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【とある老人の人生】冬のある日

|| まえがき

※ いつもの注意書き
・この「【とある老人の人生】永遠のノスタルジア」
小説シリーズのメインテーマは
「老いの良さ」「老いの楽しみ方」です。
・そこまで長くないので「あとがき」まで読んでいただけると
内容がよくわかります。

|| 本編

 しんしんと雪が降り積もる。
子供の頃、大きくなったら着ると言って無理に両親に買ってもらった
今では丁度良いサイズの思い出の水色の雪の結晶模様のフリースを着て、
自室のこたつに座って雪見障子からその外の様子をゆったりと眺めている。

子供の頃は雪が降ると外に出て遊んだな。
父も元気だったし、母も優しかった。
自分もまた元気だったし、
未来のことなどあまり深く考えずに未来に希望を持っていた。

そして大人になって雪が降る際は
翌日の仕事の交通の便のことしか考えなくなり、
今やそういった時はすべて通り過ぎた。

年老いた今では雪が降ると、
子供の頃のように大きく喜ぶことも無く、
大人になった時のように小さく舌打ちして嫌がることも無く、
ただ密かにひっそりと、
今年も雪が見れたな。
そう思い、静まりかえった白銀の今を静かに謳歌するのだった。

|| あとがき

※ 今回の"本編"の意図 
 昔の延長線上で今に人生を引き継ぎつつも
年を経て失ったものを憂うこともなく、
かつて描いた希望に満ちあふれた未来が
過ぎ去ってしまって
自分の人生に何も残っていないことにも動じることなく、
何事にもいちいち一喜一憂せず、
ただただ目の前のことをありのままに興じる。
それが老いた人生の良さ・楽しみ方・味わい方ではないかと思い、
今回の”本編”の「冬のある日」を執筆しました。

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