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#115 リエゾン学級経営 第1章:通常学級における特別支援教育理解の重要性とは?

リエゾン学級経営とは?

中教審答申「令和の日本型学校教育」実現への課題

令和の日本型学校教育は、2020年代を通じて目指すべき学校教育の姿として、中央教育審議会において答申されたものです。
この答申では、全ての子供たちの可能性を引き出すために、個別最適な学びと協働的な学びの実現を重視しています。

個別最適な学びとは、一人ひとりの子供の興味・関心や学習状況に応じて、最適な学びを提供することです。
そのためには、子供の理解度や習熟度を把握し、その結果に応じて指導内容や方法を調整することが重要です。
また、子供自身が自分の学びを主体的に考え、計画・実行・評価できるような環境を整えることも大切です。

協働的な学びとは、子供同士が協力しながら学び合うものです。
そのためには、子供同士が協力し合うためのルールやマナーを身に付け、お互いに尊重し合いながら学び合えるような環境を整えることが重要です。
また、子供たちが主体的に学び合うことができるような課題や活動を設定することも大切です。

令和の日本型学校教育が目指す個別最適な学びと協働的な学びは、いずれも子供たちの主体性を育むことにつながります。
子供たちが自分の興味・関心や学習状況に応じて学び、お互いに協力し合いながら学び合うことで、自ら考え、行動できる力を身に付けることができるのです。

個別最適な学びは、「個に応じた指導」の理念を具体化するものとして位置づけられています。
支援を必要とする少数派の子どもたちは、診断の有無にかかわらず、さまざまな特性や課題を有しています。
そのため、一人ひとりの特性や課題に応じて、学習内容や方法を調整することが重要です。

協働的な学びは、「共生社会」の実現に向けた重要な取り組みとして位置づけられています。
支援を必要とする少数派の子どもたちは、多数派の子どもたちと共に学校生活を送ることになります。
したがって、多数派と少数派が互いに寄り添い合いながら学び合っていかない限り、共生社会の理解や共感力を育むことはできません。

この個別最適な学び・協働的な学びの実現の障壁となる課題が2つあります。
①特別支援教育のスキルアップ。
②多数派と少数派が互いに寄り添いあい、共感しながら学び合うことのできる学級づくり。

この2つを解消しない限り、令和の日本型学校教育は実現は絶対にできないと確信しています。

この2点を解消する学級経営手法が、リエゾン学級経営です。

このような現状や課題をふまえ、多様性を尊重し共に学び成長する新たな教育アプローチとしてリエゾン学級経営を考案しました。

この考え方のベースとなっているのは、多数派が使う「ふつう」という言葉の違和感からです。
「ふつう」という概念のパラダイム変換については↓をご覧ください。

定義を振り返ります。

0章 リエゾン学級の定義
リエゾン学級経営とは、
「少数派と多数派が互いに寄り添い合い、共に学び、クラス全員が成長するための教育的なアプローチのことです。」

※少数派とは学級で個別の支援を要する児童
※多数派とは個別の支援を必要としない児童

全員が多様性を尊重し、誰にとっても居心地のよい場、楽しく学びながら互いを認め合う学習環境を築き、目標に向かって努力しながら成長できることを目指します。

学級経営(ゴール設定)×心理的安全性(居場所づくり)×特別支援理解教育(多数派及び保護者への理解)=リエゾン学級経営

リエゾンとは、もともとフランス語からきた言葉です。
連携や結びつきを意味していて、医療現場でよく使われています。

これからの学級経営において、多数派と少数派の連携や保護者や校内外の人材との結びつきを強化し、互いの理解を深め合うことが必要不可欠であると感じ、

リエゾン学級経営と名付けました。

さて、今回は教室で困り感を示す子ども達が増加の一途をたどっています。
その原因について考えます。

 第1章 通常学級における特別支援教育理解の重要性とは?

