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土曜の昼下がりと映画|『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』

フィルマークスのclip欄に、ずっと昔にclipしたまま消化できていない作品がたくさん並んでいる。

今日は絶対に映画を観ようと決めていて、clip欄の中から『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』を選んだ。

1995年に公開された、約100分の物語。列車で出会った男女2人がウィーンで下車し、夜通し街を歩きながら会話をする。

会話が軸となる映画は内容によっては退屈になりがちだけれど、この作品はそんなことはなく、むしろ人間味の溢れる2人の会話がおもしろい。


列車で出会って意気投合して相手を好きになって…、こんなロマンチックな出来事なかなかあり得ない話なのに、なんだかこのシチュエーションにはとても共感する。

相手のことを知るため、バスの中で質問タイムを設けるシーン。会話の流れなど関係なしにどんなこともストレートに質問できる。相手がなんと答えるのか、それを聞いて自分がどう感じるのか、わからないからこそスリルがあってわくわくする。

この人ともっと過ごしたいという”本能”と、いずれやって来る終わりに傷つきたくなくて気持ちにブレーキをかける”理性”が、鬩ぎ合うところも生々しい。

近いような遠いような、もどかしくて曖昧な距離感をお互いに探り合う。恋愛って常にそういうものなのかもしれない。一夜限りというシチュエーションがこの恋をより燃え上がらせているようにも見えるけれど、惹かれ合う2人にとって、それはもはや美しい時間なのだと思う。


学生時代、わざと終電を逃して友達と夜な夜な居酒屋で人生について語り合ったり、好きな人と薄暗い公園をブラブラと散歩しながら気持ちを探り合ったりしたことを思い出した。

20歳前後の頃が一番自分を模索していたし、他の人がどんな風に人生と向き合っているのか知りたかった。そんな中で、考え方が好きだと思える人にも出会った。

2人の会話を聞いていると、過去の自分と重ねてしまう。


セリーヌは「相手を知るほどその人を好きになる」と言った。

恋愛に限った話ではないのだけれど、第一印象ではわからない相手の本質を知ったとき、相手のことを人としてすごく好きになる。ああこの人も人間なんだ、って思って、なんだかとても愛おしくなる。

「この世に魔法があるなら、それは人が理解し合おうとする力のこと」

セリーヌの台詞

理解しようとすることって、やっぱり会話をすることなのかなと。相手を理解する努力を怠ってはいけないと思わせられた。


ビフォアシリーズはあと2作続いているようなので、7月になったら続きを観たい。久しぶりに心に刺さる映画だった。

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