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#教科書で出会った物語~高校編

俳句をきっかけに知り合った方の投稿から知った、メディアパル様の企画に、再度参加します。
5/8まで開催しているので、ご興味のある方は是非どうぞ!
参加者の応募作品は、メディアパル様のマガジンからも読めます。

山月記

高校生の頃には、既に乱読家の傾向を見せていたワタシ(笑)。
まず、1つ目の題材として取り上げたいのは、中島敦の「山月記」です。

寡作ながら、私が好きな作家の1人なのですが、中でも「山月記」の李徴は、今風に言えば「自意識の高いこじらせ男子」……と言うのは、上記のサイトの受け売りです。
でも、分かるんですよね。

解釈の仕方は色々あるのでしょうけれど、その当時音楽の道も検討していた私にとって、色々考えさせられる作品でした。
芸術作品を生み出そうとする時は、「練習量」「編み出した作品の量」とは、必ずしも比例しません。
その時に、先生から「○○さんは、李徴の行動についてどう思う?」と尋ねられました。

まあ、その当時のワタシは「自意識高い系」も、少し入っていました(苦笑)。
ただ、練習熱心で教えを請うのは厭わないタイプではありました。そのためでしょうか、「一歩間違えば、自分も李徴のように孤立して、誰にも気づいてもらえない存在になるのではないか?」という恐怖心を煽られたのは、よく覚えています。

そして、李徴を虎にしたのは、「臆病な自尊心」と「えらそうな羞恥心」。

ですが、これは現代でも通用する概念ではないでしょうか。
少し前に、noteの創作大賞の発表がありましたが、その結果に対して毒を吐いているような文章も見かけました。
それを見て、ふと思い出したのが「山月記」です。

自分の作品に対してプライドを持つのは、悪いことではありません。
ですが、残酷なようでも、「創作大賞」というコンクールに応募する以上、必然的に評価が下されるのです。
それに対して、「現在は○○が流行っているから評価されなかった」「自分の作品はもっと評価されるべきなのに」と毒を撒き散らすのは、山月記の李徴と大差がないなぁと、感じた次第です。

石川啄木

昨日、俳句幼稚園のメンバーとの会話で出たのが、「石川啄木」の短歌です。
そして、私が久しぶりに啄木の作品を思い出したきっかけは、この方の投稿でした。取り上げてくださったことに、感謝します!

メディアパルさんの企画は、私が参加するのは二回めですが(一度目はクリスマスのアドベントカレンダー)、今回は、「教科書」という世代を越えた共通コンテンツがあり、見覚えのある作品が続々と登場しています。

そして、石川啄木です。

不来方のお城の草に寝ころびて空に吸われし十五の心

石川啄木

函館の「啄木たくぼく小公園」や土方ひじかた・啄木浪漫館も訪れたことがあるのですけれど、そのときは啄木の悲惨な境遇を綴った解説に、そっと目を背けたくなった。
ですが、そんな啄木にも、確かに少年の時代があったのです。

不来方というのは、南部氏の居城であった岩手県盛岡市の雅号。
内陸部にあり、冬の寒さが厳しい土地柄なのですが、それだけに豊かな感性を育みやすい環境とも言えます。
旧制盛岡中学校(現在の岩手県立盛岡第一高等学校)に通っていた啄木少年も、きっと不来方の城跡に足を運び、寝転んで青い空を見上げたのでしょう。
そんな、まだ汚れも恐れも知らない、少年の瑞々しい心が伝わって来るような歌です。

盆土産

これも、教科書で出会った作品の一つです。
実は、教科書は購入したものの、途中で別の高校に編入したため、私がついぞ詳しく学ぶことのなかった作品です。
ですが、出稼ぎに行った父親がお盆に帰省する時のワクワク感や、田舎では物珍しかったであろう「エビフライ」、そして、南部弁の響き。
青森南部地方に住んでいたことがある私にとって、非常に身近な情景として感じられた作品です。

もちろん、三浦氏が描いた時代よりももっと後に住んでいたのですけれど、「えんびフライ」や雑魚ざこを「じゃっこ」とつい訛って口にしてしまう、姉との絶妙なやり取り。
肝心の授業はそっちのけで(当時の先生、申し訳ありません)、こっそり授業中に読み耽っていました。

時代設定としては、昭和の中頃なのでしょうか。
今ではさすがに出稼ぎがあるかわかりませんが、平成の初めでも、私の周りでは「中卒で上京して就職」「父親が出稼ぎ」という言葉を耳にしていた時代でした。

そんな厳しい生活環境を自分自身が目の当たりにしていただけに、主人公の喜作や父親、そして姉や祖母に感情移入せずにはいられなかった作品です。

舞姫

ご存知の方も多いであろう、森鴎外の代表作の一つです。
文語体なのに、現代文の教科書に採用されているという不思議な作品。
そんなわけで、私の高校では作品をいくつかのシーンにわけ、グループごとに解説・発表するという形式を取って学びました。

私が担当したのは、どの場面だったかよく覚えていませんが、当時は高校生には珍しかったワープロを使って、粗筋や解釈をまとめるのが楽しかった覚えがあります。

年代的にも、潔癖さを求める女子高校生だったからでしょうか。
最後に、妊娠し、心を病んでいた主人公のエリスを見捨てる主人公に非常に腹が立ったのが、今でも忘れられません。
当時付き合っていた人(別の学校の人です)とも話したのですが、女子からの第一声は、「オトコって最低!」という罵声だったのだとか(苦笑)。

ですが、年を重ねて振り返ってみると、あれも二人の純愛の形の一つだったのだろうなと思うのです。
もっとも、自分がエリスと同じような立場だったら、やはり豊太郎にブチ切れるでしょうけれど。

そして今回、この企画を通して私が初めて知ったのが、モデルとなった「エリーゼ」さんですが、何とドイツから鴎外を追って、日本へやってきたそうです(舞姫事件)。

百年以上経った現在でも驚くべき行動力ですよね。


振り返ってみると、やはり高校生の教科書に採用されている作品は、どこかリアリティのある作品が多いですね。
ですが、現代の子どもたちにこの感覚が通じるでしょうか。

もっとも、かつて、塾の題材で島崎藤村の「初恋」の解説をした際に。
「センセー、林檎畑でデートするよりもゲーセンに行ったほうが楽しいですよ~❤(ӦvӦ。)」と言われ、内心のけぞったワタシは、解説できる自信がありません(苦笑)。

©k_maru027.2022

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