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SCI-Arcについて

SCI-Arcに入学し、ロサンゼルスに来てから半年が経ちました。留学は1年半の予定だが、自分が入学したSCI-ArcのEDGE(Postgraduate、修士と博士の間みたいな課程?)というプログラムは1年なので、もう半分が終了してしまいました。3学期制で、今は2学期の中間が終わったくらい。1学期が終わってからnoteを書こう書こうと思っていたが遅くなってしまいました。今を逃したらもう卒業前後まで書かなそうだなと思い、やっと書き始めることができた……。留学を半年終えて、自分が感じるSCI-Arcの雰囲気や思うところなどを何となく書いていこうと思います。

01. What's SCI-Arc?

自分が現在留学しているSCI-Arc(Southern California Institute of Architectureの略、南カリフォルニア建築大学、サイアーク)という学校について雑に紹介します。SCI-Arcには以下の4つのプログラムがあります。

Bachelor(学部)
5年、10セメスター
M.Arch1(修士)
3年、7セメスター
M.Arch2(これも修士)
2年、5セメスター
Postgraduate(SCI-ArcではEDGEという名前、修士)
1年、3セメスター

1年は秋学期(9~12月)、春学期(1月~4月)、夏学期(5月~9月)の3学期あり、それぞれ大体3か月半くらい。通常年は秋と春に授業があり夏学期が休みで、M.Arch1,2、Postgraduateの人は卒業する年には夏学期があるので7セメスターとか5セメスターになります。自分はPostgraduateなので秋学期、春学期、夏学期で卒業で、1年だけなので3週間の休みを2回挟んで課程を修了します。

SCI-Arcは特に先鋭的な建築とか、そもそも建築と呼べるのか?みたいなものとか尖ったことをやりつつ、それと並行して新しい建築の理論を考えようという学校だと思います。その中でもM.Arch2とPostgraduateは特に尖ったことをしている人が多い印象です。EDGEの中にはArchitectural Technologies, Fiction & Entertainment, Design of Cities, Design Theory and Pedagogy, Synthetic Landscapesという5つのプログラムがあり、Fiction & Entertainmentとかだともはや建築外(映画や文学など)出身の人もいてバラエティが豊かです。建築のギリギリを攻める、領域を拡張していくという意味でEDGEという名前がついている(のだと思う)。自分はその中のMS Synthetic Landscapesというプログラムに在籍しています。

未だにSynthetic Landscapesって何?と答えに窮してしまいますが、今のところの自分の理解だと、人も自然も、建築もランドスケープも全てフラットに見直して、新しい価値観や建築観、ランドスケープとして捉えなおしたもの、という感じだと思っています。ランドスケープと言うと、広場や公園の植栽計画とかやるイメージがまずあると思いますが(僕はそう思っていました)、スケールや人工or自然といった物差しはあまりありません。極端に言うと、モノや世界の異なる見方を探すということをやっており、そもそもSynthetic Landscapesって何だろう?という議論が出てくるので、まだ分からないというのが正直なところだったりもします。OOOとかテクノロジーとか、色々なトピックが出てくるのですが、これについてはまた別で書けたらいいと思います。

02. 授業について

1学期と半分しかいないのに、という気持ちはありますが、授業の形式や印象などを書いていきます。

SCI-Arcの授業は月水金でスタジオ(設計)の授業が2時~6時とかで行われて、他の空いてる時間に必修とか選択とかの授業とかが3時間×3,4つあります。スタジオは最終学年くらいになるとVertical Studio(学部修士が混ざる)になります。Postgraduateは3学期とも同じスタジオを取り、自分はDavid Ruyという先生のスタジオを3回やります。

David Ruyのスタジオはあるテーマが与えられて、それについて形式は自由で何か提案するという感じです。前学期は犬島を舞台に、アート、ランドスケープ、建築の違いとは何か、というテーマから始まり、島という大きいスケールに対するデザインのアプローチの仕方、巨大な敷地のモデリング、表現を通じた敷地の読み取り方、表現の仕方など、副次的なトピックが生まれて、各々の関心に合わせて実験をするという感じでした。最終講評はそれぞれ異なった提案があって、それぞれ参照しながら議論して終了しました。秋学期のスタジオについても書きたいと思っているのですが……。とりあえず秋学期の成果物を載せておきます。興味ある方はご覧ください……。

基本的に講評は(reviewと言われます)、評価でなく議論のための講評が行われています。評価軸があり優劣が付けられることはなく、それぞれの案に見られる新しさや発展性について先生たちや生徒が議論します。もちろん他のスタジオでは評価軸が定められているところもありますが、Vertical Studioは特に議論のための講評が多く感じます。また、理論的な裏付けが弱くても新しい方法論や形の作り方、表現の仕方ができていれば、その位置づけや解釈は講評やエスキスで見つけていけばいいというスタンスも感じます。しかし逆に、油断するとやりっぱなしになり、何をしていたのか分からないということにもなりかねません。

他の選択科目はHistory/Theory(HT), Applied Studies(AS), Visual Studies(VS), Liberal Arts(LA)
の4種類に大別されます。
自分は必修でHTとVSの授業があり、前学期は選択でVSを1つ、今学期はVSとLAを1つずつ取りました。前学期のVSは写真、映像、グラフィックを扱う授業、今学期のVSはフォトグラメトリとCNCで椅子を作る授業です。建築に関わる、または近しい表現と実践のような授業が多くあります。中にはスタジオと同じくらい重い授業もあり、SCI-Arcの表現力を支える授業だと感じます。LAはグラハム・ハーマンのOOOの授業を取っています。難しいです。これらの授業も何らかの形でまとめなければ……。

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中間発表で制作した椅子(元の椅子はIKEAのもの)

また、スタジオも選択科目も、ほぼ全ての授業にTAがいてチュートリアルやレポートのフォローなどが受けられます。選択科目は3時間の授業が約14回で、アメリカの学生はほとんど授業を切らない、欠席しないので、そこそこの密度で授業が進みます。自分の場合はスタジオの自由度が高く、忙しいときはスタジオをやる時間を減らすこともありますが、段取りが綿密なスタジオを取っている学生はかなりハードな生活の人もいます。概して日本の大学より忙しい感じがします。

03. SCI-Arcのアウトプット

ここからは何となく感じたこと。
まず、デザインやものを作ることに対する意識、意欲が高いように思う。椅子も作るし(自分のはIKEAがベースだが、他にも椅子を作る授業がある)、ディテールのモックアップを作ったり、模型の作り方や素材も様々、プレゼンが全てムービーだったりと多種多様。服を作る授業とかもある。何となく美大みたいな感じがする(美大行ったことないけど……)。自分のスタジオはデジタルでしか制作しないが、もっとモノを作りたいところ。

そもそもアメリカだと建築は工学部でないことも多い。基本的にはMaster of Architectureという修士号だし、学部だとBachelor of Arts in Architectureだったりする。日本だとだいたい工学部建築学科とかそういう感じだろう。SCI-Arcでは全員がデザインスタジオを卒業までやるが、日本だとそうとも限らない。もちろんSCI-Arcの人が卒業後に全員建築設計をやるわけでもないが、多くの人はデザインやアートのようなことをする。そんな感じなので、アウトプットのクオリティが高いのではないかと思う。

他の授業の展示、椅子らしい
他のスタジオの展示
学部生の卒業制作の中間発表

一方でデザイン偏重に感じるところもある。
自分もそうなのだが、例えばAIやデジタルファブリケーション、シミュレーションなどの技術は道具的に扱われ、そのブラックボックスの中身を見る人は少なく思う。日本ではそれらをどうやって建築・社会に実装するかが建築家(?)の役割として大きいように感じる。SCI-Arcの取り組みは、建築に対してどう使える可能性があるかという視点でそれらを見ている。そんなこともあり、SCI-Arcの先生は基本的に実作が少ない。これは建築家の役割の違いに起因するように思う。この辺の話は最近聞いたピーター・アイゼンマンのProject対Practiceとかの議論とも関わってくる(?)と思うが、もう少し考えたいところ。ありきたりな考えだが、日本とアメリカの良いとこ取りをうまくいていきたい。


何となく色々考えていたことを書きたいと思っていたが、書けないことやまとまらないことが多かった……。もう少し定期的に書かなければ。今学期終わったらスタジオなどまとめたいと思います。
ひとまず面白いと思ってもらえれば幸いです。


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