結納

結納の日のお着付けを担当させて頂いた時のおはなし。


「本日はおめでとうございます。お天気も良くてよかったですね。」と、お声掛けさせて頂きながらお嬢様のお着付けをしておりました。

「結納なんてやらなくてもいいかなぁと思ったんですけどね。」と照れながら話すお嬢様に対して、「やっぱり区切りですし、けじめとしてやっておきたかったんです。私のわがままなんです。」と、お着替えの様子をご覧になりながら、少し寂しそうにお話しになったお母様。

「私たちの時代は当たり前のように結納をしていましたが、今は顔合わせだけの方が多いようですね。一人娘で、ずっと一緒に暮らしてきたのに、二週間後にはいきなり引っ越してしまうんです....嬉しいんですよ、嬉しいんですけど....やっぱり寂しくて。なにか区切りがないと気持ちの切り替えができそうになくて。」


大切な大切な一人娘を送り出す親御さんのお気持ちも込めて、「ふくら雀」を結ばせて頂きました。ふくら雀とは、自分の羽の中に空気を取り込みことで冬の寒さから身を守る、まんまるに膨らんだ雀の姿をいいます。その佇まいから、豊かさを表す縁起物とされ、”福良雀””福来雀”と書くことも。そんな”ふくら雀”を模した「ふくら雀結び」は、一族繁栄、家庭円満の意を込めてお見合いや結納などで結ばれることの多い伝統的でとても品の良い帯結びになります。(皇室の方々も結納の際にはふくら雀を結ばれております。)

改めまして、お嬢様の輝かしい門出を祝し、さらなるご多幸とご家族のご隆盛をお祈り申し上げます。


幸せの中の、ちょっぴりせつないお着付けエピソードでした。

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着付けサロンてくてくkimono道(みち)は、2021秋から、七五三セレモニーサービス(和み:nagomi)を新しくスタートさせるため、ただいま準備中。

https://www.instagram.com/tekuteku753/?hl=ja

こちらのnoteでは、nagomiの進捗状況や、着付け教室に通ってくださっている生徒さんや出張着付けのご依頼を頂いたお客様、着物好きなお友達などから見聞きした、着物にまつわる素敵なエピソードをご紹介しています。

親から子へ、子から孫へ。受け継がれていく着物とともに、私たちのもとに届いた暖かい家族のエピソード。着物に興味がない方のもとにも是非届いて欲しい。そんな思いで綴っています。


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