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初個展直前に脳梗塞になった話:88~97日目

88日目:驚愕の栄養指導

その栄養士は1Fの栄養課から階段で駆け上がって来た直後だったらしくゼェゼェと肩で息をしていてその熱も冷めやらぬ感でのとても熱のこもった指導で細身からは想像出来ない逞しさを感じる。とにかく塩分を控えて下さい、アルコールは飲まないに越したことはないです、そして驚愕だったのはなんとラーメンは1杯で僕の許容値の1日分の塩分をとってしまうと。お酒を飲んだ後は高確率でラーメンを食べていた僕は驚いた。減塩醤油を退院の時プレゼント出来ますけどどうしますか?と聞かれた。僕は、でしたらお言葉に甘えてボトルキープお願いします、と言うとたくましい印象の栄養士さんは可愛らしい笑顔で笑った。

89日目:待ちぼうけ

STノッポさん。
ある時から待ち合わせの設定をしている。曜日毎にココといった感じで。ある時は廊下のこちら側。ある時は廊下のあちら側。ある時は食堂。ある時は病室の前。この日は祝日もいりくんでいたこともありノッポさんが間違えた。しかしだ。時間になっても気付かず、ただ座って待ってた僕に問題があると思った。駄目だ。ダメだ。こういうところを直さないとダメなんだ。

90日目:前向健忘

ノッポさんに借りた高次脳機能障害についてのイラスト主体の本。過去の記憶に影響する逆行健忘(ギャッコウケンボウ)と、新しく覚えられない前向健忘(ゼンコウケンボウ)があるらしい。僕はまさに前向健忘だ。入院してだいぶたった今も、何かを調べようとしていて発見した途端になんでこれを調べたのかを忘れてしまう。
対策としてメモ取を習慣づける。不意の予定はどうするか?スマホとか肌身離さないものに登録してもそもそもスマホを忘れる可能性もある。忘れぽくなる。端から見てもそれは判らない。だから不便なわけだ。脳の中は判らないし判らない事も判らないという症状な訳である。だからとにかく思い出すキッカケや引っ掛かりになる様に繰り返し繰り返し刷り込む。しつこく自分ごととして脳に刷り込む。

91日目:意外な部活

ST全員の部活は何をやっていたかを聞くという課題を受けた。課題の出題者であるSTノッポさんは中学の時はバレーボール部でなんとキャプテンだったそうだ。いや、、、でも、、、なんとなく想像はつく。高校ではまさかの軽音楽だったそうだ。先日の意外で素敵なお嬢様風ファッション ( 86日目:意外と言ったら失礼な私服→note ) といい振り幅が大きい。さらにドラムをやってたと聞き意外性にも程がある。でもだから僕がエアロバイクを漕いでる最中にトランプやカードをあれだけ出せるんだなと合点がいった。

夜、食堂の窓の向こう。花火が上がってる。遠くのビルの向こう。日の出みたいに。違うのは、何発もキラキラと。こんな状況下で上がるのは季節外れでも待ちわびた人には嬉しいはず。今年初めての花火だ。

92日目:ショックで認識する

精神論ではなく根性論でもない。ただし合理的に身体が強くないと元気もやる気も出ない。丈夫であれば健全にやりきれる。卵が先かひよこが先かに似てる気がする。

STノッポさん。
課題や問いに対して遂行にあたっての手順を判断する能力のテストというものをした。
色々小道具なども用意された状況。あるものには手を触れず、ある容器の中の、あるものを出しなさいというテストだった。これはショックだった。まったく閃きが無かった。全く進まない僕にノッポさんがヒントと言ってとある動作をしてくれてやっと気付けた。こんな事も判らない状態なんだなぁと本当にショックをうけた。しかし同時にやる気スイッチも入った。

93日目:連日のショック

OT(作業療法士)朗らかさん。
定期的な身体検査。肘の曲がる角度や膝の曲がる角度。その後数週間ぶりに外を歩いた。とても天気が良く本当に気持ち良かった。人間は日光なくしては生きられないとしみじみ感じた。南国の人が明るく寛容なのもこの太陽が成せる技だと思う。久々過ぎてどうやら足の筋肉が落ちてる事に気がつく。それと街中の喧騒。人や車が動く世界。疲労を感じ初めたその時、朗らかさんに肩を捕まれた。僕はボーっとしてたために目の前の横断歩道が赤信号なのに気付かなかったのだ。側の自転車のママさんも怪訝な風に自転車を降りて横を通りすぎた。その顔は見れなかった。これまたとてもショックだった。これにはやる気スイッチというよりも"注意力落ちてる事を今一度再認識するんだぞスイッチ"が入った。

94日目:栄養指導の成果を

OT朗らかさん。
先日の調理 ( 73日目:しょっぱ過ぎた肉野菜炒め→note ) の挽回。栄養指導を受けた後に塩分や油の量に気を付けて味付けをする。あの後ノッポさんと小鳥さんに聞いたら案の定かなりしょっぱかったとの事。対策として油と塩を控える。こまめに味見する。イメトレもした。前回のフライパンより大きいものを選ぶ。一通り袋も空ける。舞茸と豚肉も切っておく。油少な目にごま油も入れる。ちょっと多いかと思い捨てる。豚肉投入してお酒を少々入れる。胡椒をかけすぎない。火が通ったと思われるちょい前に舞茸投入。一呼吸おいてのカット野菜投入。満遍なく火が通るまでフライパンを振る。塩をホントに少々。味醂も少々。醤油もちょびっと。そうだ前回入れ忘れた砂糖少々。味見。よし完成だ。野菜もシャキっとしてて味付けも丁度良くて自画自賛だ。

病院食は薄いだとか不味いだとか言われてるけども僕には全然丁度良かったし、むしろ1日の塩摂取目安が6gなのに3食通してこんなにきちんと味付け出来てるって凄いと思う。というより普段全く気にせず塩分オーバーしてたんだと気付く。今回の野菜炒めみたいなシンプルな料理でもこんなにキチンと狙い通りにやれると嬉しいものなんだなと。栄養指導は大切だ。日頃気にしないといけない。また再発させない様に。

95日目:ニューロンがシナプスが喜んでいる

STノッポさん。
記憶の再テストをした。全体の点数は前回よりクリアしていたがやはりチョコチョコとミスしていた。続いて注意力の再テストをする。終わって全体の評価はケアレスミスを注意するとなった。

その後少し時間があったのでプリント課題をする。文字の入れ替えはアナグラム問題というのだろうか?簡単なカタカナ7文字が全く解けない。【タオサミタリガ】あまりに解けずノッポさんにヒントをお願いしたら『メジャーなもので、多分大半の人は持ってるはずですよ』と。時間が来てしまい、ノッポさんが戻り、ドアの向こうに消えた途端、閃いた。オリタタミガサ。折り畳み傘だ!とても嬉しい。この喜びはきっとニューロンやらシナプスやら別の回路が繋がったんだと思う。

96日目:重要なパン屋

午前STノッポさん。
昨日よりも高レベルだという記憶検査をした。だいぶ消耗した。脳が疲れると眠くなる。ただ以前よりも回復をしっかり自覚出来た。文章を聞いてからの口語要約だったり覚えておいての条件だったり。嬉しい事が起きれば元気も出てくる。

午後。STリーダーさん。
近くに出来たパン屋の話を聞く。リーダーさんの同僚が近くに出来た美味しいパン屋に行ってパンを買ってきたらしく、スパゲッティを食べた後でも食べれる位に美味しいパンだという。お店までのルートを聞く。何でもクロワッサンが人気らしい。このパン屋さんは今後も足繁く歩き練習で通る事になります。

97日目:奇跡的な看護士

とある認知症患者さんが居た。その患者さんはその症状のため、同じ言葉や脈略のない言葉を繰り返す。大半の看護士さんがなかなか会話や看護が困難であった。しかしある看護士さんが、一際、とても誠実にそれらに返答している。そして奇跡的にその患者さんもその看護士さんの時だけ正常な受け答えをしている。これには衝撃が走った。そして誠実とは何か、正しいとは何かを改めて感じた。考え直した。看護士さんの優しい言葉と誠意からのコミュニケーションが患者さんにもきっと伝わってるんだと思う。その看護士さんを廊下で見掛けた際に『◯◯さんはとても優しいですね』と伝えたら『嬉しいです』と素敵な笑顔で返してくれた。
『僕も嬉しくなります』と返した。

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