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三島、遠藤、吉行、澁澤…戦後作家はなぜか、天の邪鬼な人生観

怠惰。軽薄。ぐうたら。不道徳。快楽。

戦後、1970年代、80年代は、
基本的に勤勉だった日本社会に、 
風穴をあけるような、
かぶいた価値観を謳うたぐいの、
エッセイがよく売れました。
それも作家がよく出しました。

三島由紀夫『不道徳教育講座』
吉行淳之介『軽薄のすすめ』
梅崎春生『怠惰の美徳』
遠藤周作『ぐうたら人間学』
澁澤龍彦『快楽主義の哲学』

戦後の日本は、
まじめ過ぎで、重厚過ぎて、
勤勉過ぎて、道徳的過ぎて、
快楽などは疎かにしてた…らしい。

そうでなければ、
こんなタイプの本を
作家も書こうとは思わないし、
読者もこんな本は買わないでしょう。

ところで、
今はやりの自己啓発本の読者を
イメージしてみて下さい。

まじめで重厚で倫理的な人生を
送ろうとしてるイメージが浮かぶ。

そんな自己啓発青年には、
澁澤龍彦の『快楽主義の哲学』を
オススメしたいなあ。
宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ」という
ポエムは、あれは  
弱虫の嘆きだ、なんて
澁澤龍彦は書いてるんです。
「少しの米と味噌でいい」なんて言わず
ステーキを食べたいと思うのが
人間らしい自然な感情で、
清貧ぶるのは日本人の悪いクセだと。
私は賢治も好きだから、
毎回ちょっと複雑な気持ちになる。
でも快楽を重んじる哲学は
心の根底に刺さるんですよね。

軽薄もいい。
これはダンディズムですね。

まじめさは誰でも実行できる。
でも怠惰に生きるには
センスと勘が要りますよね。

それにしても、
こうした、一見、人を食うような
反語的な人生論エッセイが
昭和は売れたんでしょうね。

個人的には
怠惰の美徳って本が気になりますね。
堂々と怠ける美学を
身につけたいから(笑)。

作家という生き者は、
常に国や社会や世間の傾向を
誰よりも深く察知し、
ヤバい方向に向かってるなら、
それとは正反対な方向を指し示して
冒頭にあげたような本を
生み出していくんですよね。

では、こんなに
ビジネス書や自己啓発本など
まじめな本が溢れる時代は、
またもう一度、
軽薄や怠惰や快楽を推奨する
エッセイが必要になるかもしれません。

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