マガジンのカバー画像

プレイリスト(日常)

6
情景にしっくりくるBGMを探している
運営しているクリエイター

記事一覧

人にやさしく

人にやさしく

母親のための賛歌ってたくさんあるけれど、父親のための賛歌はあまり聴かない。古代より母性というものは神聖視されがちで、古今東西様々なアーティストから愛されている。そしてそれは、慈愛、自己犠牲の精神、忍耐強さ、とセット売りされている。それがまた理想の母親像を補強していくことになるのだけど。では父親の歌は。お父さんはどのように歌われているのだろうか。

男は涙をこらえながら大切な人を守るもんさ
天晴れ!

もっとみる
京都の大学生

京都の大学生

京都で大学生をやりたいと思っていた時期が私にもあった。中学生の頃貪るように愛読していた森見登美彦の悪影響である。若気の至りだったと言わざるを得ない。一生恨む。花の四畳半の―作中ではじめじめとした不名誉で色気のないものと描写されていたけれど、それでも私にとっては香り立つ黴臭ささえ魅力的な―大学生活を夢想していた時期があったものだ。ぼろいアパート住まいでも、魅惑的な路地裏に迷い込んだり、不味い酒を変人

もっとみる
猫になりたい

猫になりたい

数カ月ぶりに帰った実家は、すっかり様変わりしていた。以前は台風が過ぎ去ったかのように汚かった部屋が、まるで見違えるようにきれいになっている。どうやらあの噂は本当らしい。一歩玄関から足を踏み入れると、足元を小さな影が素早く走り抜けるのを感じた。目を凝らすと、見慣れない毛玉が狂ったように台所の廊下を駆け回っていた。なんでもこいつにうちの家族はみんな骨抜きにされてしまったらしい。母親に至っては言語能力の

もっとみる
夜明けの雨はミルク色

夜明けの雨はミルク色

九州南部が梅雨入りしたらしい。しかし、私の住む九州北部はまだらしい。このちっぽけな島のどこにそんな世界の分断線が存在するというのか。この先からこっちは梅雨で、あっちは梅雨じゃないという境界が。そんなはずない、体感的には全く以て梅雨なのにとぼやいている。そもそも、梅雨入り宣言っていったい何のためにあるのだろうか。気象庁に宣言された瞬間に、魔法のようにたちまち日本中が梅雨になるわけではないじゃないか。

もっとみる
葬式にまつわるエトセトラ

葬式にまつわるエトセトラ

日本に住む人間は、一生のうち結婚式と葬式、どちらに多く参列するのだろうか。私は22年生きてきて結婚式に1回、葬式には5回参列したことがある。今のところ葬式の圧勝であるが、それもそうかもしれない。世の中には結婚するひととしないひとがいる。結婚式をあげないひともいる。身内のみのアットホームな挙式で済ませる人もいる。とはいっても友人の殆どはつい先ほど社会人になったばかりであるし、これから先10年で結婚式

もっとみる