焙煎士という仕事|伊藤孝浩

スペシャルティコーヒー専門店・香茶屋<kaori-chaya>を営む。SCAJ主催の競…

焙煎士という仕事|伊藤孝浩

スペシャルティコーヒー専門店・香茶屋<kaori-chaya>を営む。SCAJ主催の競技会/JCRC 2018にて日本3位になる。独自の解釈にてコーヒーテイスティングを学び続ける焙煎士兼パティシエ。https://www.kaori-cha-ya-coffee.com/

マガジン

  • コーヒーテイスティング

    コーヒーをテイスティングすることで分析力を高めるための取り組みを紹介しています。

  • ローストに関係するもの。

    コーヒーのローストの記事をまとめています。

  • 感覚を育成するためのトレーニングを伝える。

    ボクがこれまでの人生で取り組んできた、感覚(とくに嗅覚)を育成するためのトレーニングや意識の方向性を明確に向けるためのnoteを集めています。 この中のnoteはすべて有料になっておりますが、個々に取り組みたい内容ごとに選んでもらいたいと考えております。

最近の記事

テイスティングスキルは、正しいインプットから始まっている。

感覚を使ったロースト技法の使い方のnoteでの解説は、実はテイスティングにおける高度な応用としての使い方であることに、視点を切り替えると理解できることだろう。 一般的にテイスティングは表現を目的として考えがちであるのだが、テイスティングの目的意識を切り替えることで、モノづくりとして活かすことが可能となる。 何を述べているのかと言うと、テイスティングでの分析とは、脳内で香りをたどっていけることにより、その特定の香りがどこから登場してきている香りの情報であるのかを分析をするこ

    • 感覚を使った2種類のロースト技法の使い方。

      コーヒー焙煎、すなわちローストにおける「感覚を使ったロースト技法」には2通りあると考えている。 1つは、ローストを視覚・聴覚・嗅覚を使い、香りの変化や音の変化、豆の色の変化を受け取りながら、あるポイントに到達した時に瞬時に焙煎機の設定を変更するやり方である。 このローストの技法は、豆によって微妙にポイントが異なるためにGP(ゴールドポイント)の位置やデベロップメントタイムの開始ポイントの位置など、ローストの設定ポイントを視覚・聴覚・嗅覚を使い感覚によって判断し、瞬時に切り

      • 春色のイメージは。

        「春色の汽車に乗って、海に連れて行ってよ。」 松田聖子さんが歌っていた、松本隆さんの歌詞の冒頭だ。 この季節になると、ひとり運転する車内で口ずさんでしまったりする。 ふと、その歌詞の「春色の汽車」というイメージの色は、きっと人によって連想する色が違うんだろうな。 そんなことを思っていた。 この季節だと、桜色を思い浮かべる人が多いのだろうか。 菜の花が咲くから、黄色と新芽の緑色だろうか。とか。 ボクが思い浮かぶ色は、北の空と山の境界あたりの朝方の空の色である。 水色に

        • お酒のアルコールの品質を感じる体になってしまったことからの考察。

          確か2018年8月、ローストの競技会の決勝大会の時にはお酒を飲んでいた記憶があり、コロナウイルスが蔓延し緊急事態宣言が発令された2020年には飲んでいなかったので、その間のいつ頃からかもう解らないのだが、お酒を飲まなくなってしまっていた。 お酒が嫌いになった訳ではない。 アルコールの嫌な味が解るようになってしまったことで、アルコールの嫌な味が感じないお酒は好きであり、それはとっても美味しいと感じる。 しかし、アルコールの嫌な味が感じられるお酒は、リーズナブルな価格帯のモノ

        テイスティングスキルは、正しいインプットから始まっている。

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        • コーヒーテイスティング
          7本
        • ローストに関係するもの。
          6本
        • 感覚を育成するためのトレーニングを伝える。
          3本

        記事

          「飲みやすい」という表現について問う。

          「飲みやすい」をポジティブな表現として使っている人たちがいかに多いことだろうか。 テレビ番組を見ていても、とても多く使われている。 当店に来店されたお客さんもよく使われている。 だが本当にそれでよいのだろうか? 確かに、昔のボクもその一人だったのだから、その表現を使っている人に対して、それでよいのですか?と言える立場では無いようにも思うのだが、でも問いたいのだ。 「飲みやすい」と「キレイ(美しい)」は、本来は似ても似つかないものだからだ。 要は、「飲みやすい」と「美しい

          「飲みやすい」という表現について問う。

          表現を学ぶということは、美しさのロジックを学ぶことである。

          今週の定休日に、岐阜の中津川にある「東山魁夷心の旅路館」に出向いてきた。 魁夷さんが学生時代に御嶽山に登ために旧木曽郡山口村に訪れた際に、そこに暮らす人々の温かさに触れたことがきっかけとなり、中津川市へリトグラフを寄贈したことがこの「東山魁夷心の旅路館」の設立につながっている。 そしてボクは、魁夷さんの描く心に静かに届けられる「静けさ」という美しさがとても心地よく、それをローストでも表現をしたくて、リトグラフではあるのですが、その表現を成すための「技法」を学ぶために美術館

          表現を学ぶということは、美しさのロジックを学ぶことである。

          焙煎士が語るクリーンの反対に位置するモノ。

          仕入れの際に生豆のポテンシャルを推し量るカッピング(テイスティング)では、素材である生豆の良し悪しを判断するため、ローストによる味づくりは見ていない。 しかし、焙煎士はローストによる味づくりを見なければならないため、仕入れの際に行うテイスティングと、ローストによって変化をする味づくり目線のテイスティングでは、見ている箇所がちがっている。 そんな焙煎士目線の良質さであるクリーンさを話す場合には、その反対に位置する劣る部分を説明をした方がローストのクリーンさという意味が理解で

