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心に外国人を住まわせることで自分を保つ

芦屋に越してきて8か月。噂に聞いていたとおり、関西のおばちゃんは面白い。

通っているクリーニング屋のおばちゃんもそんな関西の教科書通りの人の1人だ。彼と来店すると必ず”ほんと仲良しな夫婦だわね”の言葉から始まり(何度もまだ結婚してませんと言っているのに)、スーパーの買い物袋を目にしては”今日は何買ったん”、”夜ご飯は何なん”などの質問をマシンガンのように打ち続けてくる。次のお客さんが来られるとようやく私達は解放されるけれど、自動ドアの閉まり際に「今日の皿洗いはどっちがするーん!」と最後の質問を滑り込ませてきたりするから最後まで気が抜けない(閉まる1センチ前くらいでとりあえず彼を指さしておいたらめっちゃ笑ってた)。
先日もクリーニングを頼もうと向かっていたら、店を閉めて自転車に乗って帰るおばちゃんとすれ違った。時計を見ると19時1分。19時閉店だったらしく、まさに時間ぴったりの完璧な退勤を彼と2人で大きな紙袋を抱えて見送った。
後日再び訪れると、おばちゃんは私たちとすれ違ったことを知っていたみたいで”あのときはごめんねー”と、本当に思ってる?って聞きたくなるくらいの軽さで言われた。全然大丈夫ですとは言いながらも、いや、気付いてたなら開けてよ、せめて衣類引き取りだけでもしてほしかった、と考えてしまった自分に嫌気がさした。これまで他の場所でご厚意で閉店時間なのに対応してもらったりすることがあったからってそれが普通になってるんじゃないよ、私がもっと早く来ていたら済む話だった、お客様は神様じゃない、おばちゃん自身にも生活があるし家庭だってある、それなのに、わたし今なにを思った?
最悪だ。まさか自分がこんなにも落ちぶれてしまっていたなんて。昔は自分でもおかしいのかなと思うくらいに自分勝手な怒りや他人への嫌味な感情が無かったはずなのに、いつの間にこんな自分になってしまっていたんだろう。悔しくて情けなくて自分が嫌で嫌でここ最近はこのことをずっと考えて、反省していた。

思い返せば、私の嫌いな私はこれまでも度々出てきていたみたいだった。出てくる状況の多くは勿論自分の我が儘に基づいていて、今回みたいに客を前にして時間ぴったりに閉まった店や、やけに臨時休業の多い店(店系多いな)とか、まあ全部言うのも恥ずかしいからその他ということにさせてもらうけれど、その他色々。客観的に判断すると、”日本人らしい不満”だった。多分きっと、始業時間は守るけれど終業時間は守らなくて良し、みたいな、身を粉にして他人へ貢献しろ、みたいな、他人様に迷惑は絶対にかけるな、みたいな考え方が私に無意識のうちについている。始業時間は守れど云々のやつとか特に嫌いな筈なんだけどなあ。どうしてこんなんなっちゃったかなあ。

昨日やっとその考察と反省が終わった。こんな自分から這い出すための1つの解決策が浮かんだのだ。それが”心に外国人を住まわせる”である。いやもう笑っちゃうよね、なんだそれって。でもこれが意外といい。
住まわせてどうするのかというと、この間みたいに、ちょっとなんで分かってたら開けてくれなかったの的な考えが浮かんできそうになったら、すぐさま陽気な欧米人あたりを召喚するのだ。もうこれだけ。あとは召喚された、サングラスをかけ金色交じりの髭を貯えた40代くらいの陽気な欧米人男性がその場を解決してくれる。「マダムにもマダムの生活があるんだからさ、むしろこの時間まで勝手に閉めずに働いていたことが素晴らしい!アンビリバボーー!!」とかなんとか言って(全然面白くない)。とりあえず何人か外国人に住んでもらって、場合によってどなたを召喚するのが適当か考えるのも面白い。やけに自己主張の激しい人に苛々してしまいそうになれば自己肯定感の高いというアメリカ人やイギリス人(アジアだと韓国人とか)を呼び出して主張を認めてあげられるし、迷惑をかけられて嫌味が出そうになれば迷惑はかけたりかけられたりするもんだ(超意訳)なんて教えられて育つらしいインド人に出てきてもらって迷惑を許せる。なんだかちょっと聞く耳持ってみようって気分になるから、私からすると世紀の大発見なのだ。これ、言ってみれば”ポジティブシンキング”ってやつの1つなんだろうけれど、自分がポジティブにならなくちゃいけないわけじゃないから普通のポジティブシンキングよりも簡単だと思う。いくらポジティブに行こうって思っていたってそうはできないときもあるけれど、第三者の外国人から自国の考えに基づいたそれっぽいポジティブアドバイスをしてもらうと結構すんなり聞けたりする。

日本って自己肯定感低いし(これは私がまさにそう)プライベートより仕事を優先する風潮あるし個性は潰されることが多いしで、私にしても将来できるかもしれない子供にしても良くないことが多いだろうから、もっとのびのび生活できそうな北欧とかに移住したいなってずっと思っていた。家族や友達がこの国にいなければ今すぐ行動に移していたんだろうけど、家族も友達も日本にいるし、それに日本だっていいところは沢山あるわけで、でもでも、たった1度の人生を窮屈に生きるのも嫌だなあと、もうどっちなんだと言いたいくらい頭が混乱していたのだけど、しばらくは自分の嫌な日本人らしさを心の外国人に洗浄してもらって生きていこうと思う。そうすれば日本人のいいところと外国人のいいところを持ち合わせたnewわたし!が生まれて(謎の言い回し)日本に住みながらも海外のいいところを取り入れて生活したり子育てしたりできそうな、予感。

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