高山唯

'97年。和歌山県在住。 山で働いて、下界で物書き。 文章で目立ちたい派。 …

高山唯

'97年。和歌山県在住。 山で働いて、下界で物書き。 文章で目立ちたい派。 不器用さと要領と効率の悪さを真面目さとガッツでどうにかごまかす日々。 中村うさぎが人生のバイブル。

マガジン

  • 林業

    「人は林業には興味ないけど、めずらしいことには興味を持つよ」と言われて仕事のことを書き始めました。

  • 和歌山

    私の暮らしている場所の話。キャンプ、景色、食べもの、好きな人、珈琲、お酒、甘いもの、好きなこと、大切な時間etc.

  • 女性性と性欲

    女の性(さが)について書いています。得したり損したり、利用したりされたり、状況やシチュエーションやそれぞれの価値観でひらひらひらひら変わっていく性別ありきの自分の在り方が、苦しいしつらいけど、なんか楽しい。なんで私はこうなのだろうと、社会や世界を自分なりに解釈しようと試みます。

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浅草で、頭の中のババァが死ぬ

自分の肉体(25歳、女性)の中に、童貞の男子校生と中年の女が住んでいる。 昔からそうだった。 世の女性の例に漏れず、私の中のおばさんという存在は母であった。昔は。 20数年で母との闘争にひと段落つくと、 私の中のおばさんは母ではなく、今まで嫌味を言ってきたおばさんたち(ここではおばさんと表記しますが、何も妙齢の女性に限りません。若いババァもいれば、男のババァもいます。年齢と性別は関係ありません)の集大成になった。 なぞの合体を遂げたのである。 私の中のおばさんは、 若

    • モロゾフと山の娘

       あるところに美しい娘がおりました。 彼女の仕事は山に木を植えることです。 彼女は仕事のために故郷を離れましたが、ちっとも寂しくなんかありません。 彼女の親友、ハリネズミのモロゾフと一緒だからです。  山の仕事は男たちの社会です。 彼女が山に入りたいと職場を探した時、働き手を求める会社はそもそも「女性の働き手」など想定していませんでした。 女が山に入ると「トイレや着替え」などに気を使わなければなりません。元いた男たちが働きづらくなる可能性があります。 肉体労働を女性にどこま

      • 甲子園に帰った日

        兵庫県西宮市にある甲子園とは、私の故郷である。 私は17年間、甲子園に住んでいた(大学時代に甲子園出身というと、え、住んでたの? どういうこと? と変な顔をされて、よくよく聞いたら球場の中に住んでいたと思われたことがあった。その子にとって「甲子園」は「ディズニーランド」と同じ扱いだったのだ)。 甲子園を思い出そうとすると、嫌いだったの一言に尽きる。 それは場所が悪いんじゃなくて、私が悪かった。 どこを舞台にしても、私が「高山唯」である限り、生まれ育った場所を嫌いになれる自

        • エッセイストになりたかった

          いつからか、言葉を世界と合わすようになった。 頭の中の言葉と、口から出す言葉が明らかにギクシャクし始めて、そしたらある日文章が書けなくなった。 脳内を整理する自分の言語は、他人には使っちゃだめ。 大学の時に授業のプレゼンで前に出て喋ってて、ふつうに自分言語で話していると周りの人たちの思考と空気中でスパークルしてるのがみえて私は青ざめた。 空気が冷えて、温度が変わって、変えたのは紛れもなく私で、みんなは大してこっちをみてなくて、でも絶対なにかがおかしくて、怖かった。 人類

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          ラッキーガールシンドローム

          自分の血をみると、運気がどんどん体の外に出ていってる気がする。 スピリチュアルとかそんなんじゃなくて、ガチで。 包丁で指を切ってしまい、サラサラ流れ出る血を見ながら自分の運もいよいよこれで尽きるなと思った。 思えば運の良かった人生な気もする。 運がいいねといわれたら、は? これは運なんかじゃねぇ努力の賜物だよと思うけれど、自分の謙虚な魂が運のおかげですとささやくこともある。 社会人になってからは、特にラッキーだと言って良かった。入った会社はいいところだったし、入れてもらっ

          ラッキーガールシンドローム

          恋は思考を溶かす。 恋は黒眼が揺れる。 だから目がまわる。 生涯この関係を意地でも壊したくないから「好き」を言わない好きもあれば、 たとえブチ壊れたとしても関わってみたいという気持ちを抑えられない「好き」もあって、 優劣なんてなくて、どっちが大事とかもなくて、どっちもなくなったら死んでしまう、 なのにその好きの重さ分はしっかり疲弊する。 溶けた思考回路で考えることばは取り留めもなくて、なんの役にも立たない。 考えては消え、書いては忘れ、心には数えきれないかすり傷、いつか

          本当のこと

          「我慢してるんだね」と言われたが、私ははたして我慢してたのかと考える。 炊事棟の蛇口からでる水の音があまりにも優しくて手に触れただけでなんだか泣きそうになる。 日は暮れかけててそろそろ焚き火しようかと思いながら、自分のキャンプサイトまでとぼとぼ歩いた。 いいたいことをいわないと、我慢してるとされる。我慢は良くないことだ。身体に悪いから。 でも私はいいたいことを思い付いた言葉でいうやつが嫌いだ。 頭に浮かんだ言葉をそのまま口にするのは、絶対にしたくないことの中の一つだ。

