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日光と排卵周期

【日光によって安定する性周期】

スポーツの秋というように、外で日光を浴びるのが心地よい季節になってきました。今年は酷暑で、夏場もあまり外に出なかった方も多いのではないでしょうか。
先日読んでいた科学誌に【日光と体の機能性】に関する興味深い記事が掲載されていたので、少しご紹介いたします。
記事の中身は『メスのマウスは日にあたる時間が長くなると、排卵周期が安定する』といった内容でした。研究成果は、明治大学の中村孝博専任教授によるもので、ヒトを含む一年中繁殖可能な生物において、日の長さが排卵周期を安定したり短縮したりすることが実験で分かったそうです。

簡単にまとめると、
時計遺伝子を欠損させたマウス(性周期が不安定なマウス)の長日条件を2時間増やすことで、4〜5日の安定した排卵周期のマウス(5%)が、38%へ増加(33%増)
・野生型マウス(時計遺伝子が欠損していないマウス)に長日条件を付加したところ、性周期が4日で安定したマウスが47%から68%にまで増加

Newton 11.2023 に掲載

中村専任教授による一連の実験結果は、周年繁殖動物でも日にあたる時間が変化することで性周期が変わることを示す、世界でも初めての結果だそうです。1日ごとの睡眠のリズムや体温などの自律神経系、内分泌ホルモン系などの生物学的リズム(体内時計)のことを概日リズムと呼ばれていますが、今後はヒトにおける月経周期の安定や排卵の増加に向けて、概日リズムや日の当たる時間を調節することに着目した新たな治療が生まれてくるかもしれないですね。特に不妊治療の場合、身体的、精神的負荷が大きくなる場合もありますので、新たな治療法が少しでも女性の負担軽減に繋がることに期待したいです。

当店でも、日頃から婦人科や妊活のご相談は多く、漢方薬の提案や栄養療法、生活習慣の改善などを基本に症状の改善を図ります。今回は日光を浴びることで、月経周期などの改善が期待できるという内容の紹介ではありましたが、もちろんそれだけで全てが解決できるわけではありません。部活動をしっかり取り組んで、太陽を浴びている女子中高生でも、生理不順があることも事実です。個人的には冷え対策や、甘いものを控えることも日光を浴びることと同じくらい、月経周期の安定にとても大事だと思っています。
温活すると子宮、卵巣の血行が改善し機能は上がります。甘いものを控えることで、血糖値を下げるインスリンホルモンの分泌が低下し、インスリンによる男性ホルモン刺激作用を下げる効果があります。
他にも過剰なダイエット、睡眠不足なども生理不順や婦人科トラブルの要因になってしまいますので、まずは規則正しい生活、過食や栄養バランスなどもしっかり正していけると良いですね。

せっかくなので性周期以外にも、日光が人体の大事な生命機能維持に大きく役立っていることをご紹介します。

【日光によって大きく向上する4つの大事な体の機能】

1 免疫維持とビタミンD

ビタミンDについては近年研究が進んでおり、健康に対するより様々な効用があることが明らかになっています。まず、免疫力の向上やアレルギー症状を改善する作用です。コロナ禍においても、血中のビタミンD濃度が濃いと、コロナの感染率が下がるというボストン大学の研究もありました。
ビタミンDには細菌やウイルスを殺す「カテリジン」というタンパク(抗
菌ペプチド)や「β-ディフェンシン」という抗菌ペプチドを皮膚上に作らせ、バリア機能を高めていることもわかっています。ビタミンDは食べ物から摂る以外に紫外線を浴びることで体内に合成されますので、紫外線が減少する冬場はビタミンDが減少し抗菌ペプチドも減少します。風邪やインフルエンザにかかったり、アトピー性皮膚炎が悪化しやすくなるのはそのためでもあるようです。

2 骨を丈夫に保つビタミンD

ビタミンDは免疫向上以外にも、健康な骨を維持していくためになくてはならない栄養素です。
ビタミンDは日光を浴びて生成される以外にも、サケやいわし、かつおなどの魚類、卵黄、干ししいたけやキクラゲなどのきのこ類といった食物から摂ることで体内で作り出すことができます。
食事や日光から得たビタミンDは、肝臓や腎臓で代謝され、活性型ビタミンDへと変化することで、骨を丈夫にする効果を発揮します。

3 睡眠を向上させるホルモンの分泌を整える

体内時計をコントロールし、睡眠の質を向上させる上で大事なのが「メラト
ニン」というホルモンです。朝に日光を浴びることで、視覚領域から生まれ
る刺激信号とされ、約16時間後にメラトニンという睡眠ホルモンを分泌す
るスイッチが入るといわれています。
体内時計は厳密に24時間ぴったりで
動いているわけではありませんので、そのままでは夜型にズレていってしま
うのですが、日光浴にはこのズレをリセットして、規則的な生活を送れるようにする働きがあります。
スマホやパソコンから放たれるブルーライトは、太陽光の紫外線は波長が似ていることから、夜間の使いすぎは体内時計を狂わせる働きがありますので、夜間の使い過ぎは気をつけたいですね。

4 近視改善

「屋外で過ごす時間が長いと近視になりにくい」ということが世界の近視研究で分かっています。屋外で体を動かすことや遠くを見ることが目に良いのは想像がつきますが、最も影響しているのが「太陽光」にあたることだと科学的には指摘されています。さらに、日本の近視研究チームが、太陽光に含まれる「バイオレットライト」に近視を予防する効果が期待できると報告しています。バイオレットライトとは太陽光に含まれる可視光で、紫外線にいちばん近い短い波長を持つ紫色の光です。このバイオレットライトが目に入ると、近視の進行を抑えると考えられている遺伝子「EGR1」が活性化されることが、慶應義塾大学医学部眼科学教室が発見し、研究が進んでいるのです。またオーストラリア国立大学の研究では、日光のような明るい光を浴びることで目の中でドーパミンが発生し、その効果により眼球の伸びを抑制し近視の進行を60%も抑制できたことが分かっています。実際に台湾の小学校で1日2時間以上太陽の光を浴びることを行った実験では、10年前を比較して視力が0.8未満の子供が6%も減少したことが実証されています。読書やタブレットを見る際も、天気のいい日はベランダなどで日光を浴びながら行うことも簡単にできる方法の一つです。

現代社会では、多くの方が日光を浴びる機会を自然と失いがちだと思いますが、今回のマウス実験における性周期の安定に始まり、その他にも体の重要な機能維持にこんなに日光が重要であることを知ってもらうことで、日々の生活を見直すきっかけになってもらうととても嬉しいです。
私の旦那も夜にランニングに出かけるので、朝日を浴びるランニングに変えるように促してみます。


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