          焙煎士が語るクリーンの反対に位置するモノ。

          レベルを上げるためには。

          モノゴトには必ず段階が存在している。 それは、感覚が備わるごとに見えていなかったモノやコトが感じられるようになるからであると認識をしている。 なので、感覚が成長するに従い、今まで気にならなかったモノに気づけるようになり、だからこそそこを含めた景色を感じられることになる。 ロジックとして、レベルを上げたい場合の近道は、感覚を成長させることにあることは理解できることだろう。 では、ローストにおける味づくりのレベルを向上させるためには、どのような感覚を向上させなければならないの

          レベルを上げるためには。

          表現と技法の関係性。

          表現とは、届けたい感情をモノ(作品)に乗せることなんだと思っている。 なのでコーヒーの場合では、ローストによって感情を描くことになる。 コーヒーをローストによって美味しくするための技法(技術:スキル)がある。 技法を学びその使い方を習得さえすれば、思い描く表現が出来るようになるのかと言えば、それは間違いである。 表現を成すために技法が在ることは間違いないが、技法を熟知すれば思い描く表現が出来るようになるという訳ではないことに気づいている。 要は、技法を学ぶことと、表現を学

          <実践編> 香りの情報を、いま以上に感じるための体の使い方を知る。

          生まれつき嗅覚が敏感な人たちのコメントの分析や、行動を観察していたら、そちらの方が繊細ないろんな香りを楽しめるからと言う理由で、誰に教えられる訳でもなく、自然と体の使い方(香りをキャッチし易い効率の良い息の抜き方)ができていることに気づいてしまった。 しかし、99%を超える嗅覚が凡人の類いの人たちは、それを自然にできないからこそ、その体の使い方を知らない。 ボクもその凡人の類いの内の一人だったのだが、嗅覚を敏感にさせたいがために、20年以上もいろんなことに取り組んできた結果、

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          <実践編> 香りの情報を、いま以上に感じるための体の使…

          コーヒーにおけるフレーバーの成り立ち。

          コーヒーにおけるフレーバーの成り立ちは、とても簡単である。 それは、”すべて”が出ているだけである。 これだけでは話が終わってしまうし、意味がわからない。 なので解説をすると、素材の生豆から登場しているフレーバーの情報は、生育環境から登場しているもの、生産処理から登場しているもの、流通の過程で登場してしまうものが挙げられると思う。 特に生産処理から登場するフレーバーが大きく作用し、コーヒーチェリーの果肉や特にミューシレージが関係しているフレーバーが大きく作用している。 ウ

          コーヒーにおけるフレーバーの成り立ち。

          フィルターは、得られる対象で選ぶこと。

          フィルターの役割を考えたことがあるだろうか。 フィルターとは、何かを遮ることで得られるという役割を与えられている。 お店にお気に入りのポストカードを飾っているのだが、どうにもそのポストカードの色彩から本来受け取れるはずの美しさが届いていないので、フォトスタンドを取り替えることにした。 プラ製のものからガラス製に変えたのだ。 元々、プラ製のものは100均で購入したもので、間に合せ用として使い始めた背景があったのだが、お店に設置したことでずるずると流されてしまっていた。 ガ

          フィルターは、得られる対象で選ぶこと。

          「倉本聰の森と老人」から、学びのための本質を考える。

          昨年のことなのだが、「倉本聰の森と老人」という番組をNHKで放映していたのを見た。それもたしか再放送だったと思う。 その内容は「学ぶ」ということを語っていた。 そのテレビ番組の中で語られていたことは、本は読まなくなった意味を語っていた。 本を読むことで知識は身につくが、知識は知識でしか無いことに気づいたという。そこで、時間はかかるが自分で感じ経験することの大切さに気づいたと述べていた。 そして、本を購入することはするのだが、すぐには読まずに置いておくらしい。 では本をどう

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          「倉本聰の森と老人」から、学びのための本質を考える。

          ローストの難しさは、季節の移ろいにある。

          冬には日が傾き影が伸び、日常の風景に黄色が混じる。 音が届かなくなり、空気が澄むから鳥の鳴き声や遠くの景色までキレイに見えるようになるのだ。 日常の中の美しさを再認識する反面、焙煎士はローストで頭を悩ませる。 焙煎士の取り組む味づくりにおいての難しさには、季節の移ろいが関係している。 それは、気温の変化はそのまま豆に与える熱量の変化を意味しているからである。 コーヒーの味づくりでは、ローストによって味わいのバランスを整えることが求められるため、季節の移り変わりに合わせて与え

          ローストの難しさは、季節の移ろいにある。

          良質さとは、密度である。

          ボクは昔から世の中の理(ことわり)はすべて繋がっていると考えているので、気づきたい何かがあった場合に、他の道理から気づき、そして学び、それを気づきを得たいモノに置き換えて理解を深めていくという作業をずうっとしてきている。 そして今回、良質さについての説明をしてくれていたテレビ番組の中の出来事があったので紹介をしておく。 年始に芸能人格付けチェックというテレビ番組で、高額な楽器の音色を見分けるポイントは「音の密度を感じればすぐに分かる」とGacktさんが述べていた。そして付

          良質さとは、密度である。

          ローストのロジック。

          ボクはいつの頃からか理屈や理論よりも論理的に考えることが大切なことだと気づいてから、ローストにおける論理を深く、そして緻密に考えるようになった。 ローストにおける成り立ちは、どのような構成で成り立っているのかを深く考えるのである。 これは、日々のトレーニングにより感覚が向上してきたことから、テイスティングにおける分析力が身に付くようになり、より理解が深まってきている。 クリーンさとは、透けているため光を通す。ゆえに明るい。 空に浮かんでいる雲は、元々は水蒸気が小さな水滴に