夜のカレー」や「明日のパン」のような、ごく日常がそこにはあるのだと感じた。

物語は、一樹の死と向き合い、受け入れることで、登場人物たちがとらわれているものから解放されてゆく。

「自分にはこの人間関係しかないとか、この場所しかないとか、この仕事しかないとかそう思い込んでしまったら、たとえ、ひどい目にあわされても、そこから逃げるという発想を持てない。」

「逃げられないようにする呪文があるのなら、それを解き放す呪文も、この世には同じ数だけあると思うんだけどねぇ」

ギフの台詞

私たちは知らず知らずのうちに多くのことにとらわれて、身動きが取れなくなったり、苦しくなったりする。それを解き放す呪文に出会ってはまたとらわれて、を繰り返しながら生きている。

個人的に岩井さんの話が好きで、「魔法のカード」あたりから序盤の印象を覆された感覚があった。

それぞれの思いを胸に、登場人物たちが幸せな方向へ向かっていく様子に心温まる。


|1日10分のごほうび

8人の作家さんの短編小説が詰まった一冊。
寝る前の10分間に読もうと思って手に取ったのだけれど、結局一気読みしてしまった。さまざまな作家さんの作品が同時に読めるのがこの手の本のいいところ。

江國香織の「晴れた空の下で」「南ヶ原団地A号棟」と、原田マハの「誕生日の夜」がお気に入り。

どれも心にするっと入り込んできて、じわっと沁み渡る。そんな物語たち。

「誕生日の夜」は、自分と同い年の女性同士の友情を描いていて、うんうんわかるわかる、なんて共感しながらページを捲っていた。

嫌いだ!と思うことがあっても、いざ疎遠になると心配になる。そんなの友情と呼んでいいのかな、と疑問に思ったこともあったけれど、女性同士の友情ってそういう風に成り立っていても変じゃないよなあ、と思わせてくれた。

他の原田マハ作品も読んでみたい。



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