          本当のこと

          おとな

          大人になったな、と思う。 高すぎる税金にケチをつけ、学割は使えなくなり、悪夢を見て真夜中に飛び起きたときなだめてくれる母はいなくなり、悩みはもれなく仕事関連、ストレスの解消法は酒と山とキャンプ。 しゃべる時にはなんと答えたら正解か見当がつくようになった。 とにかく無難なことをいう。流れに沿う意見を述べる。みんなが使っている言葉を使う。 正解は一つではなく複数ある。 いつのまにか、私はそれが当てられるようになっていた。 コミュ力が高いねと言われることがあるが、うそだ。 初対

          自画像(短編)

          俺の知ってる女とちゃう、とすぐに思った。 それは今までの女と違うという意味ではなく、頭の中での女というか、女ってこうやろっていう見聞による決めつけというか、俺の理想というか、とにかく実物の誰かとの比較の話ではないということだ。 紗英はパッと見全くデブではなかったが、脱がしてヤるとき骨盤のゴツさというか、太ももあたりからお尻と腰までの立派さに驚いた。 こんかデカい部分が身体を立たすとバランス良く見えるだなんて、女ってなんたる神秘だ。 紗英の身体はびっくりするほど柔らかく、

          自画像(短編)

          夏休み

          空にできたこの飛行機雲を、いちばんに見つけたのは絶対私だと思う。 山の尾根に立って、空を見上げて、 顔から、首から、背中から汗がつたっているのがわかる。 気持ち悪い。 腕で拭うと袖まで汗で濡れていて、 服のびしょびしょが顔にひんやりしてより不愉快な気持ちになって顔をしかめた。 7月31日に海に行った。 海で遊んでいる小学生を見ながら、 帰ったらお母さんの作ったご飯食べてテレビ見て寝て、ラジオ体操行って、クーラーきいた部屋でもっかい寝て、カップヌードルのシーフード味食べて

          スマイルあげない

          「お前、笑うぐらい、やれって」そう吐き捨てる店長は、私の名前すら覚えてくれなかった。 小学生の頃、先生のいったことでクラスメイトたちが一気に「ドッ」と笑うあの現象が苦手だった。 今のはどこがおもしろいポイントだったのか、 笑えない自分はおかしいのか、 私だけが笑ってないことをクラスメイトたちは気付いてるのか、 先生は表情を変えない私をどう思ってるのか、 なんで同じタイミングで笑うことすら、できないのか。 笑いというふるいにかけられ、あぶれた私は、一体どうなるんだろう。

          スマイルあげない

          【林業の話をしよう】私の仕事は

          林業の現場作業員である。 山に行って働き、そして休日はプライベートで山に登る。 「いやどんだけ山好きやねん」とよく言われるが、 私は周りの人が思っているほど自分のことを山狂いだとは思わない。 私にとっては山は「好き」の一言で片付けられる存在ではない。 今回は、 山から一体何を教わったのか、私の話にお付き合いいただこう。 新卒でこの仕事を選んだのはサラリーマンしたくなかったからであって山が好きなわけじゃないのに、、、 と、23歳の私は初めて現場を目撃したその日に思った。

          【林業の話をしよう】私の仕事は

          皮膚

          最初は本当に痒かった、はずだ。 虫刺されか何かだったと思う。 刺された場所も、腫れ方も見えなかった。 自分の首は絶対に目に映らないという当たり前のことに私は初めて気付いた。 だからそれが本当に虫刺されだったのかどうか、ついぞ私にはわからないままだった。 こんなに首を意識したことがなかった。 首がこんなに触ってて魅力的な、夢中になれるものだと思ったことがなかった。 灯台下暗しとは私と私の首との出会いのために作られた言葉なんじゃなかろうか。 首って専門的な知識がなくて

          静かな場所

          「唯ちゃんずるい」という騒音がとっくに止んでいることに気が付いたのは、 龍神山という山を登っている最中だった。 だから「絶対今も思われてるわ」と思うのは、 私の妄想。 思い出してやな気分になってるのは単に記憶に囚われてる証拠。 もう全部現実じゃなくなってる。 過去のことを頭の中で掘り起こす作業を私が永遠にやめてないだけ。 だってリアルは静まり返ってるから。 現場で働くのがしんどいんじゃない。 現場に女一人なのがしんどいんじゃない。 それは外側の人の安直な想像で、実際には

          静かな場所

          女という病

          朝地下足袋を履いていた脚に、夜はピンヒールを履かせる。 あし、痛い、ふくらはぎ、つりそう。 「こんばんはー、茉莉花です」 にこりともせず適当に挨拶をしながら、ホテルの部屋に入る。 部屋でシャワーを浴びて待っていた客が、私と会ったその瞬間から、 いや、つまり会う前から、ふつうに勃起していることがままあって、 引いた。 女王さましていた頃の私は、悟っていた。 この世は、パッと見、女が得しているようにみえることがあるらしいが、絶対にそんなことはないと。 例えば、男社会の私

          女という病

          花よりスマホ

          今年の私は、桜が好きではないのだと思う。 紀伊半島南部に咲くクマノザクラや山桜を眺めていた三月の中旬くらいは、きれいだと思ってそれなりに心が躍った。 でもそれ以降はビクともしなかった。 お花見している人たちの姿ですらも、 桜が咲いているのに正直どうとも思えない自分を惨めにする。 "今しか見れない"感が私を急かし、 "今味わっとかんと、次は来年"感にうんざりする。 まぁ、桜をきれいと思えない、そんな春があっていいだろう。 元気がなくて、景色を楽しめない時も、 元気はあっ

          花よりスマホ