JW296 気立の戦い
【丹波平定編】エピソード3 気立の戦い
第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。
丹波道主王(たにわのみちぬし・のきみ)(以下、ミッチー)率いる、ヤマトの軍勢が出陣した。
目指すは、気立(けた)。
二千年後の兵庫県豊岡市(とよおかし)周辺である。
従う武将は、下記の通り。
多遅摩国造(たじま・の・くにのみやつこ)の多遅摩日楢杵(たじま・の・ひならき)(以下、ラッキー)。
次に、多遅摩竹野別当芸利彦(たじまの・たかのわけ・の・たぎりひこ)(以下、たぎり)。
そして、黄沼前県主(きぬさき・の・あがたぬし)の穴目杵(あなめき)(以下、アナン)。
それから、アナンの息子、黄沼前来日(きぬさき・の・くるひ)(以下、クール)である。
クール「気立の館が見えてきたっちゃ!」
ミッチー「うむ。ついに戦(いくさ)じゃ。それがしの『国見(くにみ)の剣(つるぎ)』が、大暴れする時が来たのじゃ! 大活躍する時が来たのじゃ!」
アナン「して、どげに攻めるんだいや?」
ミッチー「ん? 『国司文書(こくしもんじょ) 但馬故事記(たじまこじき)』では、どのように書かれておるのじゃ?」
ラッキー「え? ことごとく討ち破ったとしか、書かれてないハセヨ!」
ミッチー「そ・・・それだけか? ああやって攻めたとか、こうやって戦ったとか、詳しくは?」
たぎり「だから、ことごとく討ち破ったと・・・。」
するとそこに、狂(くるい)の土蜘蛛(つちぐも)こと「くるっち」が現れた。
くるっち「ことごとく討ち破られてやったんだわいや! そげなことで、さいなら!」
ミッチー「あっ! 待てっ。逃げるなっ!」
こうして、狂の土蜘蛛は逃げ去り、ヤマトの軍勢は、気立を取り戻すことに成功したのであった。
将兵たちが、喜んだのは、言うまでもない。
一人を除(のぞ)いて・・・。
ミッチー「なんということじゃ。それがしの『国見の剣』が、全く活躍できなかった・・・。」
クール「こにゃぁなとこで、しゃぁたれるな(こんなとこで、ふざけるんじゃない)!」
ミッチー「しゃぁたれてなど、おらぬっ。おお! 国見の剣よ・・・許してくれぇぇ!!」
ラッキー「剣に話しかける人・・・初めて見たニダ・・・。」
アナン「して、次は、土蜘蛛の本拠地、狂(くるい)を攻めるんかいや?」
ミッチー「いや、それよりも、やっておかねばならぬことが有る。」
たぎり「やらねばならぬこと?」
ミッチー「神々に、多遅摩(たじま)を守ってもらうのじゃ。」
ラッキー「どういうことニカ?」
ミッチー「前回、尾張建諸隅(おわり・の・たけもろすみ)こと『ケモロー』を、出雲(いずも)に遣(つか)わしたであろう?」
一同「ん?」×多数
多遅摩の人たちが、疑問符を頭上に浮かべていた頃、出雲では「ケモロー」が、出雲君(いずも・のきみ)の世毛呂須(よけろす)(以下、ケロロ)に拝謁(はいえつ)していた。
ケモロー「御目通り叶(かな)い、恐悦至極(きょうえつ・しごく)に存じ申し上げるがや。」
ケロロ「夜麻登(やまと)が、何を言わんとしておるのか、よう分かっちょる。合力(ごうりき)の願いであろう? だが、そげなことをする余裕は、出雲には無いっ。早々に帰るが良い。」
ケモロー「そんなことでは無いんで、安心してちょう(ください)。」
ケロロ「では、なにゆえ参ったんだに?」
ケモロー「勧請(かんじょう)の許しをいただきに参ったんだがや」
ケロロ「勧請? どちらの神様を分祀(ぶんし)するつもりだ?」
ケモロー「まあ、大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)は外(はず)せんで。」
ケロロ「お・・・大物だな・・・。そげなことして、どげすぅだ(どうするんだ)?」
ケモロー「此度(こたび)の賊鎮定に、出雲の神々の力も、お借りしようと思っとるんだわ。」
ケロロ「なんだと!?」
ケモロー「人数を出すのが、苦しいのは、分かっとるでよ。その代わりに、神々の助けがほしいんだがや。それとも・・・・・・お許しが、いただけん訳(わけ)でも?」
ケロロ「そ・・・そげなこと・・・有るわけがなかろう。分祀を許そうではないか・・・。」
ケモロー「かたじけのうござりまする!」
こうして「ケモロー」は帰っていった。
「ケロロ」の息子たちが、現れたのは、その直後のことであった。
すなわち、振根(ふるね)。
飯入根(いいいりね)。
甘美韓日狭(うましからひさ)(以下、カラピー)である。
振根「父上! なんということを!」
ケロロ「なんだ? 何が不満だ?」
振根「父上は、自ら、墓穴を掘ったんだに!」
ケロロ「振根! それが、父に対する、言の葉かっ?!」
飯入根「我が君・・・。此度ばかりは、兄上が正(ただ)しゅうござりまする。」
振根「此度ばかりとは、どげな意味だ? いつもは間違っちょるみたいではないかっ!」
カラピー「振根兄上・・・。そう、お怒りにならず、我が君に解説してくだされ。」
振根「で・・・では、解説するっちゃ。出雲の神々が、多遅摩や丹波(たにわ)で祀(まつ)られると、どげなことになるのか・・・。」
ケロロ「ど・・・どげなことになる?」
振根「多遅摩も、丹波も、出雲の神々が鎮守(ちんじゅ)せる地となるんだに。」
ケロロ「あっ!」
カラピー「そげです、我が君。出雲が、多遅摩や丹波に、人数を繰(く)り出すことは、もう出来なくなったわけです。」
振根「丹波が危うくなったとしても、出兵は出来ないんだっちゃ。父上は、出雲の神々を敵にまわせるんか?」
ケロロ「は・・・謀(はか)られた。作者オリジナル設定ということで、甘く見ちょった・・・。」
振根「父上ぇぇ!! なんということをぉぉぉ!!」
飯入根「兄上! 落ち着いてくだされっ。」
出雲の神々を分祀する作戦は成功した。
次回は、それらの神社を紹介していきたいと思う。
つづく
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