宗慧@活人禅寺

茨城県の大子町にある活人禅寺というお寺の住職をしています。元々は薬剤師で、製薬会社に勤…

宗慧@活人禅寺

茨城県の大子町にある活人禅寺というお寺の住職をしています。元々は薬剤師で、製薬会社に勤務、その後、自身で起業したり、発電事業やホテル事業、水産事業やアグリカルチャー事業等の責任者を経て、住職になりました。誰でも入りやすいお寺、誰でも気軽に話せるお坊さんを目指しています。

最近の記事

一掃除ニ信心

東京にいる時、土曜の午前は掃除の時間です。 一応、お坊さんですので、東京でも毎日、掃除はしていますが、土曜日は大掃除まではいかない「中掃除」くらいの日だと決めています。 朝起きて、窓を全開にして、毎朝のルーティン そして朝食、その後、雨でなければ軽く散歩。 それから、掃除の開始です。 まずは風呂場、洗面台、台所の流し、トイレ。 基本的に洗剤は使いません。 スポンジと雑巾と素手。 磨いて、拭いて、磨いて、拭いて•••。 これだけでピカピカになります。 次は、部

    • 無一物中無尽蔵

      先日、老師からこの言葉をいただきました。 無一物中、無尽蔵 何も持たないからこそ、何でもある。 直接的に訳せばそんな感じでしょうか。 「所有する」ということは、自分のものと他人のものを区別するところから生まれます。 これは自分のもの、これは誰かのもの 「これは自分のもの」だと区別することは、同時に「これは自分のものでないもの」を生み出します。 自分のもの、他人のものという区別さえしなければ、「自分のもの」は何もありませんが、「自分のものでないもの」も何もありませ

      • 真心

        東京は桜が満開です。 東京にはこんなに桜の木があったのか! 初めて見るわけでは有りませんが、毎年、そんなふうに感心しているような気がします。 逆にいうと、桜の花が咲いてない時期には、そこに木があるということさえ、全く意識していないということなんだと思います。 自分ごとながら、身勝手なもんだなあと思ってしまいます。 あれを見よ 深山の桜 咲きにけり 真心尽せ 人知らずとも 老師とも親交があった有名なお坊さんの著者で知った歌です。 有名な方の作ではなく、詠み人知ら

        • 気がつけばお寺の住職⑧

          はじめて伊豆のお寺を訪ねた2007年。 たまたま仏教の教えと出会い、大きな希望を感じ、でも•••何ら救われることもなく、仏教への興味を失っていた頃、たまたま再会した老師に誘われての訪問でした。 坐禅(のようなもの)もしましたが、効果も魅力も、特に何かを感じることはなく、「もう二度と来ないだろう」と思いながら、東京への帰路につきました。 特急での移動中、ずっとパソコンを使って仕事をしていたように思います。 それが、当時の自分にとっての普段通りで、この日も、何事もなかった

        一掃除ニ信心

          神の作った芸術

          先日、千葉の犬吠埼に行きました。 風が強く、波も荒かったですが、引き潮のタイミングだったこともあり、波打ち際は、岩肌がむき出しになっていました。 「自然は神の作った芸術」 真っ先にこの言葉を思い出しました。 前日に知った言葉です。 ロダンの言葉だそうです。 人は言葉と二度出会うといいます。 一度目は、単に知識として、本や他人の発言から出会います。 そして二度目は、自分自身の体験を通して、 「ああ、あの言葉はこういう意味だったんだ」 という感動を伴う出会いで

          神の作った芸術

          冬来りなば春遠からじ

          急に暖かくなった気がします。 昼間、厚い上着を着ずに外に出ましたが、風が心地よく感じました。 上着を脱いだだけですが、身も心も軽くなったような気がします。 周りの人たちも同じように薄着で、それだけで、町全体が明るくなったような気もします。 ふと思い浮かんだ言葉が、 冬来りなば、春遠からじ でした。 •••ほんとは冬の初めにマッチする言葉なんだと思いますが、なぜかこの言葉が思い浮かびました。 出典はなんとなく意外ですが、 イギリスの詩人、シェリーだそうです。

          冬来りなば春遠からじ

          老師

          伊豆に来ています。 河津桜の季節が終わり、少し人が減ったような気がします。 茨城のお寺のこと、普段の"お仕事"のこと、いろいろと悩みごとの多い未熟な自分にとって、伊豆で過ごす時間はありがたいものです。 伊豆には兄弟子がいます。 いつも食事の準備をしてくれます。 禅宗のお寺では食事の準備をしてくれる方を典座といいます。 料理というものを一切したことがない自分でしたが、以前、典座を引継ぐという話も出ました•••結局、引継ぎませんでしたが。 典座歴10数年。 さすが

          上野散策

          久しぶりに上野に行きました。 20代の頃、埼玉に住んでいた時期には、上野は毎日通勤で利用していましたので、馴染み深い場所です。 今回は時間もありましたので、上野公園をのんびりと散策しました。 西郷さんの銅像。 彰義隊のお墓。 博士王仁碑。 グラント将軍植樹碑。 正岡子規記念球場。 ボードワン博士の胸像。 その他いろいろ•••ですが、勝手に、この「何でもあり」感が、上野という土地柄に合っているような気もします。 そして、東京国立博物館。 せっかくですので、

          気がつけばお寺の住職⑦

          久しぶりに伊豆に来ました。 この時期、伊豆は桜の季節です。 本山のある南伊豆町も「さくらまつり」が開催され、毎年多くの観光客でにぎわいます。 自分がはじめてここに来たのは2007年です。 ・世の中は思い通りにならない ・なのに思い通りにしたいと思うから苦しい ・思い通りにしたいと思うのは自分が何よりも大切だという自己への執着があるから ・でも執着しているはずの自己なんていうもの自体が存在しないと考えた方が合理的 ・このことを知れば苦しみを根本から解消してもっと

          気がつけばお寺の住職⑦

          雲のうえ

          今週はたくさん飛行機に乗りました。 合計で5回搭乗しました。 数年前であれば、1週間で5回飛行機に乗るというのも珍しいことではありませんでした。 最近はそこまで飛行機に乗らなくなっていましたので、ちょっと新鮮でした。。 普段、飛行機に乗るときは、できるかぎり通路側の席をとるようにしています。 身体が大きいので、真ん中や窓側は気分的に窮屈さを感じます。 加えて、降りる際も早く降りられます。 でも、今週は1回だけ、窓側に座りました。 窓側に座るのは久しぶりでしたの

          あざなえる縄の如し

          実家に帰ってきました。 実家には、年に1、2回帰る程度でしたが、昨年の8月、それから年末年始、そして今回と最近は比較的頻繁?に帰ってきています。 実家に帰ったからといって何をするわけでもなく、ゴロゴロと過ごして終わるだけですが、それでもやはり心落ち着くのが実家なのかもしれません。 そして、数日もいると、またソワソワしたくなって日常に戻っていく。 そんな一時避難的な場所が自分にとっての実家のような気がします。 今回、実家に帰って、一番の出来事。 8月に失くしたと思っ

          あざなえる縄の如し

          ビギナーズ・マインド

          久しぶりに鹿児島に来ました。 明日からの"仕事"のために1日早く鹿児島入りしたんですが、せっかくですので早めに移動し、のんびりと過ごしました。 ランチ。 何を食べようかと迷いましたが、これまで、知っていましたが入ったことがないお好み焼き屋さんに行くことにしました。 関西出身だからなのか、単なる個人的な嗜好なのか、自分はお好み焼きが大好きです。 ですので、頻回に訪れた場所では必ずお好み焼き屋さんに行ってます。 ただ、この店だけは、何年も前から興味はあったんですが、な

          ビギナーズ・マインド

          気がつけばお寺の住職⑥

          20年くらい前に聴いたお坊さんのお話。 ・世の中は思い通りにならない ・なのに思い通りにしたいと思うから苦しい ・思い通りにしたいのは自己への執着(自分が何より大切だと思う気持ち)があるから ・でも、そもそも執着しているはずの自己なんていうもの自体がない ・いろいろ考えてみると、確かに、普通に自分自身の実感としてあるような独立した自己なんていうものは存在しない ・絶えず動き回っている素粒子が遍満した空間のここからここまでが自分なんだと勝手に主張し、それが事実である

          気がつけばお寺の住職⑥

          不可思議

          この週末は茨城県大子町のお寺に帰りました。 火事の後、地元の業者さんにお願いをして、燃え残った建物の解体までは昨年末に済ませていました。 今回、解体後の廃材処理に加えて、燃えたものの処理まで終わり、その状況確認のために行ってきました。 お寺の境内に入り、一見して、庫裡のあった場所がスッキリと何も無くなっていました。 当たり前といえば、当たり前の光景でしたが、やはり、つい先日までここで暮らした日々が思い出されて、何ともいえず感慨深いものがありました。 これも執着といえ

          10年ひと昔

          年明けから東京で生活しています。 これまで、出張や遊びで東京に来ることはあっても、"住む" ということなると、ちょうど10年ぶりになります。 10年前は••• 東京駅まで歩ける距離という条件で探して、八丁堀に住みました。 今回は••• 特にこれといった条件は無かったんですが(そんなぜいたくを言える状況でもありませんし)、結局、八丁堀から近い茅場町に住むことになりました。 いろいろな物件を紹介されましたが、ついつい馴染みのある場所の方が、よく見えてしまうもんですね。

          帰省

          この正月、和歌山に帰省しました。 高校卒業と同時に実家を離れ、それ以来、年に1、2回帰るくらいですし、特別に何かがあるわけではありませんが、それでもやはり落ち着く場所のように感じます。 実家に帰るとまず仏壇に手を合わせます。 これはお坊さんになったからではなくて、実は子供のころからの習慣のようなものです。 自分はおじいちゃん子・おばあちゃん子でしたが、子供のころ、外から帰ってくると、まず仏壇に手を合わせるように、おばあちゃんに躾けられました。 誰かが訪ねてきて、お菓