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拝啓~大人な振る舞いを教えてくれたあなたへ~

拝啓

8月に入り、ようやく時期相応の気温となってまいりました。いかがお過ごしでしょうか。

さて、農業アルバイトを終えて1か月が経とうとしております。


その節は大変お世話になりました。
改めまして、感謝申し上げます。

あなたに出会えた感謝と教わったことの反芻を兼ねてお手紙を書かせていただきます。

あなたのキャリアは料理一筋。
農業アルバイトに来る前は、繫忙期の観光地で料理人をしていたとおっしゃられていましたね。

「今年はコロナでホテルが開けられないから農業に来たんだー」

その発言には全く悲壮感がなくて。

普通は、アラフォーで肉体労働に取り組むこと、
思わぬ出来事で想像すらしていなかったであろう仕事に取り組む不安があるはずなのに、のらりくらりとしていて、

むしろ、寮の誰よりも仕事を楽しみ、日常を楽しんでいるように見えました。

農業歴35年の地域に住むおばあちゃんと楽しそうに会話したり、出荷できない野菜をいただいては豪華な日本食へと変貌させ、昼食の弁当に詰めていたり。
多くはない時間給で毎日のようにビールと刺身を買ってきては寮でシェアしたり。

”不安定な社会情勢に渦中にいて、不本意ながら肉体労働に従事している。それなのにこの人はどうしてこんなに楽しそうなんだ”

最初のころ、僕には分かりませんでした。



しかしあなたと関わっていくうえで、時間を過ごしていく中で思い知らされました。


あなたは「何事も楽しい」という変態なのではなくて、

「どうやって楽しむか」「どうやって周りの人に楽しんでもらうか」を考えて過ごしているのだと。


それはあなたの発言の節々に感じられました。

「俺は寮でも仕事でも人に気を遣って自分が気持ちよく過ごせる環境を作っている。1日をいかに気分よく終えられるかを考えている。」

「○○君は雑草を調理しておいしく食べられる。××君は調味料をあまり使わず、野菜の素材をそのまま楽しんでいる。□□さんには電子レンジでフレンチトーストを作る方法を教えてもらった。勉強になるなあ。」


低待遇だろうが、不本意だろうが、不満を言ってもしょうがない。
与えられた環境で何を学び、どうやって楽しむか。
どうやって自分の機嫌をとるか。

言葉では理解していても実践はなかなかできないものです。

それを当たり前のように行っているあなたを僕は尊敬します。



もう一つ、あなたの話で印象に残っていることがあります。

あれはたしか、寮の方々にこれまでの人生について聞いているときでしたね。

「料理を始めたきっかけは、高校生のころ。ホテルのベルのアルバイトを始めたけど1日で嫌になった。次の日からはレストランのキッチンに回されて料理と出会った。それから料理人として修業するときも転職するときも38歳で正社員としての料理人を辞めたときも、いつでも人のご縁に助けられた。裏切られることもあったけど、人から良い思いをたくさんさせてもらった。だから、自分も返してきたしこれからも人にあげていきたい」


あなたからは今後の不安など微塵も感じられませんでした。

それはきっと、これまで人に助けられたことで、ご縁を大切にしてきたということで知っているからでしょう。


人生なんとかなる、


と。



あなたは人格者とは如何なるものかを教わりました。


人間性、振る舞い方、考え方。
短い間でしたが、あなたは僕の生きたお手本でした。


未来の僕はあなたほどの、愛と魅力に溢れた人物になれるでしょうか。

現在の僕は本当の意味で、あなたの愛と魅力を理解できているのでしょうか。


答えは分かりません。

なのでこれから、
色んな人に出会って、
色んなことを経験して、

ゆっくりと吟味していきたいと思います。


そしていつかまた、料理をご馳走してくださると嬉しいです。

その際はぜひ、作ってください。

「その本当のおいしさが分かるのは30歳を超えてから」と言っていた、


『そこそこ美味しかった」炊き込みご飯を。


敬具


協賛「想いを伝えるギフトカレー『Letter』」


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