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ストーカーとの700日戦争

内澤旬子 著

ルポライターである内澤さんは、肉を食べること、屠畜の現場を書き、島に移住し、ヤギを飼い、狩猟免許を取り、クラウドファンディングで自宅のそばにジビエ肉のための屠畜場をつくったルポライターだ。
このへんのことは『世界屠畜紀行』『飼い喰い 三匹の豚とわたし』『漂うままに島に着き』に描かれている。

今回紹介する『ストーカーとの700日戦争』は、移住した島でストーカー被害に遭ってしまった際の顛末だ。

別れ話に同意しなかった彼氏がストーカー化した。
一言で書いてみるとよくある話だが、もちろん当事者はよくあることでは済まない。
うっかりしたら殺される。

なので、ストーカー被害に遭った人の多くは、危ないのでひとまず引っ越す。
ライターというと、ノマド的にどこでも仕事ができるというイメージがあるが、内澤さんの場合は住まい自体も仕事の一部だ。
島に住んでヤギを飼っていることで本を書いているし、屠畜場の敷地も考えて選んでいる。
簡単には引っ越せない。

警察にも行く。
幸い、本当に幸いだったと思う、警察はとても手厚く親身になって対応してくれた。

それでも700日なのだ。
警察が協力してくれていても、命のかかった争いが700日続くのだ。
その末にストーカーが刑務所に入ったとしても、わりとすぐに出てくるのだ。

ストーカー被害の辛さ、恐ろしさ、ストーカー犯の様子を当事者であるルポの名手が描く、それだけでも十分面白いのだが、内澤さんは、「ストーカーは依存症という病気だ」というところまで踏み込む。

ストーカーは、治療が必要な病気なのだ。

あとがきで、自分に起こったことを吐き出さなくては今後文章を書けない、ということを内澤さんは書いているが、この事実を広めるためにも、この本は書かれたのだろう。

すべての病気は、明日は我が身。
患者としても、家族としても、友人、恋人としても。

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