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BMW 3シリーズのコンサバ性-デザイン「か」

デザイン「か」今日は「プロダクトデザイン」。河原のかですが デザインか?という疑問も混じるかもと思い、デザイン「あ」からの影響のネーミングで、書いてみようと思いました。

さて、たまたま BMWの3シリーズのモデル違いが並んで駐車していた。BMWのカーデザインのコンサバ性が見える事例です。同じ色ですし、見比べると、いろんな共通点と差違が見えてきます。正面を「顔」といいますが(英語でもフロントフェイス)全体的な「表情」の違いも含めて、興味深いですね。

右が古く、左が新しい。共通性は、真ん中の(キドニー)グリルはもちろんのこと、BMWエンブレムの位置、ヘッドライトは透明樹脂の中に4灯。サイドに行くに従って少しずつ切れ上がっていくライン(これは左のほうが顕著ですが、右にも片鱗があります)フォグランプ2灯も下のほうに丸形でさりげなく入れているのも共通点です。フロントガラスの傾斜角と大きさがほぼ同じ感じからフレーム自体に大きな変化はないことが見て取れます。それが同じくるまに見える大きな要素かもしれません。ステーションワゴンに特有のルーフレールも共通しています。

大きな違いは、まずはバンパー。左は一文字にいかず、センターで一度途切れるような形状。またボンネットのラインが違い、右はグリルのサイドに線があるのでボンネットとグリルが一体に空きますが、左はグリルと切り離されています。このことによって、ボンネットの開くスリットを複雑な形状にしてキャラクターラインにしていますが、これは、ちょっと、クドいかもね。右のほうが完成度は高いと感じます。あとはヘッドライト自体の形状。サイドまで切り込んでいくような立体的な形状にかわっています。このあたりは時代の進化で可能になったこともあるし、流行もありますね。左右を貫くエアインテークも最下部という位置は共通しつつ、右では1文字、左ではバンパーにあわせて3分割し、新型の特徴としてうちだそうとしています。

m両方とも3シリーズ325iのツーリング(ステーションワゴン)右側が古く1998年-2007年の第4世代E46(Wiki)。左側が2005年から2012年の第5世代 E90 (Wiki)です。相互に初期から言うと7年後のブラッシュアップで、かつBMW 3シリーズは、世界的ベストセラーでありプレミアムなCセグメント又はDセグメント(Wiki)に位置します。累計販売台数は1400万台(2015年9月 出典Response 下記写真共に)。主力だからこそ、コンサバになるのかもしれない。

BMWは日本のキャッチコピーは「駆け抜ける喜び」(ドイツ語はFreude am Fahren 直訳:運転する喜び)です。ドイツ語の直訳だと、いまのMAZDAのBe a driver.に通じそうな気もしますが、ドイツは街中には石畳もあれば、森などの自然も豊か、そしてアウトバーンの国でもあるので、ありとあらゆる環境で楽しい車づくり、という意味では、駆け抜ける喜びという意訳は良いように思います。

実際、この3シリーズを運転していましたが、特にこの325はパワフルで、この車体ながら、マツダのロードスターほどの吹け上がり感があります。320も運転していますが、エンジン500ccの出力差はこんなにもあるのか、思うくらい違ったので、同じ車種でのグレード違いって地味ですが、非常に重要だなと感じた次第です。正直なめてました。反省。

3シリーズは、非常にできがよくて、そつがなく、その上、車としての剛性などの基本性能が高く、使い勝手もよく、トランクも荷物がたくさん積めて、と、世界中の車メーカーのお手本のような車という位置づけでした。だからこそ、特別のおもしろみもないですが、それでも旧車であっても非常にレベルの高い車であることを感じます。

ま、それだけ良くできた車だからこそ、イメージチェンジは慎重になるのだろうと思います。駆け抜ける喜びだったり、実際、かなりスポーツチューン気味になっている尖った車づくりをしていたとしても、デザインチェンジ自体は非常にコンサバティブにやっているなと感じています。

BMWには、固定のファンがいるし、実際、なぜか飽きられることも少ないのではないかなと思います。飽きた、という理由意外で、消極的にも積極的にも違うブランドに乗り換える理由が見つからないから、次のモデルに乗り換えるのかもしれません。

車好きや、デザイン分野の人には、今さら言う必要もありませんが、車正面にあるふたつの吸気口(グリル)は、キドニーグリルと呼ばれていて、腎臓という意味です。最初登場したときは、揶揄されたようですが、今やアイコンです。電気自動車になった BMW i8 i3 などのiシリーズにもこのグリルがついてます(機能的には外すこともできたはず)

だからこそ、批判の多い、LEXUSのスピンドルグリル(出典 autoblog)も、よくあそこまで個性を出せたと思うし、それを「批判が多いからやめようかなぁ」とか時々メディアに漏らしつつも「続ける」選択をし続けていることはすばらしいことだと思います。レクサスがスピンドルじゃなくなったら買う、なんて人は多くないでしょう(それでもトヨタが好きなら、クラウンとかハリアーとかセンチュリー!とか、いろいろありますから)

最後に復習にもう一度この写真を。
ドイツらしい質実剛健さを感じるこのBMWの3シリーズ。ある種のデファクトスタンダードのようになっています。でも、ここに伝統的なものをいかに進化させていくか、というヒントも隠されているように思います。いま見ると、右のほうがプロダクトデザインとしての洗練性は高いように思います。無駄が無いし、すっきりしている。左の新しいほうは「新しくみせないと」という力の入りが見えるようにも思います。でも見た当時は新しくなった感はありました。というのは、右がけっこうなロングセラーで数も多くでていたし、やっぱり飽きはあったんでしょうね。でも、やっぱり引いて見るとモデルチェンジとしては、コンサバな部類でしょう。コンサバでも飽きられないということが、ロングセラーとして続いていく秘訣のようにも感じます。

ちなみに、このあとのモデルチェンジ2012年からの現行型第6世代 F30(Wiki)は、この左と右の文脈を踏まえて次に進めた感じがします。このへんもうまいですね。

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