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焙煎士が語るクリーンの反対に位置するモノ。

仕入れの際に生豆のポテンシャルを推し量るカッピング(テイスティング)では、素材である生豆の良し悪しを判断するため、ローストによる味づくりは見ていない。

しかし、焙煎士はローストによる味づくりを見なければならないため、仕入れの際に行うテイスティングと、ローストによって変化をする味づくり目線のテイスティングでは、見ている箇所がちがっている。

そんな焙煎士目線の良質さであるクリーンさを話す場合には、その反対に位置する劣る部分を説明をした方がローストのクリーンさという意味が理解できるのではないかと思い、良いロースト(クリーンなロースト)の反対に位置するものを説明したいと思う。

まず、フレーバーである。
素材から登場しているフレーバーは、種子由来の植物系のフレーバーと良質なスペシャルティコーヒーから登場する、品種から登場するフレーバー、生産処理由来の果肉やミューシレージや発酵のフレーバーと、テロワールやマイクロクライメット(微小気候)などから登場するフレーバーなどが挙げられる。
劣るコーヒーのフレーバーは、ローストと結び付き易い性質を持つ種子由来の植物系のフレーバーであると認識をしている。
種子由来の植物系のフレーバーでもクリーンなら問題は無いが、より劣る植物系のフレーバーは、香りのザラつきや濁りやくすみなどと一緒に登場するフレーバーである。
一番は、そういったフレーバーが存在する生豆を仕入れないことであるのだが、万が一仕入れてしまったときは、ローストと結び付き易いので、結びつかないようにローストをすることである。

次にスイートネス(甘さ)である。
甘さはローストによって登場するため、ローストによるザラつきや、液体や香りの粒子を粗くさせないようなローストをすることにあると考えている。
ローストにおける熱量過多の場合にそれは起こり易いため、必要以上に熱量を与え過ぎないことであるが、そうすると甘さが登場しづらくなってしまうため、ローストにおけるクリーンでフルーティな甘さを登場させることはとても難易度が高い取り組みにあたる。
豆さえ良ければ、クリーンでフルーティなコーヒーになる訳ではない。
そこにはローストが関係していことを知っておいた方がいい。

次にマウスフィール(質感)である。
生豆のポテンシャルから登場する質感の良さと、ローストによる質感と2つの質感が存在していて、その2つの良質が合わさり、コーヒーの質感となっている。
実のところローストにおける目線では、スイートネスとマウスフィールは繋がりがあり、劣る生豆の場合だとより顕著にローストと結び付き、マウスフィールが悪くなる。
マウスフィールが悪くなると、粒子が粗くなり、くすみ、そしてザラつく。

良質なコーヒー豆というものは、ローストに耐えられるという耐性が備わっているものなので、ローストのダメージを受けづらい性質があり、ゆえにローストもクリーンになる。
だが希少性があるために高額になってしまうこと、その目線で仕入れを行わなければならないため、なかなかローストに耐えられる生豆を選ぶことが難しいことであることを付け加えておく。

今まで解説をした、フレーバー・スイートネス・マウスフィールがローストと関係性がある点になるが、アシディティ(酸味)もローストによって変化をしている。

素材から登場する良質なアシディティ(酸味)とは、爽やかで明るい酸味特性があることだとスペシャルティコーヒーの定義の中でも語られているが、そのような素材を使ったとしてもローストでも品質が下がってしまったりする。

爽やかな酸味とは、瑞々しく艶やかさが存在しているフレッシュな酸味のことであるが、その反対に位置している酸味特性はDry(ドライさ)である。
Dryを日本語にすると「パサついている(乾燥している)」という印象の酸味である。
ローストで良質な印象を与える場合では、爽やかなフルーツの酸味を与えることであるが、劣る酸味はDryな印象の酸味になることである。

このDryな酸味はローストで変化してしまうものでもあるため、Dryな印象の酸味ではなく、爽やかさを感じさせる酸味をローストで登場させることが良質なローストの取り組みとなっている。

モノづくりにおいて、良質さを感覚で理解していない限り、良質さを登場させることはまず不可能である。
だからこそ、モノづくりに携わる人間は、良質さを感覚で理解するために学ぶ必要性があるのだと考え、ボクも20年以上前から良質さについて取り組んできた結果、ローストにおける良質さは素材選び(生豆選び)と結びついていることが理解できてきた。

そして良質さとは、まずは劣る状態が登場していないことが前提であり、そして良質な状態が登場しているものである。
この2つの状態が確認できるものを良質なモノであると言えるのだと思っている。





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