Joker

大阪の宅地建物取引士 おすべりの悪魔と契約をしている。 大家業はじめて10年。

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事故物件巡りの話【第1話】

「うーん、っと。  桑津さんにはね、フロント担当はもういいので、  うん、こっちのね、特別な仕事の方、  してもらおうかなってね、うん。  個人プレイが好きみたいなんでね、うん。  これはもう常務の承認も取っていますしね、  うん。  パワハラとかじゃないので、そこらへんは理解  してもらいたいんですけどね、うん。」 うん、を6回。 それつけないとしゃべれなくなる男。その名を北原課長という。 俺は所属するこの賃貸管理課の長、北原課長の口癖である「うん」の回数を冷静に数えつつ

    • 事故物件専門調査員桑津の管理ファイル【とあるマンションの話 ⑥】

      今回の事件の張本人ともいうべき、Bさんのお宅に伺ったちょうど2週間後、俺はまた新町ローズタワー6階のあの部屋にいた。 関係者を一堂に呼んでの謎解き会である。 総勢8名。 皆の予定を合わせるのに2週間かかったのだ。 「皆さん、お忙しい中お集まりいただき、  誠にありがとうございます。  今回の事案を調査しておりました、  桑津と申します。  本日は私がご説明をしてまいります。  よろしくお願いをいたします。」 俺は高らかに開始の宣言をし、皆を見渡した。 傍らには俺の助手と化

      • 事故物件専門調査員桑津の管理ファイル【とあるマンションの話 ⑤】

        事務所に帰ってまず珈琲を淹れて、一息ついたころに藤原さんからの報告書がメールで届いた。 A4のペライチのレポートだったが、知りたいことがそこに書いてあった。 事故があったのは躯体工事の中盤あたりだったらしい。 上層階に鉄筋などの資材を運ぶためのワイヤーが突如切れ、しなったワイヤーが当時6階付近で作業をしていた30代の男性作業員のBさんの右腕に直撃。右腕の橈骨と尺骨をぶち折る形となり、右腕の大半を失った。 当時現場は騒然となり、Bさんは現場にいた同僚にとりあえず右腕をきつく縛

        • 事故物件専門調査員桑津の管理ファイル【とあるマンションの話 ④】

          新町ローズタワー。 中堅どころのデベロッパーが建設をし、去年竣工されたタワーマンションだ。 オートロックの玄関を抜けると、タワマンらしくロビーは豪華なものだった。 コンパクトながらゲーテッドガーデンも拵えられており、今はチューリップやネモフィラなどが華やかに咲いていて、来客者の目を楽しませてくれている。 「こちらが低層階用のエレベーターです。」 藤原さんが案内をしてくれる。 売買時の案内なら下見をしっかりして、位置関係や施設の内容を暗記して臨むが、今回はお客さんである。藤原

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        事故物件巡りの話【第1話】

        • 事故物件専門調査員桑津の管理ファイル【とあるマンションの話 ⑥】

        • 事故物件専門調査員桑津の管理ファイル【とあるマンションの話 ⑤】

        • 事故物件専門調査員桑津の管理ファイル【とあるマンションの話 ④】

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          事故物件専門調査員桑津の管理ファイル【とあるマンションの話 ③】

          後日、入居者の方(ここでは仮にSさんとする)と話ができる日を調整し、藤原さんとお話を伺うことになった。 当日、現地のお宅でお話をする、という予定だったが、当日になって、 「やっぱ無理。あそこには帰りたくない!」 とSさんが拒絶されたので、近くのカフェで話を聞くことになった。 藤原さんはご丁寧にも弊社の入っている民泊崩れのマンションの前まで車で迎えに来てくれていた。 道中、このマンションのことについて、いろいろ聞いてみた。 このマンションは施工前、土地を工場付きで仕入れた後

          事故物件専門調査員桑津の管理ファイル【とあるマンションの話 ③】

          事故物件専門調査員桑津の管理ファイル【とあるマンションの話 ②】

          ワイングラスを替えて、一杯目を注いだあたりで、どんちゃんからDMが来た。 さっき目に浮かんだ光景をそのまま伝えた。 見てもない部屋のイメージをここまで明確に答えることは稀だった。 おおう、やっぱ当たってんのかい。 雨の日や曇りの日はやめておいた方がいい、説明はできないけれど、イヤな雰囲気を感じるときは雨の日が多い。 あと、いつもと違う人を連れていく、というのは素人さんには本当に有効な方法で、来客があるときは「出ない」ことが多い。 だからこそ困るんだよ、俺が行っても出てこな

          事故物件専門調査員桑津の管理ファイル【とあるマンションの話 ②】

          精神安定罪

          令和20年2月9日。 令和の時代に入って早20年。 わが国日本では21世紀以降、少子高齢化社会が進み、国際的な競争にも負け続け、オンリーワンの技術の国日本と呼ばれた過去の栄光は消え去り、経済的な豊かさの上でも他国に劣り、衰退の一途を辿っていた。 従来の高齢者優遇の政党が票集めのために社会保障費に予算を回して、日本国の今後の成長資源に金を回さなかったせいだ。 近年、巻き込まれるような戦争もなくコロナ以降重篤な疾病が流行ることもなかったのだが、未来もみえず、段々と瘦せ細り死にゆく

          精神安定罪

          オヤジさんの話

          俺にはオヤジと呼べる存在が三人いる。 まずは実父。 俺が10歳の時に両親が離婚してから会っていない。 「まぁ死んだら連絡来るやろ」と思って生きてきたが、二年前に既に死んでることがわかった。 東北の震災の前日に脳梗塞で倒れ、そのまま10年ほどベッドの上で生き永らえ、そのまま眠るように死んだという。 二人目は、嫁の父親、いわゆる義父というやつだ。 お義父さんは嫁とお付き合いするときにご挨拶でお会いした。 嫁が19歳の時なので、もう12年ほど前の話だ。 「3人、娘がおるうちの、い

          オヤジさんの話

          事故物件専門調査員桑津の管理ファイル【とあるマンションの話 ①】

          「よし、これで完成っと。」 その夜も俺は美味しく出来上がったアヒージョをアテに、いい感じでKP(乾杯)して程よく酔っぱらっていた。 ワインのボトルを空けて、もう一本飲もうかと新しい I BALZIに手をかけたその時、Twitterから通知が来た。 何やら@付きでリプライが来ているようだ。 フォロアーでもあり、リアルでも仲良くさせてもらっているどんとこい違法業種ちゃん(女)からだった。 お祓いしても、出てくる男性の霊だって? その時点でかなり手強いじゃないのww どうしま

          事故物件専門調査員桑津の管理ファイル【とあるマンションの話 ①】

          クソ物件GO珍道中 えぴそーど参

          はい、炭酸ニキ(@YangWenly)にも言われてますが、初手がクライマックスでした!笑 なのでここらから、あっさり行きます! イノシシに遭遇し、心臓バックバクのまま、Jokerとペンギンちやんは次のポイントへと移動します。 神戸市の繁華街に移動しました。 このエリアならすぐにテナント付くんじゃないかなと思いました。 道が狭くて、路駐するの躊躇したんですけど、相方🐧はより良い撮影ポイントを探しに颯爽と闇に消えていきました。 次のポイントへ移動中、ふと既視感を感じました。

          クソ物件GO珍道中 えぴそーど参

          クソ物件GO珍道中 えぴそーど弐

          時は来た。 12月1日。クソ物件GO2022の開始日である。 お仕事終わりのペンギンちやんと待ち合わせし、一路、始まりの地へと向かった。 2022クソ物件GOの最初の物件として選ばれたのは、知的なツイートが素敵なショーター先生のご投稿物件であった。 🃏「あれ、俺がショーター先生(@teritama19)   敬愛してるの知ってたん?☺」 🐧「も、もちろんですよ!!   運転して頂くんですから、   Jokerパイセンの気分を   盛り上げていきます!!」 🃏「(あ、偶

          クソ物件GO珍道中 えぴそーど弐

          クソ物件GO珍道中 えぴそーど壱

          その後、あっという間に時は過ぎ、11月になり、界隈がソワソワしてくる年の瀬になりました。 そうです、クソ物件GOの季節になったのです。 2022年は気合をいれて、クソ物件オブザイヤーにも投稿して楽しみに待っておりました。(結果は残念でしたが。) そんなときに、ペンギンちやん(@OTSUKAREpenguin)からDMが届きました。 🐧「なぁなぁ、クソ物件オブザイヤー、   残念やったなぁ。   まぁ、いつも通りの安定の   おすべりさんやん。笑   来年もがんばりやー。」

          クソ物件GO珍道中 えぴそーど壱

          クソ物件GO珍道中 えぴそーど零

          こんばんは、Jokerです。 今回は12月1日午後9時から12月4日午後9時までの4日間で開催された「クソ物件GO2022」に参加させてもらった記憶をもとに少し書きたいと思います。 俺が始めたこの催しの参加させてもらったのは、去年でした。 去年の今頃は仕事も特になく、有給取りまくれる状態だったので、 「今年こそ参加してブイブイ言わしてやるぜ!」 と意気込んで参加したは良いものの、俺のiPhoneの調子が悪かったのか、ずっとサイトエラーが出てしまい、正常にポイント加算ができ

          クソ物件GO珍道中 えぴそーど零

          旅行の話。

          週末から母と旅行の打ち合わせをしていた。 行くのは母でもなければ、俺でもない。 御年90歳になった、祖母なのである。 前々からいきたい、早くいきたいと切に望んでいて、ようやく叶った旅行である。 ただ母や俺に負担はかけたくないということで、質素なものでよい、例えるなら、ツアー旅行で変なオプションを付けられたり、どこか寄り道をさせられたりは勘弁してほしい、たいそうなツアーガイドも不要だ。あと、親戚連中には絶対に黙っていてほしい。 いろいろ注文を受けてはいた。(どこが負担をかけた

          旅行の話。

          すべりだい 5.3

          実家に帰ると、玄関に見知らぬ靴があった。 おかんに話しかけると、 「あ、おかえり。あんたのファンの子、もう来てるでぇ。  おとなしぃ子やなぁ。  ジュースとお菓子出しておいたで。  それとな・・手ぇだしなや?」 さすがに出さんわ、子どもやで?と答え、久しぶりに自分の部屋に入る。 言われたとおり、花ちゃんは借りてきたネコのようにおとなしく座って、出されたジュースを飲んで俺を待っていた。 「よぉ、会うのは久しぶりやなぁ、妄想王。」 俺は花ちゃんのあだ名を思い出して、ふっかけて

          すべりだい 5.3

          すべりだい 5.2

          天使ちゃんこと、花ちゃんと初めて出会ったのは、彼女が中学2年生のときだった。 当時、俺は大学に通いながら、夜は集団授業の塾講師をしていた。 学費を自分で稼がなければならず、時給が高いという理由で塾講師をしていた。 時給は5000円で週5とかで入っていたので、当時は月給換算すると30万ほどあった。(司法書士の事務員の月給よりも普通に高かったな。orz) その塾に、塾生として花ちゃんがいた。 そうして塾講師と塾生という立場で彼女と出会った。 花ちゃんに話しかけた第一声は今でも覚

          すべりだい 5.2