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#5 学級経営の成功法則:児童理解を深める新しい理論(新年度準備)

知っトク!学級経営④

1はじめに

今回は、学級経営戦略って何? 「児童理解編」です。
これまでのおさらいです。

学級経営とは
「クラスが学びの集団として成立するよう、担任が、継続的・計画的に意思決定を実行し、クラスを運営していくこと」

ゴール=クラスを成長させる+児童像
経営理念=ビジョン+価値
経営目標=経営理念を実現させるための手立て

「クラスを成長させるためにどんな子どもに育てていくのか」がゴール。「どんな学級にしていきたいか」というビジョンと、「担任として何を大事にするか」という価値を合わせたものが経営理念でした。
そして、経営理念を実現させるための手立てが経営目標でした。

具体的には、
「一人一人が相手を大切にする子に育つこと」をゴールに
「感謝の気持ち」「他者意識」「自分を好きになる」の3つの価値を軸に「互いに助け合い、困ったことがあっても大丈夫と思えるような安心できるクラス」を目指すという経営理念のもと、
以下のような経営目標を例にして、考えていきました。

         2年担任ともぞう先生の経営目標

①朝の会か帰りの会のどちらかで、他者意識が感じられた子どもを必ず1人見付け、クラス全体に紹介する。(学級づくり)
②帰りの準備の時間(5分程度)を使って、自分の頑張ったことを振り返りながら、ほめほめ日記を書く。(自分づくり)
③金曜日の帰りの会で、3つの価値をもとに、クラスの一人を必ず表彰する。(学級づくり、自分づくり)

学級経営のピラミッド図


詳しくはこちらを ↓ ご覧ください。一度では理解しきれないかもしれないので、何度でも読み返すことをおすすめします。

2経営戦略とは?

では経営戦略とはなんなのでしょうか?戦略と共に使われる戦術という言葉もあります。この2つの言葉を比べながら考えていきたいと思います。

戦略と戦術の違いを分かりやすく表した格言があるので紹介します。

「戦術の失敗を戦略で補うことはできるが、戦略の失敗を戦術で補うことはできない」

戦略と戦術は全く異なるものであるということです。戦略とは、全体的長期的視点から計画、準備実行する方法。戦術とは、その計画遂行のための手段なのです。戦術とは学習指導と生活指導を表します。

学級経営における経営戦略は、児童理解です。

経営戦略=児童理解

ではなぜ、児童理解が経営戦略なのか?
前回紹介した、経営目標をもとに考えると分かりやすいです。

①朝の会か帰りの会のどちらかで、他者意識が感じられた子どもを必ず1人見付け、クラス全体に紹介するために必要なことは?
→児童をよく観察すること

②帰りの準備の時間(5分程度)を使って、自分の頑張ったことを振り返りながら、ほめほめ日記を書かせるために必要なことは?
→児童全員が趣旨を理解して前向きに書いていること

③金曜日の帰りの会で、3つの価値をもとに、クラスの一人を必ず表彰するために必要なことは?
→児童をよく観察していること

児童理解がないと、上記の経営目標は達成できないことが分かります。
つまり、児童理解ができれば、経営理念が実現できるのです。

「戦略の失敗で戦術を補うことはできない」とは、児童理解に失敗した(もしくはしていない)のに、授業でそれを補うことはできないということです。
逆に、授業の失敗は児童理解で補うことができるということを意味します。

児童理解が経営戦略になることがご理解いただけたでしょうか?

3「2:5:2:1」理論

では次に、児童理解のためのクラス理論について説明します。

では、少し想像してみましょう。
あたなは、担任の先生です。
自分のクラスに30人いたとします
さて、何人くらい自分のことを好きだと思っているでしょう?

おそらく、いても6人程度でしょう。
一体その根拠は?

根拠は自分自身の経験です(笑)

自分の経験を思い出し、数値に表しただけです…
ですが、振り返ると、だいたいいつも同じ割合なので勝手に理論にしてしまいました。
あしからず。
みなさんはいかがですか?

クラスの児童は、この割合をもとに、4つのタイプに分類できます。
この割合は、出会った当初の割合です。
自身の経営手腕でこの割合を変えていくことができます。
当然ですが、好意的な子が増えれば増えるほど、学級経営は安定していきます。
好意的でない子が増えれば、学級が崩壊します。

どんなタイプの子どもがいて、どのように接すると、成長するのかを知ることが児童理解なのです。

では、さっそくその分類を詳しくみていくことにしましょう。

① はじめの2割は好意的な子。
クラスがうまくいっていない時は癒しの天使。
クラスがうまくいっている時には、よき理解者として働きます。
誰が担任になっても、この割合は一定数いると思っていいと思います。

つまり、学級経営を安定させるためには、どの子がこの2割に該当しているのか、まずはその実態把握が必要なのです。
前年度までにクラスや学年崩壊していた場合には、この子達ですら、学習規律を守れていないこともあります。
そういう場合には、まず、この2割の子を立ち直らせることから始めないと、学級経営自体うまく機能しません。

自己肯定感は高く、褒めたらどんどん上がるタイプです。担任のご機嫌とりや甘えてつきまとう子は別のタイプなので区別しておきましょう。

ただし、このタイプ頼みの学級経営をするといじめやモノ隠し、担任への反発もあるので注意が必要です。

自分が思っているほど、子どもは先生のことを好意的には思っていないという現実を知っておいたほうがいいです。逆に言えばこの2割の子はいつも先生の味方になるとも言えます。

② 5割はどちらでもない子
特に悪いことや良いことをするわけではありませんが、あまり担任に関心を向けていないタイプです。別に好き嫌いという感情で担任を見ていないので、環境に流されやすい傾向があります。上の2割の層をほめていくことで、この5割も、よい行いをするように仕向けていきます。

環境に左右されやすいので、先生の魅力でよい方向に向かせます。自己肯定感は高くも低くもないです。自分のよさに気付いていないことが多いので、その子のよさを見付け、価値付けして自信をもたせていくとよいでしょう。

③ 次の2割は、あまり好意的ではない子
このタイプは、自分にとって都合のよい先生かどうかを見定めています。
都合がよいとわかったら味方にもなります。
高学年であれば、噂や先入観などの影響を受けやすく、低学年なら保護者の影響を受けやすいタイプです。

また、下の1割の子と結びつきやすいのが特徴です。担任に対してマイナス感情をもった時には、注意が必要です。ですので、注意の仕方には気を付けないといけません。逆に、プラス感情をもった場合には、どちらでもない層に昇格します。

学校のきまりなどを守れなかったり、トラブルも多かったりします。
つまり、こだわりが強かったり、人との関わりが苦手だったりする子が結構多くいるので、支援が必要である場合も多いということです。

自己肯定感も低めで、他人からどう思われているかを常に気にしています。ですので、些細なことでもいいので、たくさん褒めてあげましょう。
早めに保護者と面談して支援の方法を共有していきましょう。

④ 最後の1割は好意的でない子
担任からよく注意を受けている子や担任が問題児と決めつけている子。
自己肯定感はかなり低く、要支援(支援を必要としている)の子であることが多いです。
自分のことをしっかりと受け止めてくれる先生なのかをよく観察しています。
要支援の子は、問題を起こしたくて起こしているのではなく、困っているということを理解してやる必要があります。

破壊性が強く、上の2割の層の子も巻き込んでクラスをかき回すこともあります。
追い詰めないように気を付けたいところです。

担任の指示を聞かないという理由だけで注意を続けていけば、おのずと1割の子達はどこかで反発してくるは明らかです。
ルールを守れなかったり、指示を無視して悪態をついたりする場合、どうしてそうなるのか、その原因について探る必要があります。

担任目線でみると、クラスのルールを守らない悪い子、問題児という色眼鏡で見てしまい、自分とは相性の悪い存在に仕立て上げていることが多いと言えます。

学校で中核を担うくらいの力をつけている中堅の先生でも、この層からは足下すくわれるケースがあるので、自分の学級経営にちょっと自信がついたときには特に注意が必要です。

子どもを注意するときは、気を付けましょう。
反発する心が生まれたら、その1年は大変な1年となります。
だからといって子ども達に迎合するわけでもありません。

ダメな時は、ダメと注意しなければいけません。この匙加減が難しいですね。4月の学級開きで、分かりやすく伝えていくことが大切です。

トップダウンでもなく、ボトムアップでもなく、両者をミックスさせた学級経営が求められていると言えます。

4まとめ

経営戦略とは、経営目標を達成するため、また、自分の経営理念実現ために、どうやってクラス全員を理解していくのかを具体的に考える方法論のことです。
この児童理解をもとに、学習指導、生活指導をしていくのです。

児童理解には、時間がかかります。タイプ別に、一人一人の特性を知り、対処方法を変えていきましょう。

公平に接しながらも、要支援の子には丁寧な対応が必要です。

叱る際には、細心の注意が必要です。追い詰めないように気を付けましょう。

特別支援教育が重要視されてきている近年の学級経営において、トップダウンでもなく、ボトムアップでもなく、新しいタイプの学級経営が求められていると言えます。

児童理解はまだまだ、お伝えしたいことが山ほどありますが、きりがないので、このへんで終わりにしたいと思います。

ですが、奥が深い分野でもあるので、また機会があったら続きを書きたいと思います。それなりに時間もかかるので、まあ、続きを読みたいって人がたくさんいたらですが…

参考になる方がいたら幸いです。

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