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【本抜粋】ビジネスの未来 〜 織田信長の錬金術

2022/2/3


織田信長はおそらく、日本の戦国時代がいつまでも終わらない本質的な理由について気づいた、歴史上最初の人物である。

戦国時代において、武将の格を決める最も重要な指標は「 石高 」であるが、これは要するに「 保有している耕作地の大きさ 」のことを指す。なぜ「 耕作地の広さが問題になるか 」というと、当時の経済規模は耕作地の面積にほぼ比例したからである。信長は、この点を治世上の問題として考えた。

日本は島国で国土を容易に拡大することができない上、その国土の九割は山岳や丘陵地帯で耕作に適した平地は一割程度しかない。つまり「 耕作地の広さ 」をめぐって争うと必ず「 誰かが得をすれば、必ず誰かが損をする 」というゼロサムゲームにならざるを得ない。これが、信長だけが気づいた「 戦国時代がいつまでも終わらない本質的な理由 」だった。

信長は「 仮に、自分が天下を統一することになったとしても、この問題から逃れることはできない」ということに気づいていた。自分の部下である武将が勲功をあげたとして、彼に領地を与えようとすれば、それは必ず、他の武将もしくは自分の領地が減ることを意味したからである。このような状況では安定的な統治など望むべくもない。

最終的に、信長はこの問題を極めて鮮やかに解いてしまう。

「 茶道 」によってである。

信長は、自身が茶道を嗜み、茶器などの茶道具を山や城と交換することで、巨大な価値空間を創出することに成功した。
「 一種の貨幣を生み出した 」といっても良いだろう。

信長が率先して名品を求めるのを見た武将は、我も我もと同じような名品を求めることになり、茶器の値段は天文学的な水準にまで跳ね上がり、最終的には茶碗一つが領地や城と取引されるほどの価値を持つまでに至る。

かくして、信長はその狙い通り、土地のゼロサムゲームという有限性に制限されることなく、まるで錬金術のように価値を生み出すことを可能にした。


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