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花びら落ちる

20240406

桜の季節は切ない。

春は始まりの季節だ。

私は、家族とお別れしてきた。
別に、人が、家族が死んだわけじゃない。

私を作った家族、親や弟も、
私が作った家族、妻や子どもや妻も、
みんな生きている。

私を作った家族は、たくさん一緒に過ごしたから、一緒に暮らすことを卒業しただけだ。

私が作った家族は、一緒に暮らすことをやめた、家族で生きることをやめて、別れた。

冬の終わり、まだまだ寒さが残る季節に別れた。
春の訪れという始まりの季節が、逆に、思い出を蘇らせる。
コートを脱ぎ捨て、身軽になっていく季節の最中で、心は分厚い毛布に何重にも覆われている。

季節の変わり目には、春には、時が経つのを感じる。
春という季節は、世界が塗り絵みたいに彩られ、変化していく。

季節という時間が不可逆的に過ぎて行くように、
私たちの心もまた、波のように変化していく。

私たちの心は、時代によって、社会によって、形成された。その時々で感じた心象が積もり重なって、価値観を形成していく。自分の価値観は、その時代のその社会の影響を受けて、変化していく。自分の価値観は、一定ではない。自分の生きてきた歴史が地層のように積み重なった上に、価値観がある。今の自分の価値観は、表層の問題でしかない。

過去もまた、地層のように積み重なって記憶となる。記憶を掘り起こすとき、私たちは今の自分の価値観によって、過去を捉える。だから、その時々の自分の価値観によって、過去の捉え方が変わる。現在の自分の価値観によって、過去が変化する。過去の出来事という事実は変わらないけれど、そこに意味付けをする自分の価値観は変わっていく。

今は、どんなに辛くとも、予想もしないような未来が待っていて、その時の価値観で、現在を捉えるならば、あのときは、あれでよかったのかもしれないと、感じるのだろう。

幸と不幸が混じり合った、グラデーションのような私の人生は、死を前にして振り返ったとき、豊かな人生だったと、笑えるはずだ。







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