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由緒正しき物忘れ

ほとんどが短命で終わる嫁に比べると、ちゅる家の男性は長生きの家系です。たぶん父も90歳までは生きるだろうというのが、本人を含む家族の一致した意見。
父の父、つまり祖父は92歳まで生きましたし、曾祖父は89歳、その父も90歳まで生きたそうですし。
ご先祖様長生き過ぎます。

ま、そんなに生きるなら多少の物忘れは当然です、仕方のないことですよね。

5年ほど前のある日。父が、 父の父――つまり私の祖父――から
「Yが入院したらしい」
と、至極真面目な表情で言われたそうです。このYは、他でもない父の名前。
目の前にいるのに入院させられる父。
「そうなんだ、いつから入院してるんだろう」
と、驚きながらも返すと
「一週間前かららしい。お見舞いはどうするか」
と相談されたそう。具体的だよじいちゃん。
そこで、Yは自分だと言うと混乱させてしまうと思った父が、
「自分が行ってくるから、行かなくても大丈夫だ」
と伝えると
「じゃあそうしてくれ」
と、ほっとした顔をしていたらしいです。
ちなみにその後は、そんなことを言い出すことはなかったそう。退院したんでしょうか。

父の祖父――私から見ると曾祖父――も似たようなことがあり、ある時、庭で何かを一生懸命探していたことがあったそうです。
「何しているの?」
と聞くと、
「昔亡くなった、Yという子どもの墓があるはずなんだが見当たらないんだ。お前も一緒に探してみてくれ」
とのこと。勿論そのYも、父の名前。
「まだ若かったから腹が立ってね、パコンと頭を叩いたら『何するんだ!』って怒られた」そうです。
勝手に殺された上に怒られた父、どんまい。

ここまで書いて、なんてほのぼのした物忘れでしょうか。
うちの家系は、進行が年にしては遅いみたいで。長生きの上に物忘れがゆっくりなんて恵まれすぎです。
あ、記憶の改ざんについても書こうと思っていたのに文字数が足りません。また思いついたら書こうと思います。

しかしまぁ、方言を標準語に直すの疲れますね。でも直さなきゃ意味不明ですからね。仕方ありません。
普段は使わない方言、今は理解も話せもします。が、いつか私も、忘れてしまうんでしょう。その時はせめて、笑い話に出来るような忘れ方ができるといいんですが。


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