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随想録 「音楽は何を教えてくれたのですか」

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大橋純子さまへ

大橋純子さまへ

最近、車の中で聴く音楽にちょっとした異変が生じている。

洋楽一辺倒であった趣向から、これまで無条件で耳に触れてこなかったジャンルの音楽を、少しずつではあるのだが受け入れるようになってきている。

これは、年齢を重ねることで得られる「角丸」現象のひとつであるのだろう。だって今日なんか、「よこはま・たそがれ」を暫し聴いていたのだから・・・。20歳の頃の自分が、今目の前に現れたら、思いっきり罵られたこ

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バリー・ホワイト「愛のテーマ」

バリー・ホワイト「愛のテーマ」

早朝にRadioをオンにし、FMから流れてきてくれたのが、この曲。
喧騒のない静寂な朝の光が射す空間。瞬時に特別な彩りに染められてしまう。
この曲は私が小学生の頃、7歳年上の従兄が愛聴していたという耳の記憶がしっかり残されている楽曲。これは大人が愉しむ音楽なのだと、子どもの手が届くはずのない、遠い存在の音楽であり、子供心による確かな憧れが植え付けられてしまっていた。
そんな楽曲を、この日一体何年ぶ

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リメンバー、レベッカ

リメンバー、レベッカ

昨日、オーダーしていたこちらのCDが到着。 #レベッカ 「The Best of Dreams」。二十歳前後の頃、民放TV制作の青春ドラマで「#ハーブポテトな俺たち」がゴールデンの時間帯に放映され、まあ決して大ヒットしたと言える番組では無かったとは思いますが、私はすごくハマって、いつも同級生のM君のアパートの部屋に行って、集まっていた友人たちと観ていたものでした。
一流タレントとして長く活躍される、

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意識の芽生え

意識の芽生え

 55年前、ビートルズの4人は羽田空港に降り立った。初来日公演を、日本武道館を会場に行うためだ。
 その時、私は生後3カ月の乳児であった。私は、自分が生まれた年を説明する際に、「The Beatlesが来日した年に生まれました」と、若い時分は、そのように粋がって答えていたものだった。
 私は、中学一年生の時に初めて彼らのレコードに針を落とした時から現在の今の今まで、彼らが残してくれた音楽作品が持つ

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お別れ

お別れ

元「風」のメンバー、大久保一久さん。
突然の別れの報に接し、心からお悔やみ申し上げます。
彼の音楽と初めて出会ったのは、小学生の頃だった。
風は、活動を休止して今年で42年になる。多くの風ファンがきっとそうであったように、私も「風=伊勢正三」という、絶対的な魅力の形式が存在していた。
その陰でレパートリーを淡々と歌い、演奏する久保やん。彼が残してくれた音楽に重ねられた優しさの質に気付くことができた

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「関白宣言」の本当の素晴らしさ

「関白宣言」の本当の素晴らしさ


 たやすいはずだ
 愛すればいい

愛することを「たやすい」と言い切った、さだまさしさん。

私は、日本の音楽界の中で、彼が唯一の天才であることを疑ったことはない。

特別な「My music gift number」

特別な「My music gift number」

 先日、地元エフエム民放局の音楽番組に出演し、中学時代に友人へプレゼントした自主編集のカセットテープの思い出話を披露する機会があった。その時のテープに収録した一曲である、ロバータ・フラックの「やさしく歌って」をリクエスト曲として番組で流していただいた。
 自主編集のカセットテープのギフト。10代の当時、熱中して作っていたものだ。思いっきり背伸びをしながら・・。
 そして、放送終了後に思ったこと。

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沢田研二さん、矢沢永吉さんに学ぶ。「あなたが「意地」を使う場所は、どこですか?」

沢田研二さん、矢沢永吉さんに学ぶ。「あなたが「意地」を使う場所は、どこですか?」

 今から3年前、沢田研二さんが、予定されていたさいたまスーパーアリーナでの公演を、当日の開演 30分前になってドタキャンしてしまったことがあった。
 このニュースに触れた時、即時にとあるエピソード思い浮かんできた。
 それは、矢沢永吉さんがまだソロになって間もない頃の、地方公演に出た時の話だ。
 初めてコンサートで訪れた、長崎県佐世保市。当日、会場周辺は折からの土砂降りの雨に見舞われていた。
 嫌

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Last Christmasが流れてきた頃

Last Christmasが流れてきた頃

 二十歳前後の頃、懇意にするガールフレンドがいた。
 彼女は当時学生で、週に何日かは街の小さな雑貨店でバイトは入っていた。をによく遊びに通っていたのが思い出される。
 ある日のこと。彼女の雑貨店の中にいた時、当時大流行していたWham!の「Last Christmas」が、店内BGMで流れてきた。
 その時、彼女はすかさずこう言った。
『この曲、大好き!』
 そうか、この曲が好きなのか。ではいつか

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愛しのコーちゃん

愛しのコーちゃん

 私の中で、わが国におけるナンバーワン女性シンガーは、山口百恵さん。
 そして、ナンバーワンの女性パフォーマーでありエンターティナーであるのが、コーちゃんこと越路吹雪さんである。
 この希代の大スターは、意外にも気弱な性格の持ち主であったことは、あまり知られていない。
 リサイタルのステージ開始数分前には、マネージャーであった岩谷時子さんから、必ず自身の背中に指で“虎”という一文字を書くおまじない

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ドルフィンという存在

ドルフィンという存在

 横浜・根岸にあるレストラン「ドルフィン」。
 ここは、今から47年前に発売された荒井由実(現:松任谷由実)のセカンドアルバム『ミスリム』に収録された楽曲「海を見ていた午後」で、<静かなレストラン>と歌われた店。47年の歳月を越えて、現在も多くのファンが其々の想いを追いかけながら訪れる場所だ。
 この店は、賑やかな繁華街の喧騒から程よい距離を持った高台に立地する。店内の大きなガラス窓から眺められる

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小坂明子「あなた」に想うこと

小坂明子「あなた」に想うこと

 これまでこの世には、星の数ほどの作品が生み出され、そしてこれからも枯れることなく生まれ続けてゆくだろう、Love song。
 Love songの中で、私の視界に別格の光を放ち続けてくれている作品がある。
 それは、小坂明子さんの「あなた」。
 16才の音大付属高生が、退屈な倫理社会の授業中に、当時のボーイフレンドとの別れの予感に揺れ動く心中と向き合いながらノートに書き綴った歌詞。その時間、ほ

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ディア・マレッタに捧ぐ

ディア・マレッタに捧ぐ

 カーティス・クリーク・バンド。
 このバンドのことをスラスラと解説できる音楽ファンは、今一体どれほどいるだろうか。
 1979年、私が中学生の時に、彼らはアルバム「Spirits」を発表し、デビューした。当時、私はその音楽を、東京の大学生だった従兄のコレクションの中からキャッチして聴き出していた。
 その頃の私は、仲の良い友人に自分の好きな音楽をテープに録音してギフトにするという儀を好んで多用し

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港のヨーコ考 2021

港のヨーコ考 2021

 「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」。
 この曲を覚えているだろうか。
 この曲がヒットチャートの1位を獲得していた当時、私は9歳。小学校の中学年を迎えていた頃であり、曲中の名セリフ「アンタ、あの娘(コ)のなんなのさ!」は、クラス中で大流行のフレーズとなっていた。
 演奏者であるダウン・タウン・ブギウギ・バンドという特殊なネーミングと揃いの「つなぎ」のルックスが、当時、少年チャンピオンに連載されて

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