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【無気力な読書】つげ義春、杉浦日向子がくれるのは現実逃避ファンタジー?

読書によって
無力、無気力を楽しみたい。
そんな時ってないですか?

普通は、読書によって
スカッとしたい。
勇気づけられたい。
心を支えられたい、というのが
相場ですよね。

でも、人間、そういつも
優等生みたいにいたいかと思うと、
それはそれで窮屈ですね。

そんな時に読みたくなるのが、
つげ義春の日常マンガ。と、
杉浦日向子の江戸マンガ。

つげ義春は、
読んでるだけで
心からエネルギーが
吸い取られてしまう。
なのに、読み始めると
どんどん読んでしまう。
惹かれてしまう。
ますます無力になる。
手を出してはいけない危険物、
たとえば、アヘンに手を出したような。

だから、普段はなるべく
つげ義春さんには
近づかないようにしています。

でも、たまには、
くらげになった気分で
無気力に、無力に身を任せて
みましょうか。

最近、角川文庫で
水木先生のお弟子さん、
つまりアシスタントの
「水木プロの日々」を描いた
マンガがえらく面白く、
ぐいぐい読んでいたら、
舞台が水木プロなものだから、
当然、先輩アシスタントの
つげ義春さんが何度も登場する。
つげさんは昔、水木先生の
アシスタントだったんですね。

それにしても
無気力な人生を全うすることは
そう簡単ではないでしょう。
つげさんの作品は
まるでアヘンみたいな
数年に一度、
読みたくなってしまう魔力がある。

読んでると、何週間かは、
健全な、前向きな意思を
失ってしまいます(笑)。
新潮文庫で短編集が2冊、
また、ちくま文庫でつげ全集が
出ていますね。
小学館からも文庫が数冊。

さて、現代社会に対して
無気力になってしまうのが、
杉浦日向子さんの江戸マンガ。

無気力といっても、
つげさんの場合とは違いますが、
江戸という楽園のすばらしさ、
俗っぽく言うと「気楽さ」が
どのマンガからも溢れていて、
正直、この経済社会で
あわただしく生きてるのが
ばかばかしくなるほど、
粋でいなせで儚い人々が
次々と登場しますね。

いや、江戸時代だって、
書き方ひとつで、
いかにも現代と同じ構造の
経済に忙しい社会を生きる
人間を書くこともできるでしょう。

でも、杉浦さんは、
江戸という時代や社会を
理想のファンタジーに
したかったんでしょうね。

江戸や明治を
理想として描くのは
司馬遼太郎でも同じですが、
司馬さんのそれは
あくまで、リアルな形の理想ですね。
杉浦さんは、
もっと踏み込んだ、
夢のような儚い理想を託してる。
江戸というユートピアを築いている。

理想というと、
成功者がいたり、
恋愛が実ったり、
美談があったりするのかと
思いますが、
現世には不器用で
うまく生きられない人ばかりが
多いのが、杉浦マンガの真骨頂。

つげさんの無気力も、
ああ、そうかあ、あれは
ファンタジーだったのか、
ユートピアだったのか?

夏みたいな日が続きますが、
部屋でゴロゴロと、
現実から逃避して、
つげさんや杉浦さんを
のんびり読むのも悪くないですね。

■つげ義春のオススメ本
『無能の人・日の戯れ』新潮文庫
『義男の青春・別離』新潮文庫
『ねじ式』小学館
『紅い花』小学館

■杉浦日向子のオススメ本
『百日紅』
『合葬』
『百物語』 
『一日江戸人』

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