要望と指導の匙加減

「教師の権力に屈するしかない」
 とあるYahoo!ニュースに出てた保護者の言葉ですが、実は現場ではもっと多くの頻度で聞く言葉です。この感覚は理解できます。親として。
 しかしある一定の限度までは教員を信頼するしかない。
 なぜなら親と子どもが教員を信頼しなければ、成果は上がらないからです。
 成果が上がらなければ迷惑を被るのは親と子どもです。
 だから教員の責任は重大なのです。
 信頼していただいている限りは常に結果を出していかなければなりません。

 しかし、冒頭のように教師の権力が学校において存在するのかどうかは今のご時世、半々です。
権力を強制力と捉えるか
   枠組み・ルールと捉えるか
   指導することと捉えるか

もう一つの視点は誰のための強制力・枠組みかということです。
   教師のために権力なのか
   学校のための権力なのか   
   その子のための権力なのか
   周りの子のための権力なのか
   集団のための権力なのか

 結局基本的に喋る側によって権力そのものの解釈が違いますし、利益も違います。
被害者の権利か、加害者の権利か、働く者の権利か、地域の権利か
どこにベネフィットを置くか、WinーWinなどというけれど勝ちたい人間、争う人間はlose-loseをも受け入れてしまいます。

 こういうふうに学校現場がトラブルに巻き込まれる場合、基本的に有効な解決を見出すことが非常に難しいです。勢い解決できないままに時の流れに身を任せることが多くなってしまいます。特にそうしたものが溜まりに溜まった学期末は悲惨です。
 故に私の場合、年度当初はいつも昨年度の反省が生かされているかどうかを目を皿にして観察しているのですが、忙しさにかまけてしまいきちんと省察されることはありません。ただ漫然と人を代えリセットしていきます。
 正しく権力が行使されなかったことに対する学校としての「振り返り」はないわけです。正しい権力とは文字通りの正しい力および影響です。権力の行使という表現は学校においては非常に適切な表現ではないかと私は考えています。
 これまで強制・叱責・指導・援助・支援など言葉の種類にとって教員ー子ども関係を分類して整理する試みがありましたが、ここに至ってはどのようにでも受け取れる教師の側からの関わりとしての「権力」の正しさについて考えていく必要が出てきたのではないか?という視点の統合に思い至ったわけです。

もちろん学校が一ミリも悪くないとは言いません。
 しかしどのラインを越えれば、学校として争う(とまでいかなくても正当性を主張する)必要があるのかはいつも考えるところです。教育委員会や管理職が事実をさておいて、とりあえず教員に謝らせる状況はすでに多方面にバレ始め、保護者はなんとかとそこまで持っていこうとし、勘のいい教員はそういう状況にはなるべく近づかないようになってしまっているのです。
これでは教員になりたい人間が増えるはずがありません。
    教員を続けたいとは思いません。
そこに「正義」はあるんか?という話です。

 2、3日前に書いたことと重なってしまい誠に恐縮なんですが、教員が学校で指導するのは当然です。保護者と子ども、地域が学校に要求を持つことも良いことだと思います。
 大事なことは、指導にも要望にも匙加減が必要だということです。
 指導の匙加減が謎ルールになっていないか?
 要望の匙加減が一部の人間の利益だけを考えていないか?
 公立学校の教師にとって一番重要な部分は私心を捨てた中立性・公平性を持つことです。そして学校は各々の中立性・公平性を持って全体の合意形成を成そうとする努力がどのぐらいの大きさでなされているのかを常にチェックする組織でなくてはなりません。

 匙加減自体が難しいことですが、それを各々が胸筋を開いてチェックし合い、学校としての匙加減に練り上げる努力をしていくことこそが、遠回りであっても仕事しやすく、やりがいがある仕事になっていくために必要なことだと思います。

 しつこいようですが匙加減のためにはどうしても枠組みが必要です。
 しかしそれは常にトップダウンであることを必要としません。あるときはトップダウンでもいいし、あるときはボトムアップでも良い。また誰かの実践研究や研究授業に学ぶのも良い。子ども同士が練り上げても保護者の訴えでもいい。そうしたものたちをみんなで揉んで叩いて捏ね回すことで個人の実践に還元されるなら、それが誰にとってもwin-winの正しい権力のあり方になるのではないかと思います。
 常時、訂正可能な権力性を教員が意識できれば、信頼関係構築の一助になるのではないかと思います。 
 
 最後に決して揉め事、感情の行き違いはなくなりません。人間だもの。少なくともこのスタンスを管理職が持つべきです。

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