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海外で建築を学ぶ方法

海外で建築を学んでみたいという人は一定数いると思います。毎年学年から数人は海外に出ている印象です。最初は自分も何となく行きたいな~という状態でしたが、具体的にどうやって行くのかあまり分からない状態だったので、僕が聞いた情報などをもとに書きます。
他の国で建築を学ぶ方法は大きく分けて二つだと思います。
①事務所でインターンをする
②大学で学ぶ
これは日本でも同様で、実務を通して学ぶか、学校の課題を通して学ぶかの違いでしょう。
②大学で学びたい場合、さらに2つパターンがあります。
a)交換留学する
b)受験して正規入学する
ということで、①海外インターン、②a)交換留学、②b)正規入学、の3つについてメリットデメリット等書いてみて、自分の考えたことも少し書きます。①は主に聞いたこと、②は出願してみた感想です。

1. インターンの場合

ある程度の規模の事務所だとホームページにインターン募集のあれこれが載っています。履歴書とポートフォリオを送り、スカイプ面接とかがあります。先輩に聞いた話だと、大きい事務所だと応募が多いので、知り合いの紹介などコネがあった方がいいところもあるようです。優秀な先輩も結構落ちたりしたらしく、ある程度数を受けることも必要とか。友達も結構受けてる人いました。小さい事務所だとちゃんと募集とかないとこもあるので、突撃するパターンもあります。日本の就活に近いところがある気がします。期間は半年~1年程度が多そうです。一年で2か所インターン行った方もいました。

資金についてはトビタテの奨学金をもらっている人が多い印象ですが、有給インターンで生きていったり、知り合いをたどって家に住まわせてもらったり、割といろんなパターンの人を見ました。個人的な感想ですが、物価高いとこでなければ100万円くらい集めれば無理やり行けるような印象があります。

インターンは伝聞でしかないので、メリットなどあまり書けませんが、以下のような感じだと思います。

メリット
・国、事務所など選択肢が自由
・給料をもらえることがある
・実務を学べる
・期間も自由
デメリット
・自分で事務所を探し計画からアプライまでする必要がある
・ビザを取るのが大変なことがある
・留学に比べ周りに同世代が少ない

2. 交換留学の場合

所属する大学が海外の大学と協定を結んでいることが多いので、その中から行きたい大学を選んで学内選抜を勝ち抜き、1年間そこの大学で学びます。時期は春秋のキリがいい時期。募集は開始半年~1年前。

メリット、デメリットは以下の通り。

メリット
・学費が自分の所属大学の学費で済む
・単位認定がある
・頑張れば休学なしでそのまま卒業できる
・保険とかの手続きが楽
・学内奨学金ある学校もある
・提出書類が受験より少ない
・大学の要綱に従えば高確率で行ける
デメリット
・(今年に限って?)コロナで渡航できないことがある
・選択肢が協定校のみ
・インターンやバイトが限られる
・期間が半年or1年
・何となく留学になることがある

個人的に大きなメリットだと思うのは費用面です。例えば東大など国立だと、アメリカでもヨーロッパでも、1年50万くらい、大学の学費を払えばそれでOKです。後にも述べるように、海外大学の学費は高いので、交換留学は激安です。
あと提出書類が受験より少ないことがあります。東大の場合、UCは受験と同じ書類が必要でしたが、ヨーロッパは少なかったりしました。しかしTOEFL80点とかは必要だったり別に楽ではないです。

デメリットに関して、今後は分かりませんが、近年はコロナの影響が大きくありました。今年の東大の交換留学は東大側がNGを出し(協定校側のスタンスは分かりません)、現地に行けなかった人がいます。友人はオンライン留学という辛い結果になってしまいました。僕はUCLAの学内交換留学を考えていましたが、そちらはそもそも募集がなくなりました。
あと、僕は前年度の交換留学を申請しましたが、工学部での募集だったので、機械系や情報系にボコボコに負けました。3人募集/9人申請でした。年度や学校などにより難易度がぶれます。
今年は交換留学が再開した大学もあるようなので、このデメリットは徐々になくなりつつあります。

ついでに、僕が進路相談したある助教の方は、ある程度苦労して留学に行った方がしっかり学ぶ姿勢で留学に臨めると言っていました。楽に行くと度胸はつくけどちゃんと英語は喋れるようにならないとか。結構競争が少ない学校やプログラムもあるのですが、こちらで言われているように、なんとなく留学になってしまう可能性もあります。
とはいうものの、明確に目的が無くても、とりあえず外の世界を見たいという動機でもありだと思います。初めは僕もそうでした(だから学内選抜は落とされたのだと思いますが)。

3. 正規入学の場合

行きたい国や大学、コースを調べて、提出書類をそろえて出願します。建築家は大学で教鞭を取っていることが多いので、気になる建築家が教えてる大学に行くとかで探します。
コロナに関しては、正規入学であれば割と現地に行けるという印象です。僕は今年の秋なので少しは状況がマシになっている状態ですが、Ph.Dで正規入学した友人は去年の9月とかその辺に渡米しました。

メリット、デメリットは以下の通りです。

メリット
・選択肢が自由
・1年以上の選択肢もある
・学位がもらえる
・現地就職、インターンのチャンスがある
・給付型奨学金がある
(・交換留学より深くコミットできる)
デメリット
・学費が高額
・提出書類、手続きが多い
・英語試験のハードルが交換留学より高いことがある

インターンなどについて、特にアメリカだと、OPT(optional practical training)という制度で卒業後に一定期間、学生ビザで働くことができるので、インターンして帰ることもできます。STEM(science, technology, engineering, mathematics) extentionという制度もあり、それも含めると建築の場合、卒業後に学生ビザのまま3年まで働けます。
また、ETH Zurichに交換留学した後輩は、交換留学より正規入学の学生の方が授業や研究室などへのコミットがしやすい感じがしたと言っていました。大学やその人次第でもあると思いますが、何となく自分もそんな気がしています。これは卒業後にももう一度触れたい話です。
ちなみに脱線ですが、ETHは正規入学だとドイツ語必須なので、教授や正規の学生がたまにドイツ語で話しており、その内容が分からないということがあります。ドイツ語が分かる先輩が交換留学に行った際に、教授や正規の学生がドイツ語で愚痴を言っているのを聞いたそうです。やはり単純に、言語の壁もありますね。

大きなデメリットはまずお金がかかります。授業料が非常に高いです。奨学金が無いと死にます。自分は合格した大学から一部奨学金をもらえましたが、それでも全然足りません。生活費と授業料を両方手厚くサポートしてくれる奨学金の合格が無ければかなり苦しいです。
また、提出書類が多く手続きも面倒で、インターンや交換留学より準備にお金と時間がかかると思います。英語試験の受験料や出願料、ポートフォリオやエッセイなど。

4. 自分の場合

自分がアメリカの正規入学を選んだのはいくつか理由があり、

・アメリカの大学に複数出願したかった(特に西海岸)
・学内のUCLAの交換留学に落とされた
・UCLAの行きたいコースは交換留学だと行けなかった
・次の年はコロナでUCLAの交換留学が無くなった
・コロナでも行ける可能性が割とあった
・インターンもしたかった
・英語をしっかりやりたかった
・海外大学院の学位がかっこよさそうだった
・実力を試したかった

等々。一番の理由は選択肢の広さです。東大の場合、アメリカの大学の協定校で建築を学べるところは少なく、工学部の交換留学ではカリフォルニア大学のみでした。その上UCLAのM.S.AUDに行きたかったのに、スケジュール的にM.Archになりそうだったので、2回目の挑戦は正規入学のつもりで準備をしていました。
また、コロナも大きな理由でした。コロナ禍にも関わらず博士で渡米している友人を見て、正規入学の方が確実に渡航できると思いました。

あとは英語を使えるレベルにしたかったため。と言うのも、交換留学より英語試験の要求スコアが高くその勉強をする必要があること、英語圏であることを考えると、ヨーロッパに交換留学するより英語が使えるようになると考えました。英語に限らず、出願のプロセスで色々な面で成長を感じられたので、それもメリットと言えるかもしれません。

一方で、日本の奨学金には合格を頂けず、大学の奨学金のみで資金繰りが苦しいのはデメリットを被っています。これをバネにしっかり勉学に励みたいところです……。


以上、海外で建築を学ぶ様々な方法でした。何となく行きたいと思っている人はまず、色々な人に話を聞いて自分に合ったやり方で考えるのがいいと思います。そしてとにかく準備に時間がかかるので、早めに先輩に相談に行くといいと思います。

この記事が参考になれば幸いです。

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