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【演劇】ヘルマン

 2024年1月、吉祥寺シアターで、川村毅さん構成・演出による舞台『ヘルマン』を観ました。記録を残します。

■はじめに

 演劇『ヘルマン』は、ドイツの小説家であるヘルマン・ヘッセの「人」とその「作品」を、川村毅さんが再構成し、舞台化したものです。
 私も学生時代、『車輪の下』『春の嵐』など、ヘッセの小説は読んだことがあります。今回のチラシを手に取った時点から懐かしく思うとともに、心が震えました。
 ただ、私がヘッセの全作品を読み込んでいる訳ではなく、また、川村さんが、大きな視点から様々な作品を再構成していることもあり、鑑賞した後は、「このようになるのか。」「あれは、どの作品のどの場面だったのかな。」など、不完全燃焼・消化不良のように思う部分もありました。
 帰りの電車の中で(邪道にも)未読の作品のあらすじを読んだりして、じんわり考える部分もあり、一夜明けこの記事を書いています。

■今回の公演概要

(1)日時・場所

  • 日時:2024年1月18日(木)~28日(日)

  • 場所:吉祥寺シアター @東京

  • 上演時間:約80分

  • 別途、1月19日(金)に、川村毅さんのレクチャーなるものがあり、ヘッセに関心のある私は、どうしても聞いてみたくてこちらも参加しました。

(2)キャスト等(一部だけの記載ですみません)

  • 構成・演出:川村毅

  • 企画:吉祥寺シアター支配人:栗原一浩

  • 企画・制作:平井佳子/ティーファクトリー

  • キャスト:麿赤兒、大空ゆうひ、横井翔二郎、鶴家一仁、村井友映、朝田百合子、キクチカンキ、灘波愛、小林彩、和田華子、村松えり、笠木誠

■ヘッセと(今回とりあげられた)作品

(1)ヘッセについて

 ヘルマン・ヘッセ(1877 年~1962 年)は、ドイツ生まれのスイスの作家、詩人です。1946 年ノーベル文学賞を受賞しています。

 少しだけネタバレします。今回の舞台は、ヘッセ(演:麿赤兒、横井翔二郎(若い頃))のノーベル文学賞授賞式の前夜の話です。それまでに描いた作品の登場人物たちが、夢(もしくはヘッセの脳裏)に登場してきます。

(2)舞台でとり上げられた作品

『荒野のおおかみ』(1927 年)、『知と愛』(1930年)、『ペーター・カーメンツィント(郷愁)』(1904年)、『車輪の下』(1906)年、『クヌルプ』(1915年)、『デーミアン』(1919年)、『少年の日の思い出(1911年の『クジャクヤママユ』を改稿)』(1931年)といった作品から言葉を引用し、そこから派生されるイメージを具体化させる。

吉祥寺シアターHPより。()内は補足しました。

 『クジャクヤママユ』はの名前(だそう)です。
 『少年の日の思い出』として中学1年の国語の教科書に載っているそうなのですが、私はこれまで知りませんでした。あまりネタバレになるとまずいので詳しくは記載しませんが、題名どおり、少年の日のほろ苦い思い出といいましょうか、この作品だけでも、面白そうです。
 そして、舞台では、「クジャクヤママユ」の存在が通奏低音として流れていて、大空ゆうひさんが演じられていました。

■感想

 80分の上演時間に、様々な作品・様々な場面が織り込まれています。
 僭越ですが、「自分だったら、この作品のこの場面にスポットを当てたいな」など、思ったりもしました。

 例えば『車輪の下』だけでも、冒頭でお父さんが神学校に入る準備をしてくれる場面や、主人公ハンスが面接の最後でラテン語を思い出す場面、青い作業着を着る場面など。(うろ覚えで書いているので、間違っていたら後で修正します。)

 舞台を見終えて、舞台としての面白さを感じるとともに、自分が原作を読んだときの感想や、(解釈を含めて)どのように受け止めるかも改めて大切にしたいなと思いました。

 そして、ヘッセというと私は、中学生の時にある人から「もっと大人になってからでもいいし、『ガラス玉演戯』『知と愛』『シッダールタ』など、読んでみるといいよ。」と言われたことを思い出します。まだ未読の作品が多いですが、コレから読んでいきたいです。他の方もそうかもしれませんが、「ヘッセ」と「私」のつながりは、まだまだ続きそうです。

■その他(「ポストドラマ」など)

 今回、演出家の川村毅さんのレクチャーに参加出来て良かったです。
 あまり書いてはいけないのかもしれませんが、少しだけ記載します。
 海外では1980年代位から、日本では1990年代位から、「ポストドラマ」という言葉が使われているそうです。舞台の構成要素として、①言葉、②身体性、③映像、④音、などがありますが、①言葉だけを「王」としないつくりと、川村さんは仰っていました。

 実際舞台上では、キャストによる「身体性」が表に出る場面が多くありました。(麿さんの舞踏は無かったように思うのですが)そもそも、麿赤兒さん(1943~)は身体を使われる方です。私も過去・大学生の時に、全身を白塗りにした(詩の朗読に合わせた)舞踏を観たことがあります。
 そして他にも、バックに映像が流れたり、絵が出たりしました。
 ヘルマン・ヘッセという人物に焦点を当てた作品ですが、伝記という形でもなく、脚色でもなく、断片で構成されており、「ポストドラマとはこんな舞台なのか。」と感じることが出来ました。

 レクチャーに話を戻しまして、質疑応答でも、「他の方はこんな視点で観ているのか」と、参考になる場面が多くありました。
 こうした演劇(を含めた作品)の解説・歴史などは、これからも学んで行きたいと思います。

 他にも書いてみたいこともあるのですが、横道にそれたり、話が広がりすぎると読みにくくなるし、他の記事を立てて深堀りした方がまだ良さそうですので、本日はここまでにしようと思います。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
 冒頭の写真は、小説『車輪の下』から「車輪」を検索し、FUKASAWA屋さんの写真を使わせて頂きました。こちらもありがとうございました。

◆追記(1月22日(月)19時)

 吉祥寺シアターに隣接するカフェ「吉祥なおきち」にて、「ヘルマン」のコラボメニューを食べました。その名も、「黒い森に降る雪のお菓子デミアン」です。いつもは、こうしたコラボメニューは食べない方なのですが、今回は関心も高く食べた次第です。写真をアップします。

 いつもは予算の都合で1回しか観ませんが、このあと2回目を観ました。初見では分からないことも多かったですが、2回目はより良く理解することが出来ました。感動です。(同日21時過ぎ)

<黒い森に降る雪のお菓子デミアン> 栞つき
カフェ内のヘルマンのコーナー

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