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JW317 丹波戦線異状なし

【丹波平定編】エピソード24 丹波戦線異状なし


第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。

彦坐王(ひこいます・のきみ)(以下、イマス)の一行は、出雲(いずも)からの帰路に就いていた。

同行するのは「イマス」の息子にして、四道将軍(しどうしょうぐん)の丹波道主王(たにわのみちぬし・のきみ)(以下、ミッチー)。

系図(ミッチー、イマス)

そして、黄沼前来日(きぬさき・の・くるひ)(以下、クール)である。

丹生湊(にうのみなと:現在の柴山港)から出航した一行が、海を進んでいると・・・。

地図(丹生湊→柴山港)

クール「皇子(みこ)ぉぉ!! 出てきたっちゃ!」

イマス「ん? 如何(いかが)致した?」

ミッチー「父上! 面妖(めんよう)なことが起こりましたぞっ。」

イマス「だから、何が起きたのじゃ!?」

クール「大きな鮑(あわび)が舟となって、わえら(私たち)を先導しとるんだわいや!」

イマス「なんじゃと! もしや、大きな鮑とは、舟に張り付いていた鮑か?」

ミッチー「違うと思いまする。鮑が剥(は)がれてしまったなら、舟が沈んでしまいまするゆえ・・・。」

イマス「で・・・では、別の鮑ということか?」

こうして、一行は、先導されるがまま、ある場所に辿(たど)り着いたのであった。

イマス「して、ここは何処(いずこ)ぞ?」

ミッチー「与謝(よさ)の浦島(うらしま)との由(よし)・・・。」

イマス「島? 島など無いではないか?」

クール「島ではなく、地名だっちゃ。」

イマス「し・・・して、二千年後の何処になるのじゃ?」

ミッチー「京都府伊根町(いねちょう)の本庄浜(ほんじょうはま)にござりまする。」

クール「出典は『国司文書(こくしもんじょ) 但馬故事記(たじまこじき)』だっちゃ。」

イマス「ん? 竹野(たかの)も黄沼前(きぬさき)も通り越してしまったのか?」

ミッチー「そのようですなぁ。」

地図(与謝の浦島→本庄浜)

イマス「して、ここにも神社が有るのであろう?」

ミッチー「流石は、父上! その通りにござりまする。」

クール「その名も、宇良神社(うらじんじゃ)だっちゃ。浦嶋神社(うらしまじんじゃ)とも呼ばれとるんだわいや。」

浦嶋神社(鳥居と拝殿)

イマス「して、祭神は?」

ミッチー「浦島太郎(うらしまたろう)にござりまする。」

イマス「浦島太郎? 聞いたことのない神様じゃな・・・。」

クール「二千年後の人々は、知っとるみたいだわいや。」

イマス「なにゆえじゃ?」

クール「なんでも・・・おとぎ話というヤツで、幼き頃に聞かされるとか・・・。」

イマス「して、ここが、物語の舞台であると?」

クール「そういうことだわいや。」

地図(浦嶋神社)

ミッチー「亀を助けたことで、大綿津見神(おおわたつみのかみ)に出会うとか、何とか・・・。」

クール「まるで、山幸彦(やまさちひこ)の話みたいだっちゃ。」

イマス「釣り針を探し、海へ向かう話に、似ておるのう。」

ミッチー「ただ、違うところもござりまして、浦島太郎は、陸(おか)に帰ったあと、翁(おきな)になるそうですぞ。」

イマス「陸に帰った途端(とたん)、翁になったと申すか?」

ミッチー「いえ、なんでも・・・玉手箱なるモノを開けたことで、翁になったとか・・・。」

イマス「さ・・・左様か・・・。そんな話の、どこが面白いのじゃ?」

ミッチー「それがしに聞かれても、分かりもうさず。後の世の人々には、心に刺さるモノが有るのでしょうなぁ。」

イマス「それに、鮑ではなく、亀であることも気になるぞ。」

ミッチー「これぞ、ロマンにござりまするなぁ。」

クール「出たぁぁ! ロマンっ。」

するとそこに、平定の旅で出会った豪族たちが、わらわらとやって来た。

まずは、加佐(かさ)の住人、サムとジェフ。

地図(加佐)

サム「皇子! お疲れ様ですぅ。」

ジェフ「えらい長いこと、かかったなぁ。」

次に、多遅摩国造(たじま・の・くにのみやつこ)の多遅摩日楢杵(たじま・の・ひならき)(以下、ラッキー)。

地図(多遅摩)

ラッキー「これにて、丹波平定編は終了ハセヨ!」

つづいて、多遅摩竹野別当芸利彦(たじまの・たかのわけ・の・たぎりひこ)(以下、たぎり)。

地図(竹野)

たぎり「おかえりなさいませっ。皇子!」

それから、黄沼前県主(きぬさき・の・あがたぬし)の穴目杵(あなめき)(以下、アナン)。

地図(黄沼前)

アナン「皇子! おかえりなさいませ! 息子よ! よう帰ってきたっ。」

クール「父上ぇぇ! つつがなく帰ってきたわいや!」

次に、小田井県主(おだい・の・あがたぬし)の「ピット」。

地図(小田井)

ピット「吾輩(わがはい)は、感無量(かんむりょう)なのである・・・(´;ω;`)ウッ…。」

更に、狂(くるい)の土蜘蛛(つちぐも)の「くるっち」。

地図(狂)

くるっち「お疲れ様だわいや。皇子! わえら(私たち)も、米作りを始めたっちゃ。」

イマス「おお! そうか! 汝(いまし)らも、米の良さを知ってくれたか!」

更に、二方国(ふたかた・のくに)の豪族、宇都野真若(うつのまわか)(以下、マーカ)

地図(二方国)

マーカ「なにゆえか、わえ(私)が、先に着いたことになっておりまする。」

そして最後に、副将の尾張倭得玉彦(おわり・の・やまとえたまひこ)(以下、玉彦)。

系図(玉彦)

玉彦「皇子! つつがなく務めを終(お)えられ、祝着至極(しゅうちゃくしごく)に存じ申し上げ奉(たてまつ)るがや。」

イマス「うむ。留守居(るすい)、大儀(たいぎ)であった。」

ミッチー「長き旅にござりましたなぁ。」

イマス「うむ。あとは、大王(おおきみ)に報せるだけじゃのう。」

こうして「イマス」と「ミッチー」の物語は、完結したのであった。 

つづく

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