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JW275 沼が陸になった日

【疫病混乱編】エピソード27 沼が陸になった日


第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。

紀元前89年、皇紀572年(崇神天皇9)のある日のこと。

ここは出雲国(いずも・のくに)・・・。

地図(出雲)

出雲君(いずものきみ)の世毛呂須(よけろす)(以下、ケロロ)が、三人の息子を呼び集めていた。

すなわち、振根(ふるね)。

飯入根(いいいりね)。

そして、甘美韓日狭(うましからひさ)(以下、カラピー)である。

系図(出雲氏)

ケロロ「皆に集まってもらったのは、他でもない。夜麻登君(やまとのきみ)の御間城入彦五十瓊殖尊(みまきいりひこいにえ・のみこと)こと『ミマキ』が、わしらの企みに勘付いたらしい。」

振根「なっ!? そげなこと・・・有り得んっ。」

飯入根「やはり、無謀な企てだったのでは?」

カラピー「詳しいことを教えてほしいっちゃ。」

ケロロ「うむ。丹波(たにわ)より消息(しょうそく)が届いてな・・・。ミマキが、中つ国の国境(くにざかい)に神社を建てたそうだに。」

地図(丹波)

振根「国境を守るためにおこなったと?」

ケロロ「詳しいことは分からん。だが、夜麻登の寝返り者からの報せでは、ミマキの出方(でかた)を窺ってからでも遅くはない・・・と言って来ているようだっちゃ。」

飯入根「我が君! もう、こげな恐ろしきことはやめませんか?」

振根「何を言っちょうだ! そげなことで、どうする!? 出雲の覇権に関わることなんだぞ!」

飯入根「そげなこと言われましても・・・。」

カラピー「それで・・・我が君は、如何(いかが)なされるんです?」

ケロロ「うむ。向こうが出てくるなら、好都合だに。中つ国が手薄(てうす)となったところを、寝返り者が攻め込めば良い。もし動かなかったとしても、企み通り、丹波・吉備(きび)・川内(かわち)の三方より、夜麻登に攻め込み、これを切り崩していくだけだに。」

地図(丹波・吉備・川内)

飯入根「そう易々と、夜麻登が崩れるとは思えませんが・・・。」

出雲にて、作者オリジナルの陰謀が語られていた頃、ヤマトでは・・・。

三輪山(みわやま)の麓、磯城瑞籬宮(しきのみずかき・のみや)に、一人の人物が呼び出されていた。

地図(磯城瑞籬宮)

その人物の名は、廣瀬藤時(ひろせ・の・ふじとき)といった。

藤時「お初にお目にかかりますぅ。我(われ)が、河合(かあい)の里長(さとおさ)、藤時やで。」

ミマキ「よくぞ参った。」

藤時「ほんで、此度(こたび)、我(われ)を呼び出されたのは・・・。」

ミマキ「汝(いまし)に聞きたきことが有るからじゃ。汝に神より託宣(たくせん)が有ったというは、まことか?」

藤時「御意。大御膳神(おおみかしわで・のかみ)を祀(まつ)れと、お告げが有ったんですわ。えらい驚きましたでぇ。」

ミマキ「伝え聞くところによると、水足池(みずたりいけ)と呼ばれる沼が、一夜にして陸地になったそうじゃな?」

藤時「それだけやないですよ。橘(たちなば)が数多く生えたんですわ。これは、どう考えても、神さんの仕業(しわざ)やと思いましたでぇ。」

ミマキ「橘? 聞いたことが無いのう・・・。して、祭神は、どのような神様なのじゃ?」

藤時「食べ物を司る神様でんがな。若宇加能売命(わかうかのめ・のみこと)とも伝わってます。」

ミマキ「初耳の神様じゃな・・・。」

藤時「それだけや有りまへんで! 社伝では豊受大神(とようけのおおかみ)・倉稲魂神(うかのみたまのかみ)と同神となってるんですわ。」

ミマキ「左様か・・・。されど、託宣とあらば、神意に従わねばなるまい。すみやかに社(やしろ)を建てるのじゃ。」

藤時「御意。」

ミマキ「して、神社の名は何と致す?」

藤時「廣瀬大社(ひろせたいしゃ)やでぇ。二千年後の奈良県河合町川合(かわいちょう・かわい)に建てることになりますぅ。」

地図(廣瀬大社)
廣瀬大社(鳥居)
廣瀬大社(拝殿)

ミマキ「左様か・・・。解説、大儀であった。」

こうして、廣瀬大社が創建されたのであった。

それから月日は流れ、年が改まり、紀元前88年、皇紀573年(崇神天皇10)となった。

ミマキが政務に勤(いそ)しんでいると、ミマキの大伯父、彦五十狭芹彦(ひこいさせりひこ)(以下、芹彦(せりひこ))と稚武彦(わかたけひこ)(以下、タケ)が、やって来た。

皇室系図(芹彦とタケ)

芹彦「ミマキ! 退治に参るぞっ!」

タケ「川内(かわち)にて、恐ろしきモノが出てきたのじゃ!」

地図(川内)

ミマキ「大伯父上? 何が有ったのでござる?」

芹彦「大蛇が暴れて、民(おおみたから)を悩ませておるのよ!」

タケ「すみやかに退治せねばならぬ。それゆえ、大王(おおきみ)の許しをいただきたいっ!」

ミマキ「兵を遣(つか)わす許しですな? かしこまりもうした。」

タケ「ついでと言っては何じゃが、私の息子も同行させたいと思っておる。」

ミマキ「タケ伯父上の息子と申されると、武彦(たけひこ)にござりまするか?」

タケ「その通りじゃ。では、紹介致す。愚息(ぐそく)の武彦じゃ。『たっちゃん』と呼んでくれ。」

たっちゃん「読者のみなさん、お初にお目にかかりまする。武彦にござる。」

皇室系図(たっちゃん)

ミマキ「では、御三方にて大蛇退治を御願い致しまする。」

芹彦・タケ・たっちゃん「御意!」×3

三人が溌剌(はつらつ)とした返事をした直後、女の声が響き渡った。

先に紹介しておこう。

倭迹迹日百襲姫(やまとととひももそひめ)(以下、モモ)である。

皇室系図(モモ)

モモ「ちょっと待ちなさいぁぁい!」

芹彦「何じゃ? モモ姉? 何か文句でも?」

モモ「文句じゃなくて、助言よ! 助言っ!」

ミマキ「大伯母上・・・。紙面の都合というモノが有りましてなぁ。」

モモ「そんなこと、私の知ったことじゃないわよ! それより、此度の蛇退治、ミマキ! あんたも同行しなさいっ!」

ミマキ「は? な・・・なにゆえにござりまするか?」

大蛇退治は、どうなってしまうのであろうか? 

次回につづく

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