近年、学級担任にも、通常学級における特別支援教育の理解がますます求められています。文部科学省の調査結果から、その背景を読み取ることができます。

通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する 調査結果
(文部科学省)

文部科学省による調査によれば、通常学級に在籍する小中学生の8.8%が、学習面や行動面で著しい困難を示す発達障害の可能性があることが明らかになっています。
これは担任が回答しているデータであり、数値としての信憑性は一部不確かではありますが、特別支援教育の理解が急務であることが読み取れます。
クラスに複数の子供たちが支援を必要としていることを考えると、
「特別支援教育のことはよく知りません」
というのは許されません。

今後の調査では、この数値が上昇する可能性が高いと予想されます。

このような支援が必要な子供たち(以下、少数派)への適切な対応は、教育現場の重要な課題となっています。

しかし、その対応には様々な課題があります。

例えば、
テストの文章を読むことができない子がいたら、担任が代読してやり問題を解かせてやることがあります。

このような困り感を示す児童に対し、個別に対応しただけでは、何も問題は起こりません。

むしろ合理的配慮として当然と言えます。
ですが、
B「Aちゃんだけ、テストの問題を先生に読んでもらってずるい!」
A「ぼく、ずるくない!」
といってBちゃんをたたいたとします。
叩かれたBちゃんは泣いてしまいました。
こうなると支援でなく、トラブルです。

この文脈からだけでも、Aちゃんは、読むことに課題があり、「ずるい」という言葉に反応し手がでてしまっているので、感情コントロールが苦手な子だとわかります。

読むことに課題があるので、個別支援が必要です。
支援を必要とする子は、クラスでも少数といえるので少数派と呼ぶことにします。
否定的意味はありません。

この少数派の子のAちゃんに、担任がテストで問題を代読してあげるのは、合理的配慮となるで大切な個別支援です。

ですが、ここは教室です。
支援を必要としないその他多くの子(以下、多数派)も一緒に生活しています。
この多数派の子たちが、少数派の子たちを理解していかない限り、
教室のトラブルは絶えません。

この事例では、Aちゃんのテストを代読する前に、クラス全員に代読することを理解させる必要があったのです。

さらに、
「ずるくない」ことも理解させなければならなかった
のです。

分かりやすい事例をだしましたが、

他にも、
休み時間終わりのチャイムが鳴ってるのに遊んでいる、
チャイム着席できない、
離席する、
整列しない、
そうじをさぼる、
給食のおかわり、
グループ活動、
休み時間のあそび、
不規則発言
などから生じるトラブル対処となると、そう簡単ではありません。
必ずしも診断名がついた子だけが、困り感を示すわけではないのです。
そういったトラブル対処に追われ、担任は疲弊してしまいます。

挙句の果てには、力ずくでねじ伏せるか、放任するかまたは、多数派を取り込み少数派を追い込むといった選択をとることもあります。

ですが、このようなトラブルが減らない限り、居心地のよい学級にはなりません。

こうしたトラブルの原因の多くは、困り感を示す子への理解不足からくるものです。

ただ、グレーゾーンと呼ばれている子達への支援となると、学級全体で、理解をどこまでさせたらよいのか、理解させたほうがよいのか、厳しく指導をしたほうがよいのかという葛藤が生まれます。

さらに、近年増え続ける愛着障害を抱えた子への対応なども考えると、もう担任一人ではどうすることもできません。

ですが、自己肯定感を下げないためにも、早期発見、早期支援が必要です。
早めに保護者と連携し、上の学年になって困り感が増幅しないようにしていかなければなりません。
自己肯定感が下がってしまうと、トラブルばかり引き起こすことになるからです。
そのためには、小学校入学してから対応していては、もはや手遅れと言えます。

このように考えると、教室で起こる多くのトラブルの原因は、少数派の子供たちへの理解不足から生じていることがわかります。
少数派の理解を深めることで、トラブルが減少し、居心地の良い学級環境が築かれます。

しかし、これは担任一人で解決できるものではありません。
特別支援コーディネーターを中心とした組織的な対応が必要であり、保護者との連携も不可欠です。

教育現場が本腰を入れて対策を進め、従来までの教育システムを新しいシステムへとパラダイム変換していかない限り、教育の未来はありません。

このように、通常学級における特別支援教育の理解は、教育現場にとって極めて重要です。
適切な対応が、子供たちの成長と良好な学習環境の構築に貢献するものと言えます。
こうした指導の積み重ねで、リエゾン学級が実現できるのです。

それではまた!

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