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【柚木麻子】嘆きの美女

大学の友達のMちゃん、ものすごく美人なんです。もう、とんでもなく。間違いなく、私が今まで見たことのある人類の中で一番美人です、彼女。
そのMちゃん、先輩に贔屓されてるとか優遇されて当然と思ってるとか、先生に取り入ってるとかそんな類の噂が私の耳にも入ってました。
そこまで言わなくても……と思うような。人の裏側を見てしまったような。そんな類の噂ばかり。
どんなに真剣にやっていても、美人だというだけで他人の目にはフィルターがかかってしまいます。美人の周りに対する苛立ち、そして嫉妬。それが本人に向かってしまうのは美人特有の哀しみではないでしょうか。

「容姿に恵まれている人間っていうのは生まれつき秀でた存在なんだぞ。笑っているだけで幸せに生きられる特権階級なんだぞ」
「やっぱり美しいってだけで一つの才能なんだね。人を惹き付けるんだね」

タイトルの本は高校生の頃初めて読んだのですが、読み直してやっばり面白いなぁとしみじみ思いました。
初めて読んだときに美人じゃなくて良かった……と満足のため息とともに思ったことを覚えています。いや、大変ですよ美人って。
「だって、あれだけ美しいんだから。美女っていうのは誰かを怒ったり恨んだりしない。心の底まで綺麗だからこそ美女なんだよ。だって、性格の悪い美人なんて、アバズレに決まってるじゃないか」
愚痴を言えば自慢と叩かれ、同性には嫉妬され、ストーカーや痴漢に悩まされ、心まで美しいことを強要されるなんて。

美人が好きでも大嫌いでも。美女に対する見方が変わります、この本。

主人公は、引きこもりニートで性格の悪いブスでデブな耶居子、読んでいくうちにとても素敵に思えてくるのが不思議です。
美女たちを恨み、妬み、毒を吐きに吐きまくる耶居子。彼女が素晴らしく魅力的で、惹きつけられるんですよね。
出てくる美女たちも、なんだかんだで人間らしく怒ったり失恋したり恋したり。

最後の方で、主人公の耶居子が美女に対して考えたことが印象的です。

「今ならわかる。美しいとか美しくないとか関係なく、人生というのは誰しも平等にハードなものなのだと。」

そう、美人でも美人でなくても人生はハード。美しさの不平等は、人生には影響を及ぼさないんですよね。
だから、美人じゃない私も、ちゃんと一生懸命生きないと